問題児たちが裏ボスと出逢うそうですよ?   作:問題児愛

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丁度一ヶ月経過したか。
ペスト編の前に番外編を前編(〝ウロボロス〟side)と後編(〝ノーネーム〟side)でお送りします。


番外編
特訓・前編


―――箱庭のとある西側〝閉鎖世界(ディストピア)〟跡地。

これは〝ノーネーム〟の歓迎会が行われた後日の話。

廃墟と化したその玉座に一人の少女が眠っていた。

陽の光で極光のような輝きを魅せる金髪の幼い少女。

その少女の名は永劫輪廻であり、その(うつわ)の名は西郷夢。

白と黒のメイド服を着ているのは以前そのような格好をしていたから全くもって問題ない。

だが、その手首足首そして首には―――無骨な枷が取り付けられていた。

まるで奴隷と化した輪廻の下に、三つの影が突如姿を現した。

一人目は黒髪短髪で黒い軍服を着た長身の男。

二人目は白髪で布の少ない白装束を纏う女。

三人目は赤紫髪で白黒の斑模様のワンピースを着た少女。

赤紫髪の少女の手には〝ウロボロス〟の旗印が刻まれたカードが握られていた。

恐らくこのカードは輪廻の本拠地へ向かう為に必須なものなのだろう。

まあそれは兎も角、玉座に居眠りする輪廻の姿を認めた三人はギョッと目を剥き声を上げた。

 

「は?なんだあの格好は!?」

 

「輪廻様ったらこんな趣味があったのね!」

 

「いや違うでしょ。服装は兎も角、輪廻にあんな趣味は無いと思うわ」

 

訂正、赤紫髪の少女だけは冷静な声で言った。

それもそうか、と納得する黒髪の男と白髪の女。

とはいえ異常といえば異常だ。

だから眠っている彼女に訊くことにした。

 

「起きなさい輪廻。どうしてそういう格好になってるのかしら?」

 

「⋯⋯⋯⋯⋯」

 

「ちょっと聞いてる?」

 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯すぅ」

 

「オケ、あくまでも寝てるつもりね。なら容赦しないわよ―――ヴェーザー!」

 

「OK、マイマスター!」

 

赤紫髪の少女にヴェーザーと呼ばれた男は、獰猛に笑って肩に担いでいた巨大な笛を頭上でグルングルン回し始める。

それからその遠心力を利用して、輪廻の頭に巨大な笛を勢いよく振り下ろした。

ヴェーザーのその一撃を、

 

「―――――⋯⋯⋯うむ、時間通りだな〝グリムグリモワール・ハーメルン〟の諸君ら」

 

輪廻が微笑と共に人差し指一つで受け止めた。

ヴェーザーは別段驚くことも無く、巨大な笛を肩に担ぎ直す。

赤紫髪の少女は口元を隠しながら微笑して言う。

 

「おはよう輪廻。だけどせっかくヴェーザーが素敵な目覚ましプレゼントしようとしていたのに防ぐなんて酷いわ」

 

「ふむ、そうか。それはすまなんだ。だがこの娘は大切な我が化身(アバター)だからな、容易に殴らせはせんよ―――ペスト」

 

輪廻の返答に、そ、と短く返すペストと呼ばれた少女。

白髪の女がムッとした顔でペストに向かって言う。

 

「マスター!ヴェーザーばっかり狡いです!次は私にやらせてくださいよー!」

 

「あらごめんなさい。だけどそのチャンスはこの後いっぱいあるじゃない―――ラッテン」

 

ラッテンと呼んだ女を宥めるペスト。

そんな様子を輪廻が微笑して見ていると、ヴェーザーが頭を掻きながら訊いてきた。

 

「それはそうと、輪廻様はなんでそんなものつけてんだ?」

 

「ん?メイド服のことか?」

 

「そっちじゃねえよ!?首とか手足についてる枷の方だ!」

 

「ああ、コレか。コレはまあカクカクシカジカで」

 

「なるほど、そういうことだったのか」

 

輪廻の説明に納得したように頷いたヴェーザー。

それにペストが堪らずつっこんだ。

 

「いや何がなるほどよ!?何も伝わらないんだけど!?」

 

「え?伝わらないんですかマスター?」

 

「え!?ラッテンにも伝わってるの!?」

 

「それは勿論―――」

 

ラッテンとヴェーザーが顔を見合わせて頷き、

 

「「さっぱり分からない!」」

 

「でしょうねッ!!」

 

そう言うと思ってたわッ!!!と心の中で叫ぶペスト。

輪廻はニヤニヤしながらペストを見つめて事のあらましを説明した。

 

「これは内緒で〝ノーネーム〟のところに行っていたことと、ラミア母娘をその〝ノーネーム〟に置いてきたことによる厳罰だな」

 

『〝ノーネーム〟?』

 

ペスト達三人が声を揃えて聞き返す。

輪廻は、うむと頷いて続けた。

 

「〝ノーネーム〟が新しい人材を呼び出したと聞いてな、気になって下層に降りてたんだよ」

 

「そ。それでその人材はどうだったの?」

 

「そうだな。異世界から召喚された三人のうち、二人の娘はまだまだ磨けば光る原石だが、少年の方は〝ウロボロス〟で喩えるならば―――白髪の少年並みもしくはそれ以上か」

 

