問題児たちが裏ボスと出逢うそうですよ?   作:問題児愛

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思ったより文字数が多くなってしまったのでレティシア登場からガルドの所までになります。


護衛

〝ノーネーム〟一行と別れた後、輪廻は白夜叉の私室に残って正座していた。

向かい合う白夜叉は、上座に腰掛け真剣な眼差しで訊いてきた。

 

「ところでおんし。どうやって下層に降りてきた?第三桁以上のものが本来の姿のまま下界することはタブーだ。しかし何の影響も無く降りて来れているということは、」

 

「ああ。人間を器にして顕現しているな」

 

「………人間じゃと?」

 

「そうだ。だが我輩が器にしている娘の情報は教えてやらん。こうして姿を誤魔化しているのも、器の娘の要望だからな」

 

「待て輪廻。それでは私と交わした約束の一つに反するぞ。〝ウロボロス〟に関する情報の中に、おんしも入っておるんだからな」

 

「………ふむ。ではこう言えば諦めてくれるか?器の娘と〝ウロボロス〟は無関係だ」

 

「何?」

 

白夜叉は怪訝な顔をして輪廻を睨む。

彼女の表情からは『嘘』は見えない。

白夜叉は溜め息を吐き、扇子を開いて口元を隠す素振りを見せボソボソ呟く。

 

「それが本当なら隠す意味もないと思うんだがの」

 

「なんだ白夜様。貴女は我輩の霊格を事前に知ってから挑むクソゲーマーなのか?」

 

「は?」

 

「まあどの道話すつもりは毛頭ない。これ以上詮索するならば、今すぐ〝ノーネーム〟に我輩が『敵』であることをバラシに」

 

「あーもう!分かった!私が悪かった!この通りだから〝ノーネーム〟に向かおうとするのはやめてくれんかの!?」

 

「うむ、分かればいい」

 

白夜叉を黙らせることに成功する輪廻。

主導権を握った気でいた白夜叉は、逆に握り返されてムスッと拗ねたような顔をした。

だが〝ノーネーム〟を守る為には大人しく従うほかない。

輪廻は微笑を浮かべつつ、本題を促す。

 

「それで、我輩に何をさせる気だ?」

 

「ん?おお、そうだったの。盛大に話が脱線したわ―――ほれ、入ってきて良いぞ」

 

「ああ、失礼す―――ッ!?」

 

障子を開けて入ろうとした金髪ロングの紅い瞳を持つ少女が固まる。

輪廻はその彼女に視線を向けると微笑し、パチンと指を鳴らした。

瞬間、金髪少女の姿は掻き消え―――輪廻の膝上に横たわる形で現れる。

 

「―――!?―――――!!?」

 

驚く金髪少女を、輪廻は微笑しながら見つめ彼女の御髪を優しく撫でるように梳く。

白夜叉はその光景に苦笑いを浮かべる。

そう言えば、輪廻は金髪少女―――もといレティシアには激甘だったことを思い出しながら。

輪廻に髪を梳かれながら、レティシアが彼女を見つめ言う。

 

「お戯れはよしてくれ、輪廻殿」

 

「ああ、済まないな。三年ぶりの再会だから嬉しくてつい」

 

勿論、大嘘である。

三年前、〝ウロボロス〟に捕まったレティシアを、輪廻は姿を変えて見守っていたのだから。

 

「そ、そうか」

 

輪廻は手をレティシアの髪から頬、首筋、肩へとなぞる様に動かしてきた。

 

「………ッ」

 

レティシアは身の危険を感じると、転がるように輪廻の手から逃げる。

それに輪廻は、逃げられたと残念そうな顔を見せた。

久々のスキンシップ―――全身撫で繰り回し計画は失敗に終わったのだった。

白夜叉はやれやれと頭を振ると、輪廻と身構えるレティシアを見回して一言。

 

「この私を置き去りにして二人だけお楽しみとはどういう了見だ!私も混ぜろ!」

 

「「は?」」

 

「おっとすまんすまん。つい本音がポロッと口から漏れてしまったわい」

 

白夜叉は隠す素振りもせずに思いを吐露し、呵々と笑う。

美少女同士の戯れを眺めるだけでは物足りないらしい。

そんな平常運転バリバリな白夜叉に、輪廻とレティシアは顔を見合わせて苦笑した。

気を取り直して、輪廻が本題に戻す。

 

