問題児たちが裏ボスと出逢うそうですよ?   作:問題児愛

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無理やりねじ込んだら1万文字近くいってしまった。


訪問

翌日、〝サウザンドアイズ〟・白夜叉の私室。

白夜叉と輪廻そしてレティシアの三人が集まっていた。

モニターのようなモノが幾つも空間にあり、何かが映し出されていた。

それは〝ノーネーム〟一同が〝フォレス・ガロ〟の居住区に集まっている光景だった。

これからギフトゲームを始める為の集まりだ。

無数のモニターから様々な視点で映し出されており、〝フォレス・ガロ〟の居住区が異様なモノに変貌を遂げていた。

木々がまるで生きているかのように蠢き、それらがビッシリと居住区に根を張りジャングルのようだった。

この木々はレティシアが〝鬼化〟させたモノだ。

別のモニターにはレティシアが〝鬼種〟を与え、吸血鬼化したガルドの姿もあった。

昨夜会った彼の姿はなく、人型ではなく完全に虎の姿をしている。

脳内『夢』が、虎さんが虎さんになってますね!などと呑気な言葉を発していた。

一方、白夜叉が扇子で口元を隠しながら、フホホホホと笑いながらとあるモニターに釘付けである。

そのモニターに映し出されるは―――黒ウサギのスカートの中身を覗き込もうとしている絶妙な視点という白夜叉得なお馬鹿なモニターだった。

フホホホホ!フホホホホ!フホホホホ!

レティシアはそんな白夜叉を冷ややかな眼差しで見つめ、ハッとしてスカートを押さえる。

そして輪廻を睨みつけて、まさか覗いているのかと言いたげな眼で訴えるレティシア。

輪廻は小首を左右に振り、レティシアの脳内に直接伝えた。

 

『安心しろレティシア。我輩に覗きの趣味はない。愛を伝えるならば直に触れるべきであろう?』

 

安心できるかッ!と心中で叫ぶレティシア。

とどのつまり、輪廻はやはり変態であった。

最強種には変態しかいないのだろうか?とレティシアは痛い頭を抱える。

ふと、輪廻が見つめる先のモニターを見つめて、レティシアが目を丸くした。

そのモニターに映っているのは―――十六夜の顔がドアップされたモノだった。

それをレティシアが問う前に、輪廻がレティシアの脳内に直接伝えた。

 

『ああ。コレは我が化身(アバター)のたm【きゃあああああーーーーーッ!!十六夜お兄ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁんッ!!!】………うむ、言わずとも分かるな?』

 

「は、はは………」

 

輪廻の言葉を遮るように脳内『夢』の歓喜の叫びが聞こえる。

凄まじいお兄ちゃん大好きオーラが輪廻の身体から放出される。

レティシアは、そういうことかと苦笑いをした。

茶番はさておき、輪廻達が見守る中、〝ノーネーム〟と〝フォレス・ガロ〟のギフトゲームが開始された。

ギフトゲーム―――〝ハンティング〟。

ホストの本拠内に潜むガルド=ガスパーの討伐というシンプルなものだが、〝契約(ギアス)〟により指定武具でしか討伐できないという限定付きだ。

これにより耀の〝生命の目録(ゲノム・ツリー)〟で借りた動物(ともだち)の力で物理的に傷付けることも出来なければ、飛鳥の〝威光〟で精神的に傷付けることも出来ない。

ガルドと彼女達の圧倒的な実力差を無くし、五分に持っていくゲームメイクとは流石だな、とレティシアを評価する輪廻。

そして五分になったことで、見応えのあるギフトゲームとなり、耀と飛鳥がどう出るか楽しみであった。

ギフトゲームの結果は―――〝ノーネーム〟の勝利に終わった。

だが仲間を頼らず独断でガルドに挑んだ耀は負傷。

飛鳥が白銀の十字剣(していぶぐ)に〝威光〟を行使し、〝疑似神格〟を付与する事で恩恵は極大化され、一撃でガルドを葬ってみせた。

如何に指定武具とはいえ、たったの一撃で対象を殺すほどの力はない。

これは飛鳥の為せる御業だが、おそらく彼女は白銀の十字剣を『支配した』という程度にしか思っていないだろうが。

それから黒ウサギが負傷した耀を〝ノーネーム〟に連れ帰り、残った三人は―――十六夜を筆頭にジン=ラッセルを掲げ上げ、〝フォレス・ガロ〟に奪われた〝名〟と〝旗印〟の返還を行った。