『は?』

 

思わず素っ頓狂な声を洩らすペスト達三人。

〝ウロボロス〟に所属する白髪の少年と言ったら―――殿下の事だと理解する。

殿下の実力なら、輪廻との特訓を見ている為よく分かってるつもりだ。

彼の実力は一言で表せば―――デタラメ。

ラッテンもヴェーザーも、ペストでさえ勝てる気がしないと思っている存在(でんか)と。

その存在(でんか)に匹敵するあるいはそれ以上の少年が〝名無し(ノーネーム)〟にいるという話を聞いて驚くなという方が無理な話である。

 

「あの殿下並みの実力者が〝ノーネーム〟にいるのか⋯⋯⋯そいつはやべえな」

 

「はいはーい!私は他の女の子二人の方が気になります!」

 

「貴女はそっちにしか興味無いのね」

 

「ふふ。まあそんな彼らとはすぐに出逢うことになるだろうな」

 

『え!?』

 

驚いた顔で見つめてくるペスト達三人に、輪廻はただ微笑する。

ペストが顔を引き攣らせつつ輪廻に問うた。

 

「⋯⋯⋯それで、彼らと会うのはいつ頃?」

 

「ん?そうだな⋯⋯⋯これよりひと月もないかな」

 

「結構すぐじゃない―――ってちょっと待った!ひと月もないってことはまさか〝ノーネーム〟も火龍誕生祭に来るというのかしら?」

 

「無論だ。彼らには白夜様が付いてるからな。路銀が無くて〝境界門(アストラルゲート)〟が使えなくとも北側に連れて行ってもらえるだろう」

 

白夜。

その名前を聞いてペスト達三人の表情が強ばる。

東側最強の〝階層支配者(フロアマスター)〟で太陽の主権戦争の優勝者。

直接戦ったことは無いが、彼女の化け物っぷりは前マスターが率いた〝幻想魔道書群(グリム・グリモワール)〟に所属していたラッテンとヴェーザーが知っている。

何よりも―――〝ウロボロス〟最強と称され、〝最終兵器〟である輪廻が『様付け』して慕う程の存在だということが、ペスト達三人が恐怖する最たる理由だった。

 

「輪廻様に加えあの白夜王すら気にかける〝ノーネーム〟、か。名無しになる前は一体どんなコミュニティだったんだよ」

 

額を押さえながら呻くヴェーザー。

 

「只者では無かったことはなんとなくだけれど分かるわね」

 

肩を震わせながら呟くラッテン。

 

「⋯⋯⋯とはいえ、それは過去の話でしょ?確かに殿下並みの実力者が〝ノーネーム〟にいるのは脅威だけれど―――だから何?まさか貴女はそんな事で私の、『ワタシタチ』の悲願を諦めろと言うつもり?ハッ、冗談じゃないわ。その程度の脅しで諦めるくらいなら、今ここで貴女に挑んで殺された方がマシよ!」

 

恐れるどころか逆に闘志を燃やして自身を奮い立たせるペスト。

輪廻に挑んで死んだ方がマシというのは自虐的に聞こえるが、これはまったく逆の意味で―――『輪廻さえ敵に回せる覚悟』の表れだった。

彼女は、8000万の怨嗟の声を叶える為ならば、勝ち目の無い相手だろうと立ち止まるわけにはいかない。

仮令(たとえ)強大な敵が立ちはだかろうとも、この身朽ち果てるまで決して諦めたりはしないのだ。

揺るがぬ強い意志を魅せるペストに、ラッテンとヴェーザーは感化される。

嗚呼、やはり彼女に付き従ってきて良かったと。

今のマスターは貴女だけだと、この命尽き果てるまでついて行くことを誓う。

ほう、と感心したように笑う輪廻は、〝ウロボロス〟の旗印が刻まれたギフトカードを取り出して言った。

 

「ではその覚悟が本物かどうか、見せてもらうとしようか。今日こそは我に一撃入れてみせるがよい」

 

「ええ、上等だわ。すぐに吠え面かかせてあげる!ラッテン!ヴェーザー!力を貸して!」

 

『イエス、マイマスター!』

 

臨戦態勢を取るペスト達三人。

輪廻はギフトカードを掲げて呟いた。

 

 

「―――〝疑似世界(アナザー・ワールド)〟」

 

 

刹那、四人のいた廃墟はガラリと変貌を遂げる。

天を衝くかというほど巨大な赤壁の境界壁。

そこから掘り出される鉱石で彫像されたモニュメント。

境界壁を削り出すように建築したゴシック調の尖塔群のアーチ。

外壁に聳える二つの外門が一体となった巨大な凱旋門。

色彩鮮やかなカットガラスで飾られた歩廊。

数多に点在した巨大なペンダントランプが朱色の暖かな光で照らしていた。

ペスト達三人は、その境界壁の天辺に立っておりその街を見下ろしている。

いつ見ても凄い光景だと舌を巻く。

何せこの街は―――一ヵ月後に開催予定の〝火龍誕生祭〟が行われる舞台にして、ペストにとっての初の戦いの舞台でもある場所を模倣したものなのだから。

輪廻にとって箱庭の街一つ模倣しそれを新たに生み出すことなど造作もないことなのだろう。

〝疑似世界〟はある意味〝模倣世界〟と言っていいのかもしれない。

そんな輪廻は、輪郭を円状に造られそれを取り囲む形で客席が設けられている闘技場のような場所の中央に立っていた。

彼女の下へ、境界壁から飛び降りてきたペスト達三人が向かい合う。

それからペストはギフトカードから一枚の羊皮紙を取り出し、ヴェーザーとラッテンと共に確認する。

 