「それで、レティシアが我輩の下に来たということは―――遂にレティシアが我輩のモノに」

 

「ならんわ!私が黒ウサギに言った時と似たような台詞を言うでないわ!」

 

「は、はは………」

 

真剣な顔で言う輪廻に、白夜叉がツッコミを入れる。

レティシアは顔を引き攣らせながら笑う。

輪廻にお持ち帰りされたら最後、何をされるか分かったものではない。

ちなみに、白夜叉が黒ウサギに言った時と似たような台詞というのは、十六夜達を連れて来たから遂に黒ウサギが自分のペットになるという意味不明な発言のことである。

輪廻は微笑し、本題に戻すTake2。

 

「それで、レティシアが〝サウザンドアイズ(ここ)〟にいるのは何故だ?三年前、〝ノーネーム〟を滅ぼした魔王に捕まって捕虜にされているのではなかったのか?」

 

勿論輪廻はその後、レティシアはカルk―――殿下率いる〝ウロボロス〟第三連合が〝ペルセウス〟に売ったことを知っている。

姿を変えた状態のまま、あの場に居合わせていたのだから。

ならば今、レティシアが白夜叉の下にいるのも当然、理解している。

そのことを知っていながらも知らないフリをする輪廻に、白夜叉は内心では怒りつつも、その問いに落ち着いた調子で答える。

 

「うむ。レティシアは我ら〝サウザンドアイズ〟の傘下の一つ―――〝ペルセウス〟が買い取っていての。私が無断で連れ出し今に至る」

 

「つまり人様の所有物を泥棒したのか。〝階層支配者(フロアマスター)〟である貴女がしていい行為とは思えんが、何か弁解でもあるなら聞こう。よもや〝サウザンドアイズ〟の幹部同士なら相手のモノを許可無く連れ出してもいいなどとは言うまいな?」

 

輪廻が白夜叉を睨みつけ、白夜叉もまた輪廻を睨み返す。

まるでどの口が言うかとでも言いたげな瞳で。

レティシアが白夜叉を庇う。

 

「ま、待ってくれ輪廻殿!白夜叉は私の為にやってくれたことなんだ!彼女を悪く言わないでくれ、悪いのは我儘な私なのだからな………!」

 

「ふむ。まあいいだろう。白夜様が理由もなく盗みに働くただのコソドロではないのは我輩もよく知っているからな。〝ノーネーム〟の再建を止める為に〝ペルセウス〟から脱出する手伝いを白夜様がした―――こんなところかレティシアよ?」

 

「あ、ああ。流石は輪廻殿だ。なんでもお見通しというわけか」

 

輪廻の持つ左右異なる色をした龍眼―――〝この世の全てを見通す瞳〟の前に隠し事や嘘は通用しない。

そんな彼女の瞳を以てしても、十六夜のギフトだけは中身を確認しなければ見抜けないようだが。

輪廻は微笑し、レティシアに言う。

 

「心優しいレティシアよ。〝ノーネーム〟の同士が茨の道を行こうとするのを止めようとしているが―――それは杞憂だ」

 

「なに?」

 

「それについては白夜様が話してくれる。我輩は共犯者ではないからな。教えてやる義理はない」

 

「あ、ああ。そうだな」

 

輪廻は話を白夜叉に振り、レティシアが白夜叉を見つめる。

白夜叉は、そうだのと頷いてレティシアに話始めた。

 

「まず、黒ウサギはかの黄金の魔王に依頼して異世界人を三人召喚した」

 

「黄金の魔王………〝クイーン・ハロウィン〟にだと?」

 

「うむ。そしてあやつが召喚した異世界人三人の中で、神格級のギフト保持者が現れたの」

 

「し、神格級のギフト保持者だと!?」

 

にわかに信じ難いと言うような表情で白夜叉を見るレティシア。

白夜叉は微笑して続ける。

 

「ふふ、正直私も信じられん。我が眷属の神格保持者・白雪が戦わずして降参したそうだからの。一体どんな力試しをしたのだろうな………のぅ、輪廻ちゃんよ?」

 

「は?輪廻殿が直接相手をしたのか!?」

 

「まあな。軽く遊んでやったが、中々面白い少年だった」

 

