アーニャ、タロウと縁結ぶ   作:助5103

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たろう

第一話「たろう」

 

 

 

 世界には様々な秩序を維持する為、自らの手を血に染める者が存在する。それはスパイ、殺し屋、暗殺者、裏の世界の住人。彼らは日々、世界の裏側で暗躍し、多くの血を流す事でそれぞれの秩序の安定を保っている。

 

 

 

ここは東国オスタニアの首都バーリント。その男は、ある建物へと荷物を背負ってやってきた。

 

 

 

「宅配便です」

 

 

 

 

「(たくはいびん?)」

 

 

 

 

 

拙い言葉で話す少女はアーニャ・フォージャー…見た目は普通の女の子だが、元々はとある組織の実験で生まれた超能力者。

その能力は人の心が読めるという不思議な少女。ガチャリと開けた先には身長の高い青年が一人、年相応の顔立ちだが何か貫禄が溢れ出る雰囲気を持つ。

 

 

 

「君だけか?」

 

 

 

「うぃ」

 

 

どうやらこの家には子供一人しかいないよだだ。少し遠くを見るとつけっぱなしのテレビと散らかったピーナッツらしき食べ物が、片付けなくて大丈夫なのだろうか。「一人で住んでいるのか?」と尋ねた男に対して「そんなわけないだろ」と一蹴。

 

 

 

「お留守番してる」

 

 

 

 

「いなければここに印鑑を押してほしい」

 

ズン、と渡されたのは少女が一人隠れられそうな大きな段ボール。相当重そうだが流石の配達員、腕力が凄まじいのだろう。

しかし、アーニャは印鑑という言葉を知っている訳がなく首を傾げる。配達員は「そういうことか」と、ポケットにあるペンを取り出して段ボールを玄関あたりに置く

 

 

「…なければ、これで名前を書いてもかまわない」

 

 

なるほど、ここにかけばいいのか。

 

スラスラと拙い字でアーニャの名前を書く。「…汚いが、まぁいいだろう」、と子供とはいえど失礼な物言いを呟く。そんなアーニャも失礼な奴と思いながらもそう心の言葉を聞き流した

 

 

「かいた」

 

 

 

「ありがとう。荷物はここに置いておく」

 

 

 

 

 

「(どんなのだろう…)」

 

 

 

 

「ありゃ」

 

配達員が去り、段ボールの中身が気になるアーニャ。そうとう入ってるであろうと勘ぐりながらもハサミで切る。

 

…しかしこれといった面白いものはなく中身は日用品がほとんどだった。

 

 

ちちが注文したものなのだろうと、この日はとくに気にも留めず再び好きなテレビアニメを見るためにアーニャはリビングに戻っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「宅配便です」

 

 

次の日、今度は宿題をしている時にそいつは現れた。ピンポン、とチャイムが響きアーニャは例の配達員が来たのだろうとトテトテと玄関に向かう

 

 

 

 

「(また…?)」

 

 

先週に引き続き来るとは…彼も望んで来ている訳ではないが、そんな定期的な来るものだろうか

 

 

ガチャリと開けた先には案の定例の男が

 

 

 

 

「…また一人なのか」

 

 

 

「うい…」

 

 

男もアーニャがいつも一人でいる事に疑問を抱くも、まるで心が読まれたかのように少女が彼のその疑問を解消させるが如く事情を説明した

 

 

「ちちとはははいつもいない」

 

 

 

「このひはそろってお仕事だから…」

 

 

 

「?母さんと父さんの事か?」

 

 

 

「変な呼び方だ」

 

 

ふむ…と彼女の家事情を聞いた所で先週と同じサイズの段ボールをズンと玄関先に置いた

 

 

 

「まぁいい…さっきと同じやり方だ、覚えているだろ?」

 

「ん」

 

 

 

二回目なので前より手順良く済ませるアーニャだが、男は「字を練習したらどうだ」とまた失礼な一言を添え立ち上がった

 

 

「ありがとう…じゃあ」

 

 