 

『ギフトゲーム名〝永劫への挑戦〟

 

・プレイヤー一覧

〝ウロボロス〟第三連合に所属するコミュニティ。

 

・ホストマスター側 勝利条件

 なし。

 

・プレイヤー側 勝利条件

 ホストマスターに一撃与える(但し、防がれたら無効とする)。

 

・プレイヤー側 敗北条件

 なし。

 

・ルール

 ホストマスター側は恩恵(ギフト)及び権能の使用の一切を禁ず。

 プレイヤー側が勝利条件を満たすまで挑戦資格は無期限のものとする。

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

     〝          〟印』

 

 

内容はシンプルなものだが、その永劫輪廻(ホストマスター)に一撃与えるという勝利条件がペスト達には難易度が高過ぎた。

恩恵や権能の使用が禁止されている輪廻を相手にしているというのに、ペスト達の攻撃がまるで通用しない。

そればかりか、人差し指一つで全て受け止められ、弾かれ、一発も当てられていないのだ。

最初の頃は随分と舐められたものだと憤っていたが、いざギフトゲームが始まり実力の差を分からさせられては何も言い返せやしなかった。

それに後から来る殿下達が加わっても、追い詰めるどころか彼らの攻撃さえ指一つでどうにかしてしまう化け物なのだ。

もう正直彼女には指一本すら使って欲しくない程なのだが、回避だけだと面白味が欠けるとかなんとかで却下されることだろう。

まあそんなわけで今日まで幾度となく挑んできたこのギフトゲームをクリア出来ないままでいる。

それは一先ず置いておいて、〝契約書類(ギアスロール)〟に輪廻のコミュニティの名が欠落していることについてだが。

遥か昔にこの箱庭から消滅したコミュニティらしく、彼女はそのコミュニティの頭領だったそうだ。

今の彼女のギフトカードには〝ウロボロス〟の旗印が刻まれており、第一か第二連合に所属していることだろう。

なれば彼女の掲げていた旗印は別のものだったのだろうが、それはコミュニティ消滅と共に箱庭から消え去ってしまった為、ペスト達がそれを知る由もない。

そんなことを思いながらもペストは羊皮紙をギフトカードに仕舞って輪廻に言った。

 

「いつでもいいわ。開始の合図を頂戴」

 

「ああ。では―――始め」

 

輪廻が開始の合図を取ると、ペストは宙に舞い、ラッテンは後ろに跳んで距離を取り、ヴェーザーが巨大な笛を構えて突貫した。

 

「オラァ!!」

 

ヴェーザーは巨大な笛を自身の手足の如く操り、次々と攻撃を仕掛けていくが、輪廻はそれらを人差し指一つで弾いて捌く。

容易く捌かれるのは重々承知のヴェーザーは、攻撃の手を休めることなく輪廻に仕掛け続ける。

ヴェーザーが輪廻を相手取ってる間に、宙に舞っていたペストは双掌に束ねた8000万の怨嗟は黒い衝撃波となって輪廻へと撃ち出された。

それを背後に感じ取ったヴェーザーは巨大な笛を肩に担ぎ直して真横に跳ぶ。

輪廻に向かってきた黒い衝撃波は、

 

「いい連携だが―――無意味だ」

 

指一本軽く振るだけで霧散する。

しかしそうなる事は既に分かっていたヴェーザーとペストは、特に気にすることも無く輪廻を牽制すべく連携攻撃を続けた。

右からはヴェーザーの巨大な笛による連撃が襲い掛かり、左からはペストの竜巻く黒い風が襲い掛かる。

輪廻は右手の人差し指でヴェーザーの猛攻を弾いて捌きながら、左手の人差し指でペストの竜巻く黒い風を霧散させる。

こんな事をしても無駄だとヴェーザーやペストは理解しているはずなのに、無謀にも挑んでくる。

そんな彼らの意図を『時間稼ぎ』だと分かっていながらも、輪廻は敢えて彼らの作戦に乗ってあげていた。

そしてその時間稼ぎの目的はと、輪廻が二人の攻撃を凌ぎながらラッテンを見る。

ラッテンはフルートを唇に当て、奏で始めた。

高く低く、疾走するようにハイテンポなリズムを刻む曲調は、まるで何かを目覚めさせるかのようで―――やがて大地を迫り上げ、陶器で出来た巨躯の兵士を八体程造り上げた。

輪廻を取り囲む様に闘技場に現れた陶器の巨兵達は、一斉に雄叫びを上げた。

 

『BRUUUUUUUUM!!!』

 