その際、〝ノーネーム〟が『打倒魔王』を掲げたのを聞いた輪廻から、星を殺しかねないほどの殺気を放出したのを感じ取る。

それにレティシアだけでなく、白夜叉さえゾッと背筋が凍り付く感覚がした。

そして同時に思う、輪廻は『魔王』ではないのに、何故『打倒魔王』に反応したというのか。

白夜叉と同じ『元・魔王』だとでもいうのか?だが『元・魔王』ならば何処かに隷属しているはずだ。

だがそんな情報は聞いたこともないし、輪廻の動きに制限があるとも思えない。

彼女は一体、何者なのだろうか………?

 

 

 

 

「では、〝ノーネーム〟へと向かうか、レティシアよ」

 

「あ、ああ………だが二つほどいいか?」

 

「なんだ?」

 

輪廻が小首を傾げて聞き返すと、レティシアが言った。

 

「何故私は純白ドレスに着替えさせられて、またお姫様抱っこされてるんだ?何故また輪廻殿は白黒メイド服に着替えているんだ?」

 

「なんだ、そんなことか。レティシアは吸血鬼の姫君だからその格好の方が合っているし、姫君をお姫様抱っこするのはそんなにおかしなことか?我輩がメイドの格好をしているのはレティシアの護衛だと言ったはずだが?」

 

「おかしいわッ!!メイドの格好はもう何も言わないが、輪廻殿は私で遊んでないか?遊んでいるよな!?わざと怒らせたり恥ずかしがる表情を見て楽しんでいるんだよな!?」

 

「そうだが?」

 

全く悪びれる素振りもなく即答する輪廻。

レティシアはガクリと頭を垂れた。

輪廻はレティシアが大人しくなったその時を待っていたかのように微笑し、白夜叉に向き直り言う。

 

「では行ってくる。それと白夜様―――〝ペルセウス〟の頭がここへ向かってきている。お相手を頼む」

 

「う、うむ。任された。輪廻ちゃんもレティシアのことを頼んだぞ」

 

「ああ。レティシアを守るついでに、〝ノーネーム〟のことも守ってやろう」

 

「なに?」

 

それは一体どういう意味だ、と問う前に輪廻とレティシアの姿が掻き消える。

〝ノーネーム〟の本拠地に『空間跳躍(テレポーテーション)』したのだろう。

意味深な発言を残した輪廻に、白夜叉は静かに呟いていた。

 

「輪廻よ、おんしは………〝ペルセウス〟が〝ノーネーム〟を襲うと、そう思っておるのか?」

 

 

 

 

「まあ、次回を期待するか。ところでその仲間ってのはどんな奴なんだ?」

 

「そうですね………一言で言えば、スーパープラチナブロンドの超美人さんです。指を通すと絹糸みたいに肌触りが良くて、湯浴みの時に濡れた髪が星の光でキラキラするのです」

 

「へえ?よく分からんが見応えはありそうだな」

 

「それはもう!加えて思慮深く、黒ウサギより先輩でとても可愛がってくれました。近くにいるのならせめて一度お話ししたかったのですけど………」

 

談話室でそんな話を十六夜と黒ウサギがしていると、

 

「―――ほう?レティシアの話をしているのか?それならば丁度いい手土産が貴様らにあるが」

 

「いや、誰が手土産だ誰が!?」

 