そう礼を言って玄関から去り、アーニャは再び段ボールを開ける。しかし、先週同様中身は一緒だった

 

 

 

「(中身は普通…)」

 

 

まだ二人は帰ってこない、今日も「仕事が長くなる」と言い残していった物だから、それまでひとりぼっちなアーニャは退屈な一日を過ごすことにため息をこぼす。

なにか、刺激のある冒険のような一日を過ごしてみたい。といかにも子供らしい想像をしながら目の前の現実(宿題)を目を向けなければ、と椅子に背もたれた

 

 

 

 

 

 

 

「宅配便です」

 

 

いつもの声と玄関のチャイム。ペットと戯れていた途中にそれは聞こえてきたのだった。

 

 

 

「(…あいつ、いつも来る)」

 

先々週からあの配達員はいつもやってくる。毎日ではないが週一の間隔で彼がここにやってくる。もしや、とアーニャはふとカレンダーに目を向ける。

 

今日は六月の二十一日…

 

 

「(決まって火曜日…)」

 

 

火曜日は両親がお互い仕事でいない日、そんな時に限って彼はやってくる。

 

 

ガチャリと玄関を開けると、顔一つも動かないあの男の姿が現れる。何か気まずい雰囲気が流れてきたのでとりあえず一言かけてみる

 

 

「うぃ」

 

 

 

「…お前は一人暮らしなのか?」

 

またもや同じ質問をするタロウに「またか」とアーニャはジト目で答えた

 

 

 

「この間も言った。最近になってからかようびは二人ともいない日、だからぐうぜん」

 

 

「なるほどな。」

 

 

 

よし、こいつの心を読んでみよう。と興味本位で配達員に探りを入れる。すると

 

 

 

 

「(次はノジキ精肉店への配達か…)」

 

 

「(忙しそう…)」

 

 

こんなぐうたらしている裏で配達員というのはせっせと仕事に励んでいる。休日という概念がない社会人に改めて恐怖に慄くも、少女の不思議な動向に配達員も声をかけた

 

 

 

「どうした?」

 

 

「ん、なんでもない。」

 

 

 

 

ふと、アーニャはネームプレートに記されている「タロウ」という名を見る。どうやら彼の名は「タロウ」と言うらしい。

 

 

「しかし…ずっと一人なのか」

 

 

「外に出ないのか?」

 

 

「つまんない」

 

 

「いや、運動は大事だぞ。やっておかないと後で必ず後悔する」

 

 

「違う」

 

 

「相手がいないだけ」

 

 

「相手?」

 

 

ほお…と顎を指でいじって考えごとをするタロウ。探偵ごっこでもしているだろうかとアーニャはそんな風に見ていると、カッといきなり目を開かせてタロウはこう告げた。

 

 

 

「なら、俺が引き受けよう」

 

 

「?」

 

 

「さっきから思っていたが、お前とは何か縁がある。」

 

 

「偶然にも今日はここが最後の現場先だ。特別に付き合ってやろう」

 

 

つらづらと妙な言葉ばかり喋るタロウに対してやや不信感を抱く。終いには「縁」などと

意味不明な言葉発するから見るに、普通の人間ではなさそうだとアーニャは察する

 

 

「(コイツ、もしかしてヤバい奴…?)」

 

 

 

「(でも…)」

 

 

 

とはいえ、確かに今日は本当にやる事がない…宿題も済んでお気に入りのアニメの放映は休み、本当になにもする事がない

せめて何をするのか、とアーニャはタロウに問いかける

 

「何するの?」

 

 

 

「野球だ!」

 

 

 

 

 

 

 

近くに平均的な広さの無人のグラウンドがあり、タロウ達はバッドとボールといった最小限の道具を持ってやってきた

 

 

「…いいか、コイツをそのバットで思い切り当てろ。お前には少し難しいが、当てると結構楽しいぞ」

 

 

「…」

 

 

 

「さぁ、投げるぞ」

 

 

 

 

タロウは屈んだ状態で当てれるようにボールを軽く投げる

 

