問題児たちが裏ボスと出逢うそうですよ?   作:問題児愛

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白夜叉との再会からギフトカードの所まで。


拉致

十六夜達に別れも告げずにその場を後にした輪廻は、次なる場所を目指していた。

それは女王が召喚したあと二人の異世界人がいる場所だ。

黒髪少女と茶髪少女の二人に逢い、彼女達の力量を確かめる為に。

箱庭都市の外門を潜った瞬間―――

 

『みぃつけた』

 

「ん?」

 

何処からか輪廻の聞いたことのある声が響き、一瞬にして景色がガラリと変わり、どういうわけかサウザンドアイズ支店前に立っていた。

輪廻は別段驚くこともなく、そして考えるまでもなく自分を別の場所に跳ばした犯人が誰なのかを理解する。

 

「………ふむ、盆娘の仕業か」

 

そう呟いた瞬間、凄まじい殺気を感じたような気がするが、輪廻は気にしないことにした。

一方、いきなり現れた輪廻に、掃除をしていた女性店員がびっくらこいて尻餅をついていた。

輪廻は微笑して女性店員に歩み寄ると、手を差し出しながら言う。

 

「ああ、驚かせて済まないな。怪我はないか、娘?」

 

「え、ええ。大丈夫です。お気遣いありがとうございます」

 

輪廻の手を取って起き上がる女性店員。

服についた土や埃を払いつつ、女性店員が輪廻をジーッと見つめて訊いた。

 

「………貴女は何処の誰ですか?」

 

「ん?ああ、我輩は―――」

 

答えようとした輪廻だったが、途中で遮られることとなる。

何故ならば、店内から爆走して来た着物風の服を着た真っ白い少女が叫びながら輪廻に突進してきたからだ。

 

「リィィィンネェェェェちゃぁぁぁぁぁぁんッ!!!」

 

「………!」

 

十六夜の時のように人差し指で受け止めようとしたが、輪廻の知る者の声だった為、抱き止める体勢を取る。

店から飛び出した真っ白い少女のフライングボディーアタックを食らい、揃って縦に何回転もしながら後方に吹き飛び、水路にバシャン!と落下した。

その光景に唖然と―――ではなく痛い頭を抱える女性店員。

輪廻は抱きついて離さない白髪少女の頭を撫でながら言う。

 

「相も変わらず元気だな、白夜様」

 

「おんしは相変わらず冷静だの、輪廻ちゃん」

 

「盆娘が我輩を此処に跳ばしたのは、貴女の指示か?」

 

「はてさて、何のことかの?」

 

惚ける白夜と呼ばれた白髪少女。

 

「それと今の私は白夜叉だ。あと様もいらん」

 

「ふむ、あい分かった白夜様」

 

「………まあよい。これからおんしに訊きたいことがあるが、少し付き合ってくれるかの?」

 

「………拒否しても逃がすつもりはないんだろう白夜様?」

 

ミシミシミシ、と白髪少女―――改め白夜叉が骨ごと五臓六腑を潰さん力で抱きしめ上げてくるのを感じ取り、苦笑と共に聞き返す輪廻。

これが人間ならば間違いなく即死ものだ。

白夜叉はふん、と鼻を鳴らすと輪廻を解放して言う。

 

「分かっておるではないか。では用件は私の部屋で話そうかの」

 

むんず、と輪廻の首根っこを掴んだ白夜叉は、そのまま店内へと引き摺り込むと、私室の障子を開けて入っていく。

拉致紛いなことしなくても逃げないのに、と苦笑を零す輪廻。

それから白夜叉は上座に腰を下ろすと、輪廻と向かい合い話を切り出した。

 

「さて、輪廻ちゃん」

 

「なんだ?」

 

「ノーブラノーパンははしたないからやめろとあれほど言ったはずだがの!せめて下は穿いてくれ!私の楽しみが減るではないかっ!」

 

「………何か重要な話かと思ったらそれか。別に見られた所で恥ずかしくもないんだがな。あと最後のは貴女の願望ではないか?」

 

エロ親父発言をする白夜叉を軽くあしらう輪廻。

というよりいつスカートの中身を確認したというのか。

流石は白夜様だな、と感心する輪廻だった。

白夜叉はオホン!とわざとらしく咳払いをし、本題に入った。

 

「では気を取り直して輪廻よ」

 

「なんだ?」

 

ちゃん付けではなくなった為、今度のはお巫山戯ではないことを察する輪廻。

白夜叉は殺気の籠った声音で一言。

 

「………三年前、〝ノーネーム〟を滅ぼしたのは貴様か?」

 