音も無く、輪廻と、彼女にお姫様抱っこされたままのレティシアが談話室に現れた。

あまりの唐突な出現に黒ウサギだけでなく、十六夜さえびっくらこく。

黒ウサギは、輪廻とレティシアの姿を認めて目を大きく見開き、驚愕の声を上げた。

 

「え?り、輪廻様!?それにレティシア様まで!?」

 

「ああ。昨日ぶりだな、兎娘、十六夜」

 

「様はよせ。今の私は他人に所有される身分。〝箱庭の貴族〟ともあろうものが、モノに敬意を払っていては笑われるぞ」

 

冷静な口調で微笑する輪廻と、黒ウサギの態度に苦笑するレティシア。

だがすぐにレティシアは、輪廻を睨みつけて言う。

 

「それよりも輪廻殿?いつになったら下ろしてくれるんだ?」

 

「ん?ああ、すまんな」

 

輪廻はレティシアを下ろす。

ビックリするほどあっさり手離した輪廻に、レティシアは驚きつつも距離を置いて警戒する。

やれやれと小首を振って輪廻が苦笑を零す。

十六夜は、ふうん?と輪廻とレティシアを見回して口を開く。

 

「昨日と格好が違うな輪廻?メイドか………ならそっちの純白ドレスの奴はどっかの姫君かなんかか?」

 

「ああ。レティシアは吸血鬼の姫君で、我輩は彼女の護衛だ。ゆえに先はお姫様抱っこを」

 

「だからそれはおかしいと言っているだろう!?」

 

「なるほど、その為のお姫様抱っこか」

 

「君は何故それで納得する!?」

 

愕然とするレティシアを、輪廻は微笑し、十六夜がニヤニヤと見つめる。

黒ウサギがそんな光景に苦笑しつつも、本題を訊く。

 

「そ、それでお二人はどういったご用件でいらしたのですか?」

 

「用件というほどのものじゃない。新生コミュニティがどの程度の力を持っているのか、それを見に来たんだ」

 

「先も話したが我輩はレティシアの護衛だ。誰に頼まれたかは言わずとも分かるだろう?」

 

「………白夜叉か」

 

「ああ、流石は十六夜だ。では何故貴様らの頭首に会うのを避けるようにコミュニティを訪れたかも分かるな?」

 

「………!ではやはりガルドに手を貸したのは、」

 

「ああ、私だ。お前達の仲間を傷付けてしまったからな。ジンには合わせる顔がないんだ」

 

「御チビが言ってた〝鬼化〟。なるほど、それで吸血鬼のお姫様か。そして美人設定だと」

 

「は?」

 

「え?」

 

「いや、いい。続けてくれ」

 

十六夜はヒラヒラと手を振って続きを促す。

輪廻はいつもの微笑を浮かべていた。

 

コミュニティを解散させるよう説得しに来たが、白夜叉から神格級のギフト保持者が〝ノーネーム〟に所属した事を聞かされる。

そこでレティシアは、コミュニティ救済の力があるかガルドを利用して試すも彼では当て馬にもならなかった。

飛鳥と耀ではまだまだ青い果実で判断に困るし、何よりも肝心の神格級のギフト保持者である十六夜が参加していなかったからだ。

その話を聞いて十六夜が笑って立ち上がる。

 

「ならあんたが俺を試せばいい。そう思わないか―――元・魔王様?」

 

「ふふ………なるほど。それは思いつかなんだ。実に分かりやすい」

 

それを聞いてレティシアも笑って立ち上がる。

だがそんなレティシアを輪廻が制した。

 

「いや、レティシアでは十六夜の相手は務まらん。我輩が代わりに力試ししよう」

 

「は?何を言ってるんだ輪廻殿!私なら」

 

「ふん。神格を失った貴様では無理だ、下がれ」

 

「………っ!」

 

図星を突かれたのか、言葉が詰まるレティシア。

ウサ耳で捉えたトンデモ情報にギョッと目を剥く黒ウサギ。

 

「え?神格を失った!?どういうことですかレティシア様!?」

 

「……………、」

 