 

「ふん!」

 

 

 

「単なる力じゃ打てないぞ、もっと力を抜け」

 

 

 

 

「ふん!」

 

 

また投げるも、空振りに終わる

 

 

 

 

「お前、運動のセンスないのか?」

 

 

 

「うるさい」

 

 

言われたくない言葉に対して冷たい目でそう言い返す

 

 

 

「お手本、見せろ!」

 

 

「見せろ?人に物を頼む時は敬語で話せ、それが人の礼儀だ」

 

 

「見せてください」

 

 

「いいだろう」

 

 

 

 

 

「えい」

 

 

物凄い勢いでボールは放射線を描く事なく一直線に飛んでいった

 

 

 

「凄い!」

 

 

「当然だ!…お前も練習すれば、いつかこうなれるぞ」

 

 

「ホントに?」

 

 

 

「ああ、その為にまずは…練習あるのみ!」

 

 

「らじゃ!」

 

 

 

暫くしして打ち続ける事一時間、途端にバテ始める

 

「つかれた…むり」

 

 

 

 

「なんだ、もう限界か」

 

 

「げーむやりたい」

 

 

「げーむだと?」

 

 

「ゲームセンターで、勝負!」

 

 

 

 

勝負という言葉にタロウは顔つきが変わった

 

 

 

「ほう…」

 

 

「(げーむとくいだから、勝てる…!)」

 

 

 

「面白い、受けてたとう」

 

 

 

 

「(よし!)」

 

 

 

 

そうして、場所はグラウンドから近くのゲームセンターへと移行する

 

 

 

「こいつはなんだ?」

 

 

「めだるげーむ、こいんを入れて多く増やすやつ」

 

 

 

「成る程な、どちらが沢山増やせたか勝負という訳か」

 

 

「はなしがはやい」

 

 

 

というわけだが、生憎子供にお金を使わせる訳にはいかない(タロウ自身のプライドもあるのだが)ので初めは合計2千円分のコインを両替し、早速台に座る二人。

 

何を隠そう、彼女が指定したこのコインゲームのシステムやコインを多く落とせる場所などは全て把握済みであり、かつタロウの心を読む事で完全に対策が練られる事から心の中では勝ちの確信が既に芽生えていたのだった。

 

 

「(ぶへへ、コイツをボコボコにする!)」

 

 

子供に似つかわしくない笑みを浮かべながらもコインを順調に増やす。開始十分、早くもジャックポットチャンスと呼ばれるいわば「激アツ」のモードに突入する

 

 

 

『ジャジャジャジャックポットチャァァーンス!!』

 

 

「なんか五月蝿くなったぞ!」

 

 

「これはコインを多くとれるもーど。」

 

 

 

 

「この勝負、アーニャがもらった」

 

 

 

「ほう…」

 

 

 

当然この手のゲームはタロウも未経験であり、減ってはいないが一向に増える事もなくただ投入口に入れているだけの作業だったが、アーニャの動向を盗みながら段々とシステムを覚えていく

 

 

 

 

「ふ…」

 

 

 

アーニャは既に枚数が元の数の何倍にも増え始めていっている。対する、タロウはというと…

 

 

 

『ジャジャジャジャックポットチャァァァンス!!』

 

 

 

「やっときたか」

 

 

 

タロウにもチャンスが回り始めたのだが、あまりにも初速が遅かった故に彼女は鼻で笑う。

 

 

 

「いまさら来ても…」 

 

 

 

 

『ジャジャジャジャックポットチャァァァンス!!』

 

 

「え」

 

 

 

「どんなゲームでも、コツを掴めば問題はない」

 

 

 

 

連続で大チャンスを発動させるタロウの光景に口を大きく開けるアーニャ。チャンス時の盛大な音楽と演出が連続的になり続けるのを唖然としていたからであった。

 

 

「なんで」

 

 

『ジャジャジャジャックポットチャァァァンス!!』

 

 

「もうコインが入り切らない…勝負ありと言ったところか?」

 