文字通り、輪廻の四方八方に現れた陶器の巨兵達は、その全身の風穴から空気を吸い込み、大気の渦を造り上げる。

だがこの程度の乱気流では輪廻を巻き込む事など出来やしない。

輪廻は涼しい顔でヴェーザーとペストの攻撃を凌ぎつつ、地上に起きた乱気流の渦が周囲の瓦礫を吸収している様を見つめる。

ラッテンはフルートを掲げて陶器の巨兵達に向けて叫ぶ。

 

「放て、シュトロム!!」

 

『BUUUUUUUUM!!!』

 

ラッテンにシュトロムと呼ばれた陶器の巨兵達は、彼女の合図と共に吸収した瓦礫の山を圧縮し、臼砲のように一斉に撃ち出した。

そのタイミングで輪廻を牽制していたヴェーザーが上空へと跳び上がり、ペストの黒い風に乗る。

そして四方八方から撃ち出された数多の瓦礫が輪廻を襲い―――彼女は右脚を軸にしてクルリと一回転した。

ただ回転しただけではなく、シュトロムが撃ち出した無数の瓦礫を人差し指で全て打ち返していた。

それも揃って第三宇宙速度を遥かに凌駕した速度となって飛来し、八体のシュトロムを撃ち抜き一撃で粉砕する。

シュトロム達は崩れ落ちて土へと還る。

すると突如、輪廻を閉じ込めるように竜巻く黒い風が吹き荒れた。

輪廻はこれを指一つ軽く振って霧散させ―――上空から巨大な笛による落下攻撃を仕掛けてきたヴェーザーの一撃を人差し指で受け止める。

ヴェーザーはチッ、と舌打ちしてラッテンの下へ跳び退く。

ペストも一旦地上に降りて、ヴェーザーとラッテンの下へ移動した。

 

「いい感じに攻められたと思ったけれど、全然通じないなんて。それにその場から移動しないで私達の攻撃を全て捌くなんて本当に化け物」

 

「ふふ。とはいえ連携すら取れてなかったお前達がここまで出来るようになったのだ。我は嬉しく思うよ」

 

微笑する輪廻に、頬を微かに赤らめるペスト。

褒められるのは悪い気はしない。

そんなペストを微笑ましげにヴェーザーとラッテンが眺めていると、

 

「⋯⋯⋯ふむ。彼らも来たようだな」

 

輪廻のその言葉にハッとして振り返るペスト達三人。

すると突然、四つの影が現れた。

一人目は黒髪でノースリーブの黒いワンピースを着て腰にジャケットを巻き付ける少女。

二人目は白髪金眼で真っ白い正装を着崩した少年。

三人目はローブのフードを目深にかぶった豊穣と天候の神格を持つ〝黄金の竪琴〟を持つ女性。

四人目は巨大な一本角の龍角を頭上に持ち、胸元に〝疑似・生命の目録(ゲノムツリー・レプリカ)〟が刻まれた黒い鷲獅子。

そのうちの黒髪の少女が輪廻を見るや否や微笑み―――一瞬で輪廻の眼前に姿を現し抱きついてきた。

 

「私達も来ましたよー!輪廻様ー!」

 

「いらっしゃい。それにしても、抱きつくと見せかけて零距離からの短刀による刺突の奇襲は見事だリン」

 

「そう言って顔色一つ変えずに指一本で防ぐ輪廻様は相も変わらず隙が無くてヤバイですね!」

 

そう言いながら後ろに跳ぶと腰に下げている革のベルトに備えていた短刀を幾らか取り出して輪廻に投げつけるリンと呼ばれた黒髪の少女。

輪廻はそれらを人差し指と中指の二本で白刃取り、リンに向けて第三宇宙速度を遥かに凌駕した速度で投擲する。

至近距離なのに容赦の無い投擲をする輪廻だが、リンに当たることなく彼女の眼前で落下した。

地面に転がっていた短刀はいつの間にかリンのベルトに収まっており、一瞬で白髪の少年の下へ移動する。

白髪の少年は〝ウロボロス〟の旗印が刻まれたカードをヒラヒラさせながら輪廻を見つめて言う。

 

「悪いな。来て早々奇襲を仕掛けて」

 

「気にするな。少し前に寝込みを襲われたばかりだからな」

 

「へえ?それはペスト達の仕業か?」

 

「まあそうだな」

 

「いえ、寝ている振りをしておいて〝寝込みを襲われた〟という表現はどうかと思うのだけれど?」

 

すかさず冷静にツッコミを入れるペスト。

そもそも輪廻の寝首を搔ける猛者が居るなら是非紹介して欲しいものだ。

リンはペストに笑顔で手を振る。

 

「やっほーペストちゃん!既に輪廻様と一戦交えたみたいだね。手応えはあった?」

 

「いえ全く。ヴェーザーとラッテンと共に考えた作戦は見事に通じなかったわ」

 

「まあ、あの輪廻様が相手じゃしょうがないかー。私達が戦いに加わっても余裕の表情崩した事なかったし」

 

ムスッとした顔で輪廻を見るリン。

そんな彼女の後ろにいたローブの女性が口を開く。

 

「確かに輪廻様は〝ウロボロス〟最強の御方。容易くゲームクリアとはいかないでしょう。けれど私達にはリンがいるわ。今日こそは勝利に導いてくれるのよね?」

 