「………ふむ。丁度姿を晦ました時期と重なるから、我輩を疑っているんだな?」

 

「御託はよい、疾く答えよ。貴様が、〝ノーネーム〟を滅ぼしたのか?」

 

白夜叉の星の殺意を前に、輪廻は尚冷静のまま小首を横に振って否定した。

 

「我輩ではない。そも、我輩は〝ノーネーム〟を気に入っている。何故滅ぼさねばならない?」

 

「そうか。ではそう仮定して、何故〝ノーネーム〟を守ってくれなかったのだ?おんしならば未知の魔王を返り討ちにする事も可能だったであろう!?」

 

「………我輩に〝ウロボロス〟の同士を討てと言うのか?敵である〝ノーネーム〟の為にか?気に入っているとは言ったが、敵であることには変わらんぞ?」

 

「……………っ!!!」

 

白夜叉はハッとして我に返る。

今目の前にいる輪廻はかつての旧友ではなく、『敵』なのだと。

プルプルと全身を震わせる白夜叉に、輪廻はゆっくりと立ち上がって訊く。

 

「………さて、我輩は〝ウロボロス〟に帰還するが、まだ聞きたいことはあるか?答えられる範囲なら、」

 

「いいや、駄目だ。このまま貴様を見逃すわけにはいかん」

 

「………弱体化してる貴女に、我輩を止められるのか?」

 

「ぐっ………」

 

図星を突かれて押し黙る白夜叉。

このままでは折角捕まえられた〝ウロボロス〟の一角をみすみす逃すことになってしまう。

だが輪廻を今の白夜叉が押さえるのは不可能だ。

すると輪廻から思わぬ提案が飛び出す。

 

「………白夜様が我輩の所属するコミュニティ―――〝ウロボロス〟が〝ノーネーム〟と敵同士であることを黙秘してくれるのなら、貴女の言う通りにしてやらんこともない」

 

「……………なんじゃと?」

 

「そも、箱庭に入り立ての少年少女が〝ノーネーム〟の敵を知ったところで勝てると思うか?答えは否。ロクにギフトも使いこなせない少年達に、我ら〝ウロボロス〟を倒せやしまい。それに我輩を『敵』と知れば、少年達は間違いなく我輩に挑んでくるだろうな。やむなく正当防衛で少年達の命は摘み取られた………という展開もあるやもしれんぞ?」

 

「き、貴様ッ!!」

 

白夜叉が激昂し、輪廻の胸倉に掴み掛かる。

輪廻は驚くこともなく冷静に白夜叉を見定め今一度問う。

 

「〝階層支配者(フロアマスター)〟として我輩に勝ち目の無いギフトゲームを仕掛けるか、我輩の提案を飲んで少年達の安全を確保するか………貴女ならばどちらが賢明な選択か、分からないとは言わせんぞ」

 

「……………」

 

白夜叉はしばしの間、黙考する。

前者は、〝階層支配者〟として輪廻を裁ければ御の字だが、今の白夜叉には勝ち目など皆無だし、他の〝階層支配者〟達に助力を求めたところで焼け石に水だ。

輪廻を止めるには―――〝全権領域(箱庭二桁)〟の協力が不可欠であり、それ即ち白夜叉が本来の力を取り戻した状態でなければどうすることも出来ない。

後者は、輪廻の要求を飲み〝階層支配者〟である白夜叉が『敵』を庇うという最悪なものだ。見返りは輪廻を白夜叉の自由に出来―――ん?自由に出来る?

白夜叉はふと妙案を思いつき、ニヤリと笑って輪廻を離した。

 

「そうだの。私も覚悟を決めておんしの提案を飲まざるをえんな」

 

「ふむ。貴女が賢明な選択をしてくれて安心した」

 

「ふふ、そうか。では次は私の番だ、輪廻ちゃん」

 

「なに?」

 

白夜叉の意味深な発言に眉を顰める輪廻。

輪廻の両肩を掴んだ白夜叉がこう告げた。

 

「おんしの身柄は私が預かる。そしておんしにとっては『敵』である〝ノーネーム〟に手を貸し、かつ〝ウロボロス〟の動向を探り私に報告しろ」

 

「……………………………は?」

 

白夜叉の思わぬ提案返しに、珍しく素っ頓狂な声を漏らす輪廻だった。

 

 

 

 

「よう、さっきぶりだな輪廻様?」

 

「………ああ、さっきぶりだな少年」

 