「そんなに知りたければ自分の目で確かめるといい」

 

輪廻がパチンと指を鳴らすと、黒ウサギの眼前に金と紅と黒のコントラストで彩られたギフトカードが現れる。

黒ウサギは驚きつつもギフトカードを手に取り見つめ、震える声で言う。

 

「ギフトネーム・〝純潔の吸血姫(ロード・オブ・ヴァンパイア)〟………そんな、ギフトネームが変わってる。鬼種は残っているけど、本当に神格が残っていないなんて」

 

「なんだよ。元・魔王様は吸血鬼のギフトしか残ってなくて弱体化してるのか?」

 

「………はい。武具は多少残してありますが、自身に宿る恩恵(ギフト)は………」

 

「まあそういうことだ。ゆえにレティシアでは十六夜の相手は務まらん。我輩が買って出たわけだが………不満か?」

 

輪廻が訊くと、十六夜はまさかと笑って首を横に振る。

 

「輪廻とは元・魔王様との力試しの後、友達のよしみで遊んでもらうつもりだったが、手間が省けて助かったぜ。元・魔王様があんなんじゃ、あんたの言う通り楽しめないだろうしな」

 

「ふむ?そんなに元・魔王様と戦いたかったのか?」

 

「別に?元・魔王様の白夜叉ともお預け状態だが、あんたとの再戦が出来るならどうでもいいさ」

 

「そうか。だが安心するといい十六夜」

 

「あん?」

 

それはどういう意味だ、と言いかけた十六夜は咄嗟に身構える。

輪廻の体から放たれた、尋常ではない殺気に反応したことによって。

輪廻は怪しげに光る白と黒の異なる眼で十六夜を見据えて告げる。

 

 

「我輩こう見えて『元・魔王』だ。ゆえにこそ我輩を楽しませてみせろ。なあ―――『打倒魔王』を掲げし〝ノーネーム〟の諸君ら?」

 

 

「「「……………ッ!!?」」」

 

 

衝撃のカミングアウトをした輪廻に、黒ウサギもレティシアも十六夜さえ戦慄する。

黒ウサギとレティシアも、輪廻が『元・魔王』であることを知らないし、彼女が『魔王』として暴れたことすら聞いたことがない。

考えられるとしたら一つしかない。

輪廻は正体を偽っているのだと。

彼女は『ウロボロス』を騙る〝何か〟なのだと、二人は確信する。

一方、十六夜は瞳を輝かせながら嬉々とした声を上げた。

 

「輪廻が『元・魔王』!?てことはあんたを倒したコミュニティが存在するってことか!?」

 

「そうだな。そのコミュニティは残念ながら『魔王』に滅ぼされてしまったが」

 

「へえ?こいつは面白い偶然だな。輪廻を倒したコミュニティもまた仮称・超魔王に滅ぼされて〝ノーネーム〟になってるのか。………ハッ、そういうことかよ。だからあんたは黒ウサギのコミュニティの面倒を、『魔王』に滅ぼされる三年前まで見てたってことだ?」

 

「ほう?面白い解釈だな十六夜。我輩が秘密裏に〝ノーネーム〟に隷属しているとでも?」

 

「じゃなきゃなんだってんだ?」

 

「ふふ、その答えを知りたきゃ我輩に一発入れてみせろ」

 

輪廻は微笑と共に窓から中庭へと降り立つ。

 

「上等だオラ!すぐに答えを言わせてやらあ!」

 

十六夜も飛び出して輪廻と向かい合う。

置いてけぼりを食らっていた黒ウサギとレティシアがハッとして我に返る。

輪廻が『元・魔王』なのは、金糸雀達が秘密裏に隷属させていたというのか?

黒ウサギやレティシアに内緒で?