「勿論だよアウラさん!今日こそは輪廻様の表情を崩して勝利を掴んでみせるッ!!」

 

「ええ、期待してるわリン」

 

口元に笑みを作るアウラと呼ばれたローブの女性。

リンは〝ウロボロス〟第三連合のゲームメイカーにして、〝アキレス・ハイ〟と呼ばれている概念的な〝距離〟を支配する空間操作系の恩恵を所有している。

輪廻自身、ゲームのルールで恩恵と権能を禁止している為、空間操作等を使えない彼女にリンの恩恵を攻略出来る手段はない。

だが零距離の奇襲すらものともしない輪廻に一撃当てる方法が果たしてあるというのか。

いや、どんな超常的存在だろうと恩恵も権能も使えない状態で隙が無いはずがない。

きっと何処かに一撃当てるチャンスはあるはずなのだ。

アウラの隣に居た黒い鷲獅子は獣が唸る様な声で言う。

 

『リンの作戦と恩恵があればゲームクリアも不可能では無いはずだ。それに輪廻殿は殿下が押さえてくれる。我らはやれる事を精一杯行い、隙を作るまでよ』

 

「ああ。恩恵と権能を使わないだけじゃなく、速さまで俺に合わせた超舐めプしてくれてる輪廻が相手ならやり易い」

 

殿下と呼ばれた白髪の少年が頷く。

リンも頷き、ペスト達に確認を取る。

 

「うん。ペストちゃん達も全力で殿下の援護お願いできる?」

 

「ええ、分かったわ。貴方達もそれで構わないわね?」

 

「ああ、構わないぜ」

 

「マイマスターの御心のままに」

 

ペストの言葉に了承するヴェーザーとラッテン。

これで準備は整―――

 

「ところで貴方達は輪廻の格好を見て何とも思わないの?」

 

「ん?ああ、枷を取り付けられたメイドの輪廻か?別に何も思わないな。アレも一種の〝ふぁっしょん〟とやらなのだろう?」

 

「そんな訳ないでしょ!?」

 

「えー?私はアレはアレで可愛いと思うなー!輪廻様の器の子がそもそも美少女で可愛すぎだし!」

 

「確かに輪廻の器の子は可愛いけどそういう問題じゃない気が」

 

「いっその事、鎖で繋いで連れ回したいですわね」

 

「ちょ、アウラ!?なに恍惚とした顔でとんでもない事言ってるのよ!?」

 

『フン、下らん。装い等どうでもいいだろう。鎖が無いから動きづらいわけでもあるまい』

 

「まあ、貴方ならそう言うと思ってたわ」

 

―――って無かった。

輪廻の格好についてペストが殿下達に問いただすも、特に問題無かったようだ。

約一名、変な性癖に目覚めかけているようだが。

これから輪廻と再戦だというのに変に疲れて脱力するペスト。

そんな様子を眺めていた輪廻は、思い出したように言った。

 

「ああ、そうだグライア。お前に朗報がある」

 

『⋯⋯⋯はい?何でしょうか、輪廻殿?』

 

いきなり話を振られて目を丸くして聞き返すグライアと呼ばれた黒い鷲獅子。

輪廻はニヤリと笑って続けた。

 

「我が秘密裏に接触した〝ノーネーム〟についてだが。呼び出した新たな人材である異世界の人類の中に―――コウメイの娘が居るぞ。コウメイが持っていた〝生命の目録(ゲノム・ツリー)〟も一緒にな?」

 

『はっ⋯⋯⋯!?』

 

輪廻のとんでも情報に、グライアだけでなく殿下達六人が素っ頓狂な声を上げる。

コウメイの名は〝ウロボロス〟に属する者ならば知らぬ者はいない。

何せ三年前に滅ぼした〝旧ノーネーム〟の頭首を務めていた男であり。

かの〝ディストピア戦争〟でも活躍し名を馳せ。

グライアの兄・ドラコ=グライフを打ち破った男でもある。

そして〝旧ノーネーム〟は―――輪廻にとっては因縁のあるコミュニティらしい。

遥か昔に〝魔王〟だった輪廻を打倒したコミュニティも〝旧ノーネーム〟であり、彼女の〝契約書類〟が黒くない〝元・魔王〟である理由が正にこれだった。

グライアは獰猛な笑みを浮かべた。

 

『あのコウメイの娘が⋯⋯⋯〝生命の目録〟の完全体を所有していると⋯⋯⋯ククッ、それは良いことを聞いた!早くその娘に会いたい。そして倒し、〝生命の目録〟をこの手に⋯⋯⋯ッ!』

 

「猛る気持ちは分かるが落ち着けグライア。お前達には南側の〝階層支配者〟を打倒する役目があるだろう?」

 

『はっ!?申し訳ありません!私としたことが冷静さを掻くところでした』

 

「それにコウメイの娘と戦うのは構わんが、〝生命の目録〟の略奪はこの我が許さぬ。アレはコウメイにあげた物だし、それが今や娘の手にあるのなら尚更」

 

『ヌゥ⋯⋯⋯!む?〝あげた〟?』

 

『あげた?』

 

輪廻の言葉にグライアと共に首を傾げる殿下達六人。

輪廻は小首を傾げて、

 

「ん?どうしたお前達?」

 