まさかこうも早く再会する羽目になろうとは思いもしなかったらしく、十六夜は様付けで茶化し、輪廻は気まずそうに彼から目を逸らす。

黒ウサギはというと、蛇神から貰ったギフト―――水樹の苗を抱きかかえながら嬉しそうに視線を輪廻に送ってくる。

一方、初めて輪廻を見る黒髪少女と茶髪少女の二人は、輪廻の見た目とその頭角を見つめながらコソコソと話していた。

 

「なんというか、奇抜な見た目をしてるわねあの子」

 

「うん。でもなんだろう………友達になりたいかも」

 

『お嬢ならきっとあの嬢ちゃんとも友達になれるで!ファイトや!』

 

いや、プラスして三毛猫もお嬢と呼んで茶髪少女に話しかけていた。

黒ウサギ達四人と一匹の〝ノーネーム〟御一行は、白夜叉に招かれて輪廻と同じ部屋に同伴している。

現在輪廻は白夜叉の隣に座っており、黒ウサギ達〝ノーネーム〟は二人と対面する形で座っていた。

輪廻について、初対面の黒髪少女と茶髪少女が質問してこないのは、既に黒ウサギあたりが紹介してくれていたからだろう。

自己紹介の手間が省けてありがたい限りだ。

だが茶髪少女が向けてくる熱い視線に、輪廻は小首を傾げて訊くことにした。

 

「なんだ茶髪娘?我輩の顔に何かついてる?」

 

「春日部耀。耀でいい。貴女のことは黒ウサギから伺ってます。永劫さんは」

 

「輪廻でよい。敬語も不要だ、堅苦しいのは嫌いでな」

 

「え?あ、うん、分かった。えっと、輪廻は『龍』………なんだよね?」

 

「そうだが?」

 

「じゃ、じゃあ是非私とお友達になってください!」

 

「ちょっと春日部さん?そんないきなりお願いしても」

 

「ああ、構わんぞ」

 

「了承してくださるとは思えな―――って、え!?よろしいの!?」

 

即承諾する輪廻に驚く黒髪少女。

そんなあっさり友達OKしてくれるとは思いもしなかったのだろう。

輪廻はそんな黒髪少女に微笑して言う。

 

「黒髪娘も我輩と友達になりたいのであれば、歓迎するぞ?」

 

「く、久遠飛鳥よ。飛鳥で構わないわ。私、『龍』とお友達になれるのならとても嬉しくってよ………っ!」

 

「ああ、よろしく頼むぞ、耀に飛鳥」

 

茶髪少女―――改め耀と、黒髪少女―――改め飛鳥に向けて微笑する輪廻。

照れ臭そうに笑みで返す耀と飛鳥。

そんな三人を微笑ましげに見つめる黒ウサギ。

一方、十六夜は眉を顰めると輪廻を睨みつけて言う。

 

「おい輪廻。あんたと最初に逢い、拳で語り合った仲の俺を差し置いて、なに初対面の春日部やお嬢様と友達になってんだコラ」

 

「ん?つまり少年も我輩と友達になりたいということか?」

 

「ああ。あんたと友達なら、友達権行使していつでも挑めるからな」

 

「………貴様の脳内はそれしかないのか?」

 

「あんたが俺より強いのが悪い。だから諦めて俺とも友達になりやがれ」

 

「………ふむ、まあいいだろう。友達になりたい理由は人それぞれだからな。よろしく頼むぞ、十六夜」

 

こうして輪廻に友達が三人も出来た。

それから白夜叉の自己紹介、外門の図がバームクーヘンに見えるとかなんとか、黒ウサギが抱きかかえている水樹の苗の話となり、輪廻が説明する。

 

「蛇娘と十六夜の戦いに我輩が介入してな、かくかくしかじかで少年と我輩が戦うことになり、その戦いを見ていた蛇娘が降参してソレを渡したんだろう」

 

「はいな。蛇神様が輪廻様の忠告を飲んで降参し、この水樹の苗をくれたのですよ」

 

「なに?輪廻ちゃんとその童の戦いを見て、アレが降参したとな?神格保持者が負けを認めるなど、余程の戦いを行ったようだの」

 

「なんだ?お前はあのヘビの知り合いか?………まさかあの時輪廻が口にした『あの御方』ってのは」

 

「ああ、私のことだよ童。アレに『神格』を与えたのが私だ」

 

呵々と笑う白夜叉。

十六夜は物騒に瞳を光らせ問いただす。

 

「へえ?じゃあ輪廻ほどの強者に敬わられてるお前は、輪廻よりも強いんだな?」

 

「いや、今の私では逆立ちしても輪廻ちゃんには勝てんよ」

 

「なに?」

 