「そうだの。私に喧嘩を売ったり、相手の実力も推し量れる童だ。私が招待したゲーム盤を見て、私を表していることを見抜いたり、降参して〝試練〟を選んだ時なんか『試されてやる』などと言いおったからな。いやはや本当に面白い奴だったわ―――逆廻十六夜という小僧は」

 

白夜叉は十六夜のことを思い出して物騒な笑みを浮かべる。

そんな彼女を見て、レティシアは背筋がゾクリと、寒気がする感覚がした。

白夜叉の目は完全に面白い獲物を見つけたようなモノを映す瞳だった。

何よりも白夜叉のお気に入りである輪廻と戦った事実が、彼女の戦闘意欲を引き出しているのだろう。

だが今の話を聞いて、レティシアも動かずにはいられなかった。

 

「そう、か。ならば私は黒ウサギ達を止めるよりも先に―――彼らの実力をこの目で確かめたいな」

 

「ふむ?止めるのは一旦保留にして、童達の実力を知りたいと?」

 

「ああ。何か妙案はないか白夜叉?」

 

「そうだのう………たしか〝ノーネーム〟は〝フォレス・ガロ〟に喧嘩を売ったらしい。決戦は明日でギフト鑑定をしに〝サウザンドアイズ(ここ)〟へと足を運んだそうだからのう」

 

チラッとレティシアに目配せする白夜叉。

何が言いたいか分かったかの?とでも言いたげな表情でだ。

レティシアは気付いたように頭を下げてお礼を言った。

 

「助言、感謝する!では私はやることができたのでこれで」

 

「いや、まだ行かんでくれレティシア」

 

「え?」

 

白夜叉に待ったをかけられて戸惑うレティシア。

白夜叉は視線を輪廻に向けて言う。

 

「というわけでだ、輪廻ちゃん」

 

「ふむ。どういうわけかは知らんがなんだ?」

 

「おんしは私の捕r」

 

「ん?」

 

「おほん!私の旧き友として、レティシアの護衛を頼みたいのだが………やってくれるかの?」

 

「ほう?」

 

「……………は?」

 

白夜叉の頼みに微笑する輪廻。

レティシアは素っ頓狂な声を漏らして固まるのだった。

 

 

 

 

場所は変わり〝フォレス・ガロ〟本拠地。

白夜叉の私室から『空間跳躍(テレポーテーション)』なるもので、一瞬で移動してきた輪廻とレティシア。

正確には輪廻がレティシアを―――お姫様抱っこした状態でだが。

輪廻の腕の中で大人しくしていたレティシアだったが、中々下ろしてくれない彼女に訊いた。

 

「………いつになったら下ろしてくれるんだ輪廻殿?」

 

「我輩はレティシアの護衛だからな。このまま〝フォレス・ガロ〟に突撃するのも」

 

「悪いわッ!護衛対象をお姫様抱っこしながら連れ回す護衛とかいないだろッ!頼むから下ろしてくれ………ッ!!」

 

「やれやれ、照れ屋さんだなレティシアちゃんは」

 

レティシアを下ろす輪廻。

すぐさま輪廻から距離を取り身構えるレティシア。

さりげなくちゃん付けされたが、それを言及したら拉致があかないのでやめた。

ふと、レティシアは輪廻を見つめて訊いた。

 

「………その格好で行くつもりか?」

 

「ん?………ああ、そうだな。流石にこのままでは騒ぎになりかねんか」

 

輪廻は、ふむと少し考えを見せる素振りをした後、レティシアに言う。

 

「丁度いい。我が化身(アバター)を紹介しておくか。白夜様には言うなよレティシア?」

 

「………も、もし公言したら?」

 

「ああ、そうだな。レティシアにあんなコトやこんなコトをして生きているのが辛くなるレベルまで辱めてやろうか?」

 

「……………ッ!!?」

 

両手をわきわきさせてジリジリ迫る輪廻。

レティシアはゾワッと身の毛がよだつ感覚がして、自分の体を守るように抱き締めて後ずさった。

そしてつくづく思うことがある。

輪廻も白夜叉の変態(どうるい)ではないのかと。

輪廻は微笑し、レティシアの反応を楽しむ。

無論、輪廻はそんなことはしないししたら絶対に彼女達に嫌われるのは確実だからやるはずなどない。

輪廻は目を閉じると、彼女の体は光に包まれ見えなくなり、光が止むと―――白黒メイド服に身を包んだ金髪ロングの少女に変貌を遂げていた。

レティシアが金髪メイド少女をまじまじと見つめていると、彼女の目が開き紫色の瞳が露になる。

そしてレティシアと目が合った金髪メイド少女が微笑みながらスカートの裾を持ち上げ一礼し、自己紹介をする。

 