そんな疑問が生まれる二人を余所に、輪廻と十六夜が激突していた。

第三宇宙速度というデタラメな速度で乱打された十六夜の拳や蹴りは、輪廻の人差し指が全てを受け止めていく。

輪廻の神速で打ち出された人差し指による突きを、十六夜は紙一重に躱していく。

互いの尋常ならざる攻防を目の当たりにした黒ウサギとレティシアは、開いた口が塞がらない状態で固まっていた。

輪廻は最強種の一角だから今更驚きもしないが、彼女の動きについていけてる十六夜はデタラメ過ぎた。

彼は本当に人間なのだろうか?という純粋な疑問が脳を埋め尽くしていった。

それから一分ほど経過し、輪廻が更に速度を上げて十六夜を翻弄し始めて人差し指の突きが十六夜の胸を捉えようとし、咄嗟に両腕でガードを試みるが、

 

「無駄だ」

 

「ぐっ………!?」

 

そのガードは人差し指で跳ね上げられ―――胸に触れるすんでのところで止まった。

輪廻は微笑し勝利宣言する。

 

「我輩の勝ちだ、十六夜」

 

「チッ、まだ速くなるのかよ」

 

負けて悔しそうに口を歪める十六夜。

二人の戦いを見届けた黒ウサギとレティシアも降りて来た。

 

「す、凄かったのです!ところで十六夜さんは本当に人間でございますか?」

 

「俺は人外になった覚えはないが?」

 

「いや、君の動きは吸血鬼の私でも真似出来ないぞ」

 

「そりゃどうも。俺としてはまだまだ余裕綽々な輪廻の顔を歪めてやりたいが、今の俺じゃ無理みたいだな」

 

「挑戦ならいつでも受けてやるからそう慌てるな」

 

「言ったな?なら今すぐ第三ラウンドおっぱじめようぜ!」

 

「やれやれ、元気だな十六夜。だがその前に―――レティシアに用がある連中が来たようだ」

 

なに?と三人が怪訝な顔をしたその時、遠方から褐色の光が射し込み、こちらに向かってきた。

レティシアはその光に気付いて叫ぶ。

 

「あの光………ゴーゴンの威光!?まずい、見つかった!」

 

焦るレティシアを、輪廻が抱き寄せ耳元で囁く。

 

「魔星の威光を受ける必要はない。元々大人しくレティシアを奴らに渡すつもりだったからな。〝ノーネーム〟を巻き込みたくはなかろう?」

 

「あ、ああ。だがゴーゴンの威光を放っておけば黒ウサギ達が!」

 

「それなら問題ない。我輩に任せよ」

 

輪廻はそう言って魔星の威光に右手を突っ込んだ。

そしてそのまま魔星の威光を掴み、握り潰した。

 

「「は?」」

 

「へえ?」

 

「「「「「馬鹿な!?」」」」」

 

素っ頓狂な声を漏らす黒ウサギとレティシア。

怪しく瞳を光らせる十六夜。

そして魔星の威光を容易く握り潰した事に愕然とする何者か達。

ゴーゴンの首を掲げた旗印―――〝ペルセウス〟の騎士達だった。

そんな彼らに輪廻が微笑して言う。

 

「そう強行手段を取らずともレティシアは貴様らに返すつもりだったんだがな」

 

「何!?」

 

「ぬかせ!〝名無し〟の分際でッ!」

 

「なんだ?中層風情が上層に席を置く我輩に挑むのか?」

 

「「「「「は、箱庭上層だと!?」」」」」

 

顎が外れるほど驚愕する〝ペルセウス〟の騎士達。

上層といえば修羅神仏が割拠する人外魔境。

そんな者が何故最下層にいるというのか、それも〝ノーネーム〟に?