「だがそれで私を舐めたら痛い目見るぞ小僧?何故ならば私は東側の〝階層支配者〟にして、この東側の四桁以下にあるコミュニティでは並ぶ者がいない、最強の主催者(ホスト)なのだからの」

 

それを聞いた十六夜・飛鳥・耀の三人が一斉に瞳を輝かせた。

 

「貴女のゲームをクリア出来れば、私達のコミュニティは東側で最強ということになるのかしら?」

 

「無論、そうなるのう」

 

「そりゃ景気のいい話だ。探す手間が省けた」

 

「うん」

 

剥き出しの闘争心を込めた視線で白夜叉を見つめる三人。

白夜叉は高らかと笑い声を上げた。

 

「抜け目ない童達だ。依頼しておきながら、私にギフトゲームで挑むと?」

 

「え?ちょ、ちょっと御三人様!?」

 

慌てる黒ウサギ。

白夜叉は右手で制して言う。

 

「よいよ黒ウサギ。私も遊び相手には常に飢えている」

 

続けて輪廻が煽るように言う。

 

「まあ貴様らでは白夜様の相手は務まらんだろうがな」

 

「何ですって!?」

 

「へえ?言ってくれるじゃねえか輪廻!俺達じゃ和装ロリに手も足も出ないと?」

 

「カチンときた、目に物を見せてやる」

 

こめかみに青筋立てながら輪廻を睨み付ける三人。

その意気や良し、と微笑する輪廻。

何火に油注いでるんですか!?とでも言いたげな表情で訴えてくる黒ウサギを、輪廻は無視することにした。

白夜叉は楽しげに呵々と笑い、十六夜達に問いかける。

 

「始める前におんしらに確認しておくことがある」

 

「なんだ?」

 

三人が白夜叉に視線を戻す。

白夜叉は着物の裾からカードを取り出し、壮絶な笑みで一言。

 

 

「おんしらが望むのは〝挑戦〟か―――もしくは、〝決闘〟か?」

 

 

そして世界は一変し、白い雪原と凍る湖畔。

水平に太陽が廻る世界に放り投げられていた。

 

「なっ………!?」

 

余りの異常さに、十六夜達は同時に息を呑んだ。

唖然と立ち竦む三人に、白夜叉は問いかける。

 

「今一度名乗り直し、問おうかの。私は〝白き夜の魔王〟―――太陽と白夜の星霊・白夜叉。おんしらが望むのは、試練への〝挑戦〟か?それとも対等な〝決闘〟か?」

 

白夜叉の笑みと凄味に、再度息を呑む三人。

十六夜は背中に心地良い冷や汗を感じ取りながら、白夜叉を睨んで笑う。

 

「水平に廻る太陽と………そうか、白夜と夜叉。あの水平に廻る太陽やこの土地は、お前を表現してるってことか」

 

「如何にも。この白夜の湖畔と雪原。永遠に世界を薄明に照らす太陽こそ、私が持つゲーム盤の一つだ」

 

白夜叉が両手を広げると、地平線の彼方の雲海が瞬く間に裂け、薄明の太陽が晒される。

飛鳥が驚愕の声を上げる。

 

「これだけ莫大な土地が、ただのゲーム盤………!?」

 

「如何にも。して、おんしらの返答は?〝挑戦〟であるならば、手慰み程度に遊んでやる。―――だがしかし〝決闘〟を望むなら話は別。魔王として、命と誇りの限り闘おうではないか」

 

「……………っ」

 

飛鳥と耀、輪廻に戦いを望んだ十六夜でさえ即答出来ないでいた。

しばしの静寂の後―――諦めたように笑った十六夜が口を開く。

 

「参った。やられたよ。降参だ、白夜叉」

 

「ふむ?それは決闘ではなく、試練を受けるということかの?」

 

「ああ。これだけのゲーム盤を用意出来るんだからな。あんたには資格がある。―――いいぜ。今回は黙って試されてやるよ、魔王様」

 

苦笑と共に吐き捨てるような物言いをした十六夜を、白夜叉は堪え切れず高らかと笑い飛ばした。

腹を抱えて哄笑を上げ、一頻り笑った白夜叉は笑いを噛み殺して飛鳥と耀にも問う。

 

「く、くく………して、他の童達も同じか?」

 

「………ええ。私も、試されてあげてもいいわ」

 

「右に同じ」

 

苦虫を噛み潰したような表情で返事をする二人。

満足そうに声を上げる白夜叉。

一連の流れをヒヤヒヤしながら見ていた黒ウサギは、ホッと胸を撫で下ろす。

 