「お初目にかかります。私は西郷夢と申します。以後お見知りおきを、レティシアさん」

 

「え?あ、ああ。私はレティシア=ドラクレアだ。こちらこそよろしく頼むぞ、夢殿」

 

レティシアも自己紹介し、ふと夢の苗字を聞いて眉を顰めた。

 

「………失礼ながら夢殿」

 

「はい、なんですか?」

 

「夢殿の苗字のサイゴウは、〝西〟の〝業〟で西業か?」

 

「いえ、〝西〟の〝郷〟で西郷ですよ」

 

それを聞いて安堵するレティシア。

もし西業ならば、かの大魔王―――〝閉鎖世界(ディストピア)〟と同じ苗字である。

もしそうなら夢はディストピアの化身(アバター)の可能性が出てきて、永劫輪廻の正体がディストピアになってしまう。

だがそれは有り得ない話なのだ。

ディストピアは間違いなく、金糸雀達が倒している為、生きているはずがないのだから。

そしてもう一つ、夢に問わねばならないことがレティシアにはあった。

 

「質問、もう一ついいか夢殿」

 

「はい、いいですよ」

 

「何故メイドなんだ?あの奇抜な衣装ではないものに変えたのは理解できるが、護衛でメイドは目立ちすぎる気がするのだが」

 

「あ、これはですね。輪廻様が『不自然ではないかつ怪しまれない格好がいい』と言うことでメイドになりました」

 

「……………」

 

いや、メイドも十分不自然かつ怪しまれるぞとツッコミを入れようとしたレティシアだったが、その言葉を飲み込む。

龍角はないしどこからどう見ても人間のメイドにしか見えないからまあいいか、と割り切るのだった。

それからレティシアと夢の二人は〝フォレス・ガロ〟本拠地の屋敷の中へと侵入する。

完全に不法侵入だが、〝フォレス・ガロ〟はもっと酷いことをしている連中なのだから、自分達の行いは可愛い方だ―――とは思わないがなりふり構っていられない為、こういう行為に至った。

しばらくすると、男の叫び声と共に窓が割れる音が聞こえた。

何やら荒れているようだった。

その方向へ足を運ばせるレティシアと夢。

その男―――ガルド=ガスパーが更に叫ぶ。

 

「あの女のギフト………精神に直接触れる類だ。あんなのがいたらどんなゲームを用意しても勝ち目なんてねえぞ!」

 

精神支配の類のギフトを持つ女―――飛鳥のことだろう。

確かにガルドが彼女の〝威光〟を跳ね除けられなければ、彼がどんなギフトゲームを用意したとて勝ち目など皆無に等しい。

夢がそんなことを思っていると、レティシアが金髪を結っていた大きな黒いリボンを解いた。

すると幼かった彼女は一瞬にして妖艶な雰囲気を醸し出す大人な女性へと変貌し、開いていた扉から侵入してガルドに近付きながら言う。

 

「―――ほう。箱庭第六六六外門に本拠を持つ魔王の配下が〝名無し〟風情に負けるのか。それはそれで楽しみだ」

 

「っ、誰だ!?」

 

ガルドの驚きの声と同時、夢がコンコンと扉をノックしてからレティシアに続いて入ってきた。

 

「失礼しますね、虎さん」

 

「いや、なに君はご丁寧に入ってきてるんだ?」

 

貴族に仕えるメイドの所作のように立ち振る舞う夢に、思わず苦笑するレティシア。

夢は疑問符を頭上に浮かべながら小首を傾げ、当然では?と言いたげな視線をレティシアに向ける。

ガルドは二人を見回しながら獰猛に唸り声を上げて威嚇した。

 

「テメェら………どこのどいつか知らねえが、俺は今気が立ってるんだ。牙を剥かねえうちにとっとと失せろ」

 

「ふふ。威勢がいいのは評価してやる。だが、獣からの成り上がり風情が〝鬼種〟の純血である私に牙を剥くのか?」

 

「なっ……………!?」

 