 

「ズルしてる!絶対!」

 

 

 

あまりにも異常な光景で経験者である彼女は彼が不正な行為をした事を指摘する。しかし彼は曇りひとつない表情でそれを拒否

 

 

 

「俺はズルなどしていない、正々堂々やったまでだ」

 

 

 

「んー」

 

 

 

いっその事こと心を読んでやろうと彼の脳内を覗いてみると…

 

 

 

「(なにもやっていない)」

 

 

 

「(嘘ついてない…もしかして、ほんとに?)」

 

 

 

 

 

「さぁ、どうする…まだやるか?あきらめるか?」

 

 

 

「…」

 

 

 

「次は別のヤツで勝負」

 

 

 

 

メダルゲームを終えた後に今度はシューティングゲームをする

二人の対戦ゲームで、敵を倒した分だけスコアが入るというもの。

 

 

【game over…】

 

「死んじゃった…」

 

 

 

「これぐらいの事、造作もない」

 

 

 

 

 

「(ぜ、ぜんぶ倒してる…!?)」

 

 

 

 

「こんなもんか、簡単だったな」

 

 

 

「…なにもの?」

 

 

「ただの配達員だ」

 

 

 

「ふーん…」

 

 

 

またもや心理を除こうとするも

 

 

 

 

「(俺はただの配達員だ)」

 

 

 

「(同じこと言ってる…コイツ、嘘つかない?)」

 

 

本音を見ることでその対象の人間の本性というものが分かるというものなのだがタロウは心に思った事と言ってる事が一言一句同じな為、返って心が読み取りづらいという状態になっていた。今までの言動も全てありのままの言葉だとしてもそれはそれで潔いがタロウの掴みどころのない底のなさは変わらない。

ムムム、とさながら怖くない形相で睨みながらタロウの周りをぐるぐるし始める。いつか化けの皮が剥がれるのか、それともこれがタロウの素なのか…

 

 

 

「へんなやつ!」

 

 

 

「なんだ急に」

 

 

 

ゲームは完敗といった所で、彼女はとてつもない閃きをする。

 

 

「ん」

 

 

「今度はなんだ?」

 

 

 

「次はババ抜き」

 

 

彼女が提案したのは、ババ抜きだった。

 

 

「(ぐへへ…これなら勝てる)」

 

彼が本当に嘘がつけないなら、と必勝法を生んだアーニャはニマニマとタロウを見る。

 

 

「なんだそれは」

 

 

 

「家にカードあるから、一旦帰る」

 

 

 

「なんだか分からんが…勝負事はなんでも引き受けよう」

 

 

 

なんだかよくわからないタロウを他所にアーニャは気味の悪い笑みを浮かべたまま、家路に沿って歩いて行った。

 

 

 

 

「成る程、同じ数字と種類を引けばいいという事か」

 

「そゆこと」

 

 

 

 

「さて、どうする」

 

 

 

 

「…」

 

 

「(試しに言ってみよう…)」

 

 

 

「じょーかー、こっち?」

 

 

 

「右だ」

 

 

 

「えいっ」

 

 

「…」

 

心のままに口にする体質があるタロウは思わず喋らせられる。二枚揃った瞬間、完全な勝ちを確信し立ち上がった

 

 

「勝ち!アーニャの勝ち!」

 

 

「勝ち〜!」

 

 

バタバタと走り回りながら勝利の喜びを吐き出す。ペアになったカードの山を見つめるタロウはアーニャの頭をガシリと掴んだ。

タロウの失態といえど、ズルをした事になる為かもしかしたら殺されるのではとダラダラと冷や汗をかくアーニャ

 

 

 

 

「お前…」

 

 

「こ、ころさないで…」

 

 

「そんな事はしない、ただ…」

 

 

 

 

「お前…さっき心を読んだな?」

 

 

 

「!」

 

 

 

ドキリと胸の内から衝撃がはしる。 

 

 

「さっきからおかしいと思っていた。俺の顔を見ては変な顔をして…ばれてないと思ったのか?」

 