『え?あ、いや、その輪廻殿?先程コウメイにあげたと仰いましたよね?』

 

「ああ、言ったぞ。正確にはニチカに託していた物で、コウメイが選ばれたと言うべきか」

 

「⋯⋯⋯えっと。もしかしなくても、〝生命の目録〟を造った御方って―――輪廻様だったりする?」

 

グライアに続いて恐る恐るリンが訊ねる。

その反応に、輪廻は合点がいったようにポンと手を打った。

 

「成程。〝ウロボロス〟の頭首は中々に意地悪な奴だな。てっきり知っているものだと思っていたが、知らなんだか」

 

「そもそも知っていたら〝生命の目録〟を輪廻様に〝頂戴!〟って言ってるよ!?」

 

「ほう。そんなに〝生命の目録(コレ)〟が欲しいのか?」

 

輪廻がメイド服のポケットから黄金と漆黒で彩られたギフトカードを取り出し―――〝生命の目録〟を顕現させてリン達に見せる。

嘘、と唖然とした表情で輪廻の手にある〝生命の目録〟を見つめるリン達七人。

灯台下暗しとは正にこの事か。

まさか〝ウロボロス〟第三連合の後見人兼自称保護者の輪廻が〝生命の目録〟の製作者とは思いもしなかった。

そして同時に、〝ウロボロス〟が輪廻を真の意味で支配しようと躍起になっている理由が分かった気がした。

輪廻はとある事情で〝ウロボロス〟に組みしているものの、全てに従うつもりはないらしい。

実際、〝ウロボロス〟の為に〝生命の目録〟を譲った事はないしあげるつもりは更々ないようだった。

しかしそれをしないのは無理もない。

何せ輪廻が造ったという事は〝生命の目録〟は―――彼女の力の一端を恩恵にして与えるという意味になるのだから。

その輪廻の恩恵の一端である〝生命の目録〟がすぐそこにある。

それを欲しくない者など、此処に居るリン達の中にいるわけがなかった。

代表してグライアが一言。

 

『超欲しいです!』

 

「ふふ、そうか。だがタダであげる程我は甘くないぞ?」

 

「⋯⋯⋯どうすれば手に入るんだ?」

 

殿下の問いに、輪廻は壮絶な笑みで答えた。

 

 

「我のギフトゲームをクリアせよ。ああ、それとな。お前達は勝利報酬に〝生命の目録〟を要求したんだ。これまでの〝戯れ〟と一緒だと思わぬ事だ」

 

 

『―――――⋯⋯⋯ッ!!?』

 

 

ゾッとする輪廻の笑みに、殿下達七人は一瞬動けなくなる程の恐怖に支配された。

彼女の〝疑似世界〟も悲鳴を上げるかのように軋んだ。

輪廻は不意に後ろを向いて軽く指を振った。

たったそれだけで耳を劈く様な爆音と共に、殿下達の目の前にあった綺麗な街並みは一瞬で消滅する。

 

『なっ⋯⋯⋯!!?』

 

絶句。

比喩では無く、指一つ軽く振っただけで街並みが消し飛ぶ光景を目にすればそうなるのは無理もない。

何も無くなった街だったところを背にして輪廻が微笑する。

 

「ああ、気にしなくていい。お前達相手に今みたいな事は間違ってもしないからな」

 

『⋯⋯⋯⋯⋯』

 

「それに我がその気になれば指一つで我が〝疑似世界〟をも消し飛ばせるからな」

 

『⋯⋯⋯⋯⋯ッ!!?』

 

また絶句。

指一つで世界(ほし)を砕けるとか笑えない。

殿下ですらそんな芸当は出来ないというのに。

指一つで世界を創造し、指一つで世界を破壊する―――これが〝全能領域(箱庭三桁)〟以上に席を置く者の実力だというのか。

輪廻なら恐らく指先一つで次元を裂いて世界の境界さえ打ち砕く領域に到達しているに違いない。

そんな怪物の彼女に〝特訓〟してもらっているこの現状に改めて感謝せねばならない。

殿下は震える体をプライドで捩じ伏せ、一歩前に踏み出す。

 

「⋯⋯⋯ハッ、いつまでも餓鬼扱いされるのには飽き飽きしてたところだ。俺の全力がアンタに通用するか―――試させてもらうぜッ!!」

 

気合一閃、殿下は地を勢い良く踏み抜くと第三宇宙速度を遥かに凌駕した速度で輪廻に肉薄し、

 

「てい」

 

それよりも速い速度で打ち出された輪廻のデコピンを喰らって、街を軒並み粉砕しながら吹き飛んでいく。

 

「まずは一人」

 

「な、殿―――ガッ!?」

 

アウラが殿下と叫ぶ前に、一瞬で眼前に現れた輪廻のデコピンにより遮られ、第三宇宙速度を遥かに凌駕した速度で殿下を吹き飛ばした方へ飛んでいった。

 

「これで二人」

 

『なっ、己ッ!!』

 