ガルドは声を詰まらせで驚愕する。

先ほどまでの威勢はどこへやら、顔は青ざめ巨体をよろめかせて後ろに下がる。

 

「き、〝鬼種〟の純血だと………!?馬鹿を言え、鬼種の純血と言えば殆んど神格じゃねえか!そんなもんがどうして俺の下に来る!?〝名無し〟共の尖兵か!?」

 

「ああ、それだ。実はあの〝名無し〟とは少々因縁があってな。もう再建は望めないと思っていたんだが………新しい人材の中に神格級のギフト保持者がいると聞いて、様子を見に来たのだ」

 

ガルドは打ちのめされたように跪く。

精神支配のギフト持ちだけでも勝ち目がないというのに、更に神格級のギフト保持者という化け物を相手にしなければならないのかという事実に絶望する。

 

「そ、それはいつのことだ?黒ウサギじゃねえのか?」

 

「本日の夕方より少し前ですね。十六夜お兄ちゃんのデタラメ加減は私がよく知っていますし、虎さんでは絶対に勝てませんよ」

 

「「は?十六夜お兄ちゃん!?」」

 

レティシアとガルドが声を揃えて愕然とする。

夢はキョトン、と二人を見回し小首を傾げた。

 

「どうしましたか?」

 

「ど、どうしたもこうしたもあるか!そんな重大な話をサラッと言ってもいいのか!?それに夢殿の苗字は〝西郷〟で、十六夜という少年の苗字は〝逆廻〟じゃないか!どうして君は彼を兄と言ったんだ!?」

 

「え、えっと………」

 

レティシアに詰め寄られて困る夢。

ガルドはハッ、と馬鹿にしたように笑い始め夢と彼女の兄を笑う。

 

「神格級のギフト保持者と聞いてやべえと思ってたが、お嬢ちゃんのお兄さんかよ。なら負ける気がしねえ!何故なら―――今ここでお嬢ちゃんを攫って人質にすれば〝名無し〟共は俺に逆らえなくなるからなァ!」

 

そう言って下品極まりない笑みを浮かべながら夢に飛びかかろうとするガルド。

レティシアはガルドを止めようと思ったが、彼の外道っぷりに呆れていっそ痛い目を見させるかと傍観することを決めた。

ガルドは夢を殴って気絶させようと拳を振りかぶり―――

 

 

「―――しゃらくさい」

 

 

「ガッ………!?」

 

 

夢に腹部を殴られて無様に吹っ飛び、屋敷の壁に背中を強打して床に倒れ伏す。

それきりガルドは動かなくなってしまったが、恐らく気絶しているのだろう。

夢が、やってしまった!というような顔をして口元を押さえていた。

そして『輪廻』に文句を言った。

 

「り、輪廻様!?出力をもう少し抑えてください!虎さん、気を失っちゃったみたいですよ!?」

 

『ふん。我輩の化身(アバター)に手を出そうとしたからな。自業自得だ』

 

「は、はあ………」

 

全く悪びれるつもりのない脳内『輪廻』に、呆れる夢。

十六夜と違い、ギフトを使うには『輪廻』のバックアップが必要のようだ。

一方、レティシアは夢の力もそうだが、ガルドを殴る際に発した言葉を聞いて固まっていた。

―――しゃらくさい。

そう言った彼女に、かつて魔王だった頃のレティシアは救われた。

金髪ショートで緑色の瞳を持つ彼女―――金糸雀。

〝      〟大連盟の創始者の一人にして参謀を務め、数々の魔王を打ち倒した最強のゲームメイカー。

そんな金糸雀と夢の姿が一瞬、重なったように見えた。

レティシアは疲れているのか?と自問自答し、目を擦るとそこにはもう金糸雀の姿は消えていた。

気のせいか、そう思ったレティシアはこれ以上深く考えることをやめる。

金糸雀ならきっと無事で、どこかで元気に暮らしているに違いないのだから。

そんなレティシアが、金糸雀の死を知ることになるのはまだ先の話になる。

気絶したガルドは半刻も経過せずに飛び起きた。

それからガルドはレティシアの隣にいる夢にビクビクしながらも、レティシアの提案を飲んで〝鬼種〟のギフトを貰い、吸血虎に変貌するのだった。




輪廻の化身の正体は十六夜の妹。
そして輪廻と夢が『敵』だと理解したその時が。
〝ノーネーム〟にとって本当の絶望の始まりである。
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