「も、もう!お互いにもう少し相手を選んでください!〝階層支配者〟に喧嘩を売る新人と、新人に売られた喧嘩を買う〝階層支配者〟なんて、冗談にしても寒すぎます!それに白夜叉様が魔王だったのは、もう何千年も前の話じゃないですか!!」

 

「何?じゃあ元・魔王様ってことか?」

 

「はてさて、どうだったかな?」

 

ケラケラと悪戯っぽく笑う白夜叉。

ガクリと肩を落とす黒ウサギと三人。

輪廻も満足気に微笑する。

 

「貴様らが賢明な判断が出来る者共で安心したぞ」

 

「ああ。流石にこんなものを見せられちゃあ降参せざるを得ないさ」

 

「ええ。悔しいけれど、今回は試されてあげることにしたわ」

 

「輪廻が慕うだけあって、デタラメな存在」

 

「―――て、十六夜さん達を焚き付けたのは何処のどなたですか輪・廻・様!?」

 

三人が返し、黒ウサギが輪廻に怒る。

白夜叉は呵々と笑い、輪廻に訊いた。

 

「ところで輪廻ちゃん。おんしさえ良ければでいいのだが、私の相手をしてくれんかの?童達の〝試練〟の後での?」

 

「なんだ白夜様。貴女は我輩の玩具にされたい願望でもあるのか?我輩としては歓迎するが、」

 

「あ、いや、すまん。やっぱり今のはなしで頼む」

 

輪廻の恍惚とした表情を見てゾワっと身の毛がよだつのを感じ取った白夜叉は慌ててキャンセルする。

輪廻は玩具を取り上げられた子供のようにしょんぼりするのだった。

それから十六夜達は白夜叉の〝試練〟を受ける。

ギフトゲーム―――〝鷲獅子の手綱〟。

〝力〟〝知恵〟〝勇気〟の何れかでグリフォンに挑み、彼の背に跨って湖畔を舞うというもの。

これに耀が挑み、見事勝利した。

その後、耀の持つ木彫りの話題に移り、白夜叉達の鑑定が始まる。

それが〝生命の目録〟かもしれないと言って白夜叉が興奮し買い取ろうとするも耀に拒否されてしょんぼりした。

輪廻にはそれが何なのか、耀の父親が〝ノーネーム〟の前頭首―――春日部孝明だと知っているも、敢えて教えなかった。

鑑定を頼みに来たらしいが、白夜叉は専門外だったらしく、代わりに試練をクリアした耀達にギフトを与えた。

それはギフトカード―――〝ラプラスの紙片〟というもので、ギフトの正体が何なのかを知ることが出来るそうだ。

三人が受け取ったギフトカードにはこう記されていた。

 

コバルトブルーのカードに逆廻十六夜・〝正体不明(コード・アンノウン)

 

ワインレッドのカードに久遠飛鳥・〝威光〟

 

パールエメラルドのカードに春日部耀・〝生命の目録(ゲノム・ツリー)〟〝ノーフォーマー〟

 

輪廻は龍眼を以て三人のギフトカードを見つめる。

十六夜の〝正体不明〟は文字通り不明、理解不能。

流石に輪廻でも彼のギフトを実際にこの眼で見なければ分からない為、何とも言えない。

飛鳥の〝威光〟はかなり強力なギフトだが、恐らく彼女自身は『相手を従わせる』程度にしか思ってないだろう。

教えてやるのは簡単だが、それでは彼女の為にならないので黙っておくことにした。

耀の〝生命の目録〟は間違いなく孝明が持っていた物と同じだが、彼女自身は『全ての種と会話出来る』『友達になったギフトが使える』程度にしか思ってないだろう。

〝ノーフォーマー〟は西業―――〝閉鎖世界(ディストピア)〟で生まれ育った者達〝何者にも成れない者(ノーフォーマー)〟を指す。

耀の場合は孝明の嫁の二千華がディストピア生まれだからだろう。

………まあ何にせよ、彼ら三人がギフトを理解し使いこなせるようになったその暁には、さぞ強大な存在へと昇華していることだろう。

 

 

嗚呼、楽しみだ、貴様らが覚醒するその時が。

そしてその時が来たならば―――この我輩が貴様らを絶望のドン底へと叩き落としてやろう。

 

 

黒ウサギ達がギフトカードであれこれ騒いでる中。

輪廻だけは一人、凶悪な笑みを浮かべて十六夜・飛鳥・耀の三人を眺めているのだった。




次回、護衛

一、吸血姫の護衛と虎男

二、〝ノーネーム〟訪問

三、〝ペルセウス〟襲来
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