〝ペルセウス〟の騎士達は輪廻の発言をハッタリと決めつけ嗤う。

 

「そんな嘘で我らが騙されるものか!」

 

「我ら〝ペルセウス〟を侮辱した罪、万死に値する!」

 

「覚悟しろ〝名無し〟共!」

 

「ふむ。聞く耳を持たんか………さて、どうすればいいかレティシア」

 

「いや、それを私に聞かれてもな………」

 

輪廻とレティシアがそんな話をしていると、〝ペルセウス〟の騎士の一人が輪廻に斬りかかってきた。

 

「我らの所有物、返してもらうぞ!」

 

「返さんとは言ってないんだがな」

 

輪廻は困ったように突っ込んできた騎士に向けて左手を翳す。

すると騎士の姿は掻き消え、元いた場所に跳ばされていた。

 

「「「「「……………は?」」」」」

 

「何が起きた!?私は確かにあの女に斬りかかったはず!?」

 

「貴様を元の場所に跳ばしただけだ、そう驚くな」

 

何の前触れもなく、レティシアを抱きかかえた輪廻がその騎士の眼前に現れる。

 

「うおっ!?」

 

「な、なんだ!?何が起きた!?」

 

「どっから湧いて出てきた!?」

 

「ふむ、いちいちうるさいなこいつら。そうは思わんか、レティシア?」

 

「いやだからなんで私に振るんだ?」

 

輪廻が騒がしい〝ペルセウス〟の騎士達を無視して、呑気にレティシアに話しかける。

無視されてイラつきつつも、ハデスの兜のレプリカを被った〝ペルセウス〟の騎士達が輪廻とレティシアを包囲した。

 

「ふん。ハデスの兜をつけて我輩の眼を欺いたつもりのようだが、我が龍眼の前では無意味だな、丸見えだ貴様ら」

 

「「「なん、だと!?」」」

 

「ええい!こうなれば一斉に突っ込んで取り押さえろ!」

 

「「「「「うおおおおおおおおおお!!!」」」」」

 

「………本当に騒がしいな貴様らは」

 

輪廻は溜め息を吐くと、パチンと指を鳴らした。

すると輪廻とレティシアを捕らえんと突っ込んでいった〝ペルセウス〟の騎士達数十人が一瞬にして忽然と姿を消してしまった。

これには騒がしかった〝ペルセウス〟の騎士達も言葉を失う。

さっきとはわけが違う、今の一瞬で数十人規模の『空間跳躍』をやってのけた輪廻が〝ノーネーム〟の一員と見るのは間違いだったと知る。

彼ら全体に恐怖が浸透していく中、輪廻が忠告した。

 

「貴様らの仲間は我輩が〝ペルセウス(おうち)〟に返した。まだ我輩の言うことが信じられないのなら向かってくるといい。その代わり次は全員〝ペルセウス(おうち)〟に強制送還するが………どうする?」

 

「「「「「すみませんでした!!!」」」」」

 

輪廻が紛うことなき上層の者だと理解した〝ペルセウス〟の騎士達が一斉に深く頭を下げて渾身の謝罪を見せる。

〝ノーネーム〟なら兎も角、上層の者に敬意を払わなければ殺されると思ってるのか、彼らは全身を恐怖で震わせていた。

輪廻は満足したように微笑し、分かればよいと頷いた。

何だこの光景は、とレティシアは唖然として見つめていた。

大人しくなった〝ペルセウス〟の騎士達を見てから、輪廻は地上にいる黒ウサギに訊いた。

 

「さて、我輩はこいつらを伴って〝ペルセウス〟に行こうと思うが………なにかレティシアに聞いておきたいことはあるか、兎娘?」

 

「え?あ、はい。レティシア様を買い取る方は何処に住まわれてる方なのですか?」

 

「……………、」

 

「………?レティシア様?」

 

「………黒ウサギ、落ち着いて聞いてくれ。私が売られる場所は―――箱庭の外だ」

 

「なっ………!?」

 

箱庭の外と聞いて黒ウサギが血相を変えて叫ぶ。

 

「どうしてなのですか!レティシア様は―――〝箱庭の騎士〟は箱庭の中でしか太陽の光を受けられないのですよ!?その彼女を箱庭の外に連れ出すなんて………!」

 

「我らの首領が取り決めた交渉。部外者は黙っていろ」

 

〝ペルセウス〟の騎士の一人が突き放すように語る。

これには黒ウサギが激昂する。

 