グライアは怒りの声と共に吼える。

彼の龍角が総身を包むように灼熱の炎を放出し始める。

炎の中で体を変幻させていく彼はやがて全身を巨躯へと変え、別の怪物として組み上げていく。

黒い鷲獅子の面影はやがて消え―――炎の嵐から、巨大な四肢と龍角を持つ黒龍が顕現した。

輪廻は黒龍と成ったグライアを見上げて微笑するだけで何もしてこない。

グライアは随分舐められたものだと憤り、口内に炎を蓄積させ、熱線として輪廻に撃ち放つ。

それを彼女は人差し指で器用に絡め取り、そっくりそのままグライアに撃ち返した。

 

『何!?』

 

輪廻が撃ち返した熱線がグライアを焦がす寸前で霧散する。

それをやったのはリンだった。

 

「グーおじ様、大丈夫!?」

 

『済まぬリン、助かった』

 

グライアがリンにお礼した瞬間、輪廻の指の一振で発生した暴力の渦がリンを吹き飛ばした。

 

「きゃあああああ!?」

 

『リン!?』

 

一瞬の隙を突かれ、リンは自身を守るための〝距離の壁〟の構築が間に合わずに容易く吹き飛ばされてしまった。

輪廻がわざとグライアの変幻を許し、あの様な方法を取ったのは全て厄介なリンをどうにかする為だったようだ。

 

「三人目」

 

「悪いが0人だ、輪廻」

 

「む?」

 

輪廻が視線をグライアから外し、声がした方へ向ける。

するとフラフラしながらもアウラとリンを脇に抱えて現れた殿下がいた。

輪廻は感心したように笑い返す。

 

「一撃で意識を刈り取るつもりだったが、まさか意識を保ったまま戻ってくるとは驚きだ」

 

「ペッ、いや。頭がグラグラして立ってるのさえやっとだよ。これでも手加減してるとかなんの冗談だ?」

 

「ふふ。我が手加減せねば既に四人消し炭になっていたところだからな」

 

「笑えない冗談はやめて欲しいかな輪廻様。それに今の発言だと―――恩恵も権能も無しで私の恩恵を砕けるって言ってるように聞こえるんだけれど?」

 

「無論だ。世界を砕ける我に、概念が砕けぬと思ってるのか?」

 

輪廻の当然だろ?という発言に、リンは恐怖で身震いさせる。

 

「だがそんな力技はせぬから安心しろ。それをしてしまったら―――我の可愛い同士達を死なせてしまうからな」

 

両手を広げて〝我はお前達を愛している〟とでも言ってるかのような愛情に満ちた表情を見せる輪廻。

この表情こそ、自称保護者を名乗っている所以だった。

愛してくれてるのは嬉しいが、それならもう少し難易度を下げてほしいものだと、ついていけてなかったペストとヴェーザー、ラッテンの三人は思った。

そんな彼らの思いを汲み取ったのか、輪廻は挑発的な笑みを浮かべて言う。

 

「なんだ?先の覚悟は何処へ行った?我を敵に回せる覚悟があるならば、この程度クリアしてもらわねば話にならんぞ?」

 

ピシッとペスト達三人のプライドに亀裂を入れた。

ペストは怒りで赤紫色の髪を戦慄かせて一歩踏み出す。

 

「上等じゃない!今すぐ貴女をぶっ飛ばしてやるわッ!!」

 

「俺達を怒らせた事、後悔させるぜコラ!」

 

「その愛らしい顔を泣き顔にしてやるわ!」

 

ペストに続いてヴェーザーとラッテンも吼える。

輪廻は満足した様に笑い、慈愛に満ちた表情で両手を広げ、

 

「ふふ、ではかかってくるがよい。我の可愛い同士達よ」

 

それが合図の様で。

ペスト達七人が地を勢い良く蹴り、この少女(かいぶつ)に挑むのだった。

 

 

 

 

そして全力を出しきった彼らは疲れきった様な表情でこの場を後にした。

結局、ゲームクリアとはいかなかった。

殿下達は頑張ったが、〝ウロボロス〟最強の〝純血の龍種〟では相手が悪い。

というより、〝生命の目録〟をちらつかせながらもクリアさせる気がないのかという程の鬼畜っぷりである。

〝疑似世界〟を消した輪廻は上機嫌だった。

やはり可愛い同士達の成長をこの目で直接確かめるに限る。

輪廻はパチンと指を鳴らす。

すると廃墟だったはずの屋敷が嘘のように―――何の綻び一つも無い豪奢な屋敷へと変わる。

それが合図だったのか、別室から二つの影が現れた。

一人目は黒髪でやや大柄だが見事に整った体躯の背広姿の男性。

二人目は茶髪長髪で〝春日部耀〟をそのまま大人化したような容姿の女性。

黒髪の男性が呆れた様な顔で輪廻に歩み寄る。

 

「相も変わらず容赦ないな輪廻。可愛い同士ならもう少し手加減してあげてもいいんじゃないか?」

 

「何を言うかコウメイ。お前なら分かるはずだ、手を抜かれたゲーム程つまらぬものだということをな。そうだろう?」

 

「否定はしない」

 

コウメイと呼ばれた黒髪の男性は即答する。

そんな彼の傍に歩み寄った茶髪の女性がクスクスと笑いながら言う。

 

「頭が切れるコウ君でも、脳筋な面はありますからね」

 

「そ、それは言わない約束だろにっちゃん⋯⋯⋯」

 