 

 

「アアアアアーニャ、知らない…」

 

 

「嘘をつくな」

 

 

 

「ごめんなさい」

 

 

 

しゅん、とこぼれ落ちる寸前まで目に涙溜めながらそう謝る。だが、タロウ自身は怒っている訳でもなく普通にそう聞いていただけなのだが、普段は真顔であまり感情を表に出さないタイプな為か彼女にとってタロウの顔はしかめ面をしているように見えていたのだった

 

「別に怒ってなどいない」

 

 

「しかし、まさか本当に心を読んでいたとはな」

 

 

 

「俗に言うエスパーという奴か」

 

 

 

「?」

 

 

「俺は試しにそう言っただけだ」

 

 

 

その言葉を聞いた瞬間、スンッと涙が引っ込んだ後呆然とした顔を浮かべた

 

 

 

「(ためしに…!?)」

 

 

 

驚く彼女をよそに散らばったカードを片付けてからタロウはさて、と立ち上がった

 

 

「ついてこい」

 

 

 

「どこに?」

 

 

「話をしよう、その不思議な力とやらのな」

 

 

 

 

 

散々遊び尽くした後、タロウとアーニャは近くの河川敷へと歩いた。

河原の近くでは親子がキャッチボールで遊んでいるのが分かる。父親のボールをキャッチする子供を見たタロウは「お前より上手いぞ」と余計な一言を添え、アーニャがムカムカしたのを後にして話をし始める

 

 

 

 

「お前は何者だ?」

 

 

 

「アーニャ」

 

 

「違う、お前がただの子供ではない事は確かだ」

 

 

 

アーニャは自分が覚えている限りの記憶を元に、事情を説明した。

 

 

 

 

「ふむ…実に難儀なものだな…」

 

 

 

「人体実験というのは中々現実味がないな」

 

 

「物心ついた頃から肉親ではない者と住んでいるのは初めて聞いた」

 

 

「?なんぎ…?にくしん…?」

 

 

難しい単語ばかり羅列されたばかりに言葉の意味を読みこめないアーニャ。

 

 

 

 

「お前は今の状況に不満はないのか」

 

 

 

 

「ない」

 

 

「ふたりとも、優しい」

 

 

 

これをもし本人たちが聞けばさぞ涙が溢れるだろうセリフを口にする。「そうか」と、口角をやや上げて満足そうに頷くタロウだったが

 

 

「でも…これのせいで、友達出来ない」

 

 

 

シュン…と足をパタパタさせながら悲しげに呟く。見た目、動向はごく一般的な子供なのだがその特殊な能力ひとつで周囲から浮き足立つ存在として今も友達と呼べるものも多くはない。

 

 

「そうか」

 

 

「俺もだ」

 

 

 

 

「え?」

 

 

 

「俺も、昔はいなかった…」

 

 

タロウは過去の話をつらづらと喋り始めた

 

 

「いなかったから、家の中でずっと飼っていたカブトムシと遊んでいた」

 

 

 

「かぶとむし?」

 

 

 

「ああ…ある日突然何処かへと飛んでしまってな…それ以来会ってない」

 

 

「会えるといいね」

 

 

 

「……そうだな」

 

 

カブトムシの話をしたせいか口数が段々と少なくなるタロウ。沈黙が続き、河原で子供たちが遊ぶ声が耳に入る

 

アーニャはこの時、似たもの同士なのかもしれないと心の中で感じた。彼もまた、自分のように特殊な人間なのだろうとその時何故か直感的に感じ取った。

 

今までは自分だけがこの感覚を知らないのだろうと思っていたのだが、タロウと会った事で初めてその思いを共有出来たのだった

 

 

「アーニャ、この力きらい…」

 

 

 

 

「そんなこというな」  

 

 

 

「心が読めるというのは、人の心に寄り添えるという事」

 

 

「誰にも伝えられない気持ちや思いは誰よりも早く理解できるという力だ」

 

 

 