「こ、この………!これだけ無遠慮に無礼を働いておきながら、非礼を詫びる一言もないのですか!?それでよく双女神の旗を掲げていられるものですね、貴方達は!!!」

 

「ふん。こんな下層に本拠を構えるコミュニティに礼を尽くしては、それこそ我らの旗に傷が付くわ。身の程を知れ〝名無し〟が」

 

「なっ………なんですって………!!!」

 

〝ペルセウス〟の騎士達に更なる侮辱をされて黒ウサギの堪忍袋が爆発する。

輪廻が穏便に済ませようと動いてくれていたが、黒ウサギには我慢の限界だった。

レティシアが黒ウサギを止めようと口を開くが、その口は輪廻に塞がれ耳元で囁いてきた。

 

「兎娘はレティシアのことを思って怒ってるんだ。彼女のその想い、しっかりと受け止めてやれ」

 

「……………ああ」

 

輪廻に諭され、レティシアは渋々従うことにした。

自分の為に黒ウサギが怒ってくれるのは嬉しいが、何か余計な真似をしないかヒヤヒヤしている。

しかしレティシアの嫌な予感は的中してしまう。

黒ウサギの右手には閃光のように輝く槍―――〝疑似神格・梵釈槍(ブラフマーストラ・レプリカ)〟が顕現する。

それに慌てふためく〝ペルセウス〟の騎士達に、輪廻は凶悪な笑みを浮かべると、レティシアを離して彼らを守るように立ち塞がった。

 

「り、輪廻様!?何を!?」

 

「兎娘、貴様の怒りは分かる。ゆえに遠慮せず帝釈天(インドラ)の槍を放つがいい。我輩が受け止めてやろう」

 

「………本当によろしいのですか?」

 

「ああ、構わん。撃て」

 

「………分かりました。輪廻様、どうかご無事で!」

 

黒ウサギはピンクの長髪を靡かせながら、帝釈天の槍を全力で撃ち放つ。

 

「はああああああああ―――――ッ!!!」

 

神速で撃ち出した帝釈天の槍は、輪廻目掛けて一直線に空を駆り―――その尖端を輪廻は人差し指で受け止めた。

 

「「「「「なっ………!?」」」」」

 

「へえ?」

 

帝釈天の槍を指一つで受け止める輪廻に、愕然とする黒ウサギとレティシアそして〝ペルセウス〟の騎士達。

十六夜だけは、黒ウサギの渾身の一撃さえものともしねえとかどこまでも俺を楽しませやがる、などと言ってそうな獰猛な笑みで輪廻を見つめていた。

彼女も彼女で、自身を穿てずとも無数に放出される神雷で滅ぼしにくる一撃にこれまでにない笑みを浮かべていた。

 

 

嗚呼、善き哉。

貴様の神雷をこの身に受けたのは、幾星霜ぶりだ。

やはり闘いはこうでなくてはな。

そうは思わんか―――〝神王(インドラ)〟よ。

 

 

輪廻は神雷を堪能し尽くしたのか、槍の柄を掴むと天幕に向けて投げ飛ばす。

その速度は十六夜ですら到達出来ない―――第六宇宙速度を叩き出して天幕に着弾し、更なる神雷を撒き散らし続けた。

驚きのあまり尻餅を突いていた黒ウサギを、輪廻は微笑して見下ろし言う。

 

「中々に良い一投であった。久々に楽しめた。だが―――まだ足りん。我輩を楽しませるにはまだ足りん」

 

そう言って輪廻は、凶悪な笑みを浮かべて十六夜を見つめた。

まるで、次は汝のとっておきを余に見せよ、とでも言ってきてるような眼差しだった。

それから輪廻が指を鳴らすと、そこにはもう〝ペルセウス〟の騎士達やレティシア、そして輪廻の姿は跡形もなく消え去っていた。




次回

ルイルイとの邂逅

十六夜のとっておき

失った記憶
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