コウ君と愛称で呼ばれたコウメイが照れくさそうに頭を搔き、茶髪の女性をにっちゃんと愛称で呼ぶ。

この茶髪の女性、にっちゃんこと春日部二千華(にちか)はコウメイこと春日部孝明(こうめい)の妻である。

とある日、〝ウロボロス〟から使者が遣わされ、この西側へ招かれた孝明はありえない光景を目にした。

死別したはずの愛しい妻が、二千華が輪廻と共にいた事に、孝明は最初夢でも見ているのかと思った。

しかし次の瞬間には孝明の身体は弾かれたように駆け出し、二千華に飛びつき抱きしめていた。

いきなりの事で二千華は驚いたが、泣きながら抱きしめてくる孝明を見て、彼女は微笑み抱きしめ返した。

それから二千華の口から告げられた衝撃の事実に、孝明は言葉を失った。

輪廻の正体が、かつて幾星霜に亘り殺し合い、その末に箱庭から〝消去〟されたはずの最悪最強の大魔王―――〝閉鎖世界〟だということに。

〝閉鎖世界〟に匹敵する大魔王〝絶対悪(アジ=ダカーハ)〟を200年前に封印して以来、〝旧ノーネーム〟に度々訪れる友好的な最強種という印象しかなかったのだから尚更だ。

だが二千華が生きているこの状況に納得出来た。

何故なら二千華は〝閉鎖世界〟で生まれた人間であり、〝何者にも成れない者(ノーフォーマー)〟の為、西郷理想(ディストピア)以外に彼女を救える者など居ないのだ。

輪廻にどうして妻を救ってくれたのか問いただしたところ、

 

「ニチカは(わたし)の協力者であり、余の良き理解者だからな。それに余の世界で生まれた娘ならば、母としてみすみす死なすわけなかろう?」

 

と答えたそうだ。

協力者というのは、〝生命の目録〟を造るにあたって二千華が手を貸したのだろうと推測できる。

だが理解者とは一体どういう意味だろうか?

まさか二千華は、輪廻の真の目的を知った上で協力していたとでもいうのか。

彼女は孝明すら知らない輪廻を知っているのか⋯⋯⋯何だか少し妬ける気持ちになった。

話を戻して現在。

見つめ合う孝明と二千華。

その熱々ムードにやれやれと小首を振った輪廻は、パチンと指を鳴らす。

すると何処からともなく輪廻の背後に一つの影が現れた。

その者は金髪で紅い瞳の執事服を来た少年だった。

 

「御用件はなんでしょうか、〝創造主(マザー)〟」

 

「うむ。これから野暮用で〝ノーネーム〟―――いや、〝アルカディア〟に出向く。コウメイとニチカの事は任せたぞ、ガルド」

 

「ハッ、このガルドにお任せを。いってらっしゃいませ」

 

ガルドと呼ばれた金髪の少年は行儀正しく一礼する。

ニ週間程前に〝ノーネーム〟が倒した〝フォレス・ガロ〟のリーダーの名前もガルドだったが、立ち振る舞いや輪廻を母親呼びする彼とは別人だろう。

あるいは―――死亡したガルドを輪廻が新しい生命体として生まれ変わらせて執事として雇っているか。

それよりも、この場を後にしようとした輪廻を、驚愕の声で孝明が引き止めた。

 

「待ってくれ輪廻!」

 

「ん?」

 

「ん?じゃない!どうしてお前が俺達の、〝      〟大連盟の名を口にできるんだ!?」

 

「そんなの―――〝アルカディア〟の名を所有しているのが余だからに決まってるだろう?」

 

「なっ⋯⋯⋯!?」

 

絶句する孝明。

それはおかしい。

だって輪廻は三年前の〝      〟大連盟襲撃に参戦していない事は周知の事実。

では何故彼女が〝      〟大連盟の名を所有しているというのか。

まさか彼女は―――〝ウロボロス〟に頼んで〝      〟大連盟の名の所有権を譲ってもらったとでもいうのか?

だが一体何の為にそんな事をしたというのか。

輪廻が何を企んでるのかさっぱり理解出来ない。

頭を悩ます孝明に、輪廻は微笑すると去り際に一言。

 

「ふふ、お前達の愛娘の箱庭の活躍については後で話してやろう」

 

ではな、と手を振りこの場から姿を消したのだった。




特訓・前編は〝ウロボロス〟第三連合VS輪廻メインでお送りしました。
オリジナルは書くの大変だわ
リンの恩恵って殿下は「見破った所で打つ手が無い」言ってたしパラドックスの類なんかね?空間跳躍か条件発動する特殊なギフトくらいしか対抗策が無いらしいし。

金糸雀といい二千華といい、流石に〝原作死亡キャラ生存〟タグ追加しといた方がいいかな?
ガルドは蘇生ではなく輪廻の手で別の生命体に生まれ変わってるため、実力は十六夜の劣化版ですかね(ペスト編にて再登場予定)

次回は特訓・後編で〝ノーネーム〟VS輪廻メインでお送りします。
飛鳥(未熟かつディーンなし)や耀(未熟)、レティシア(弱体化)の三人を輪廻とどう戦わせるか。
ちなみにラミア母娘は応援組です戦わないので
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