「そんな人間としてお前が選ばれた。きっと、そういう縁があるのだろうな」

 

 

 

縁があるかどうかはわからないが、この能力はこんな風に言ってくれる人間は今までいなかった。人の本性を覗き見るのではなく、人の真意を理解する事。

 

 

「たろう、いいこと言う」

 

 

 

「…にしては、まだ元気がないな」

 

 

 

「…」

 

 

あの時ゲームで見せた少女らしい笑顔がまだ戻ってこず、タロウも不満げにそう言い放つ。そうとなれば、とタロウは一気に立ち上がった

 

 

 

「笑顔を見せろ!笑う事が身体に良いぞ、どんな万病にも効く!」

 

 

 

「辛いとき、悲しいとき、妬ましいとき!そんな時こそ笑うんだ。この世の悪縁は笑いで吹っ飛ばせ!」

 

 

「笑え!笑え!」

 

 

「あーはっはっはっ」

 

 

 

「心がこもってないぞ!俺に続け!ワーハッハッハッ!!」

 

 

「あーはっはっはっ!」

 

 

全く最初は乗り気でもなかったアーニャも段々と笑顔がふつふつと出てきており、おかげ夕方の河川敷で子供と青年が一緒になって笑い散らかすというシュールな状況に陥っているものの、アーニャはこれがタロウなりの励まし方なのだろうと大人顔負けの理解力であまり気にはしなかった

 

さて、とスンと急に真顔になるタロウはアーニャの名を尋ねる

 

 

「しかし、まだ聞いていなかったな…お前の名はなんだ?」

 

 

 

「アーニャ・フォージャー!」

 

 

 

 

「俺のお供になれ!」

 

 

 

「おとも?」

 

 

 

聞きなれない単語に首を傾げるも、頭の中では友達の言葉が思い浮かんだ。タロウはお供という意味合いで彼女に投げかけたが先程の話をしたせいか友達になるという解釈をしてしまう

 

 

「そうだ、どうやらお前とはすっかり良縁らしい」

 

 

「りょうえん?おとも?なんだか知らないけど、うれしい!」

 

 

 

友達になってくれるのかと目を輝かすのに対し、満更ではない表情を浮かばすタロウ。ここまでお供になる事に嬉しがられるのも中々ない為、タロウのテンションも徐々に上がる

 

 

 

 

「タロウとおとも!」

 

 

 

「そんなに嬉しいか!」

 

 

「うれしい」

 

 

 

「結構結構!」

 

 

 

アッハッハ!と軽快な笑いをするタロウ。

 

 

 

「(タロウ、へんだけど、いいやつ!)」

 

 

不思議で、奇天烈な何か持つ男だがそれと同時に惹き込まれる雰囲気持つ。そんなタロウがお供と呼ぶアーニャもまた、既に数奇な運命を辿って来た異端の少女

 

世界中で二人だけが歩む、唯一の大冒険。

 

そんな物語が今、拍車が掛かかる

 

 

 




補足
・設定について

本作では「ドンブラザーズ」に登場するオトモ達四人は登場しません。その為合体ロボも同じく現れません(ロボタロウは除く)

変身について、勿論出していくつもりです。割と先にはなりますがキャラクターとタロウの掛け合いが書きたいのでそっち優先になります。とはいえちょこっと出てくるかもしれませんのでそれ含めて今後もプロットを組んでいく予定です。


タロウについて、本編では「桃井タロウ」という表記ですが世界観的に「モモイ・タロウ」と呼ばれる訳になります。とは言ってもそもそもモモイ呼びやフルネーム呼びなどはほとんどないのであんまり気にしないでも大丈夫です。


最後に、この作品はおおよそライブ感マシマシで書いていくつもりです。「ここどういう事なの?」「そうはならなくない?」等の疑問点は全てドンブラだからと自己完結していくようにとおすすめします。(だからといって誤字脱字は関係ないのでその辺の意見はしっかり受け止めますけどネ…)


追加:7月21日に貧弱な自分さんから誤字修正をいただきました。ありがとうございます
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