アーニャ、タロウと縁結ぶ   作:助5103

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じょーず

「じょーずが、いない!!」

 

 

とある住居で少女の声が響き渡る。隣人からすればなにか重大な出来事が起こったのかと思い込んでしまうが、実際はそうではなく…

 

 

「いない…」

 

 

「なんで…?」

 

 

「ばふっ」

 

 

 

あまりのショックで膝から崩れ落ちるアーニャ。何故ここまで情緒が崩れているかというと、彼女お気に入りのペンギン型ぬいぐるみが家から姿をくらましてしまったというアーニャにとっては重大で、かつ深刻な事件が発生してしまったからなのである

 

危ない倒れ方をしたアーニャだったがすぐさま気を取り直して捜索に出向くも、今日もまた奇しくも火曜日の日…つまり父母共に不在の状態で迂闊に外に出歩けないでいた。

しかし、一刻もはやくこの問題を解決しなければならない…と頭を抱えたアーニャだが、ここである事を思い出す

 

 

 

「今日はたろうがくる!」

 

 

 

「…はず」

 

一瞬希望の眼差しが見えたが来るかどうかは定かではない為、再びズンと肩を下す。

しかしそれを無くすかのようにピンポン、とチャイムの音が鳴った。

 

 

 

「たろう!」

 

 

ダダダと一気に足取りが軽くなるアーニャは玄関先へと向かい扉を開けた。そこにはアーニャが求めたタロウの姿があり、いつも通りの荷物を抱えてこちらを見ていたのだった

 

 

「どうした、今日はやけに急いでいるが」

 

 

「…ぬいぐるみがない」

 

 

「何?」

 

 

「ぬいぐるみのじょーずがいない!」

 

 

 

 

「…なるほどな、そういう事だったのか」

 

 

「だが駄目だ」

 

 

アーニャはこれまでの経緯を説明するも、タロウは腕組みながら彼女の悲願を無慈悲ながら拒否した。もし効果音をつけるなら、ガビーン…と白黒になるアーニャ

 

 

 

「なんで…」

 

 

「アーニャ、すごい困っている」

 

 

 

「それはわかっている…だが、見ての通り俺はなんでも屋じゃない」

 

 

「そんなに欲しいのならもう一度買い直すんだな」

 

 

 

「そんなの…ムリ!」

 

 

「あれじゃないとダメ!」

 

「どういう事なんだ…」

 

 

タロウがそう提案したのにも関わらずアーニャはブンブンと首を横に振ってそれを否定した。合理的な案だったが、それがお気に召していない。何故駄目なのかタロウはさっぱり分からなかった。とりあえず、いつものようにサインを書いてくれと促して少し落ち着かせようとしたが未だに忙しないアーニャ。

 

全く、と言いながらタロウはフォージャー家を後にしようとするも…

 

 

 

「だめー!」

 

 

 

「なんだ、俺は仕事があるんだ。そこをどけ!」

 

 

 

「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ」

 

 

 

 

こいつは一生どく気がない。と、なんとなく察知するタロウ…もう玄関前で大の字で寝てタロウを通らす気ゼロである。

 

 

「お前は…」

 

 

 

ハァ…と帽子を深く被るも、ここまで悲願されてしまえばタロウでさえも少し心が揺らぐ。ましてや少女の頼みである為、少しだけなら…と腕時計をチラリと見て時間を確認する

 

 

 

「(まぁ…この時間帯なら…)」

 

 

「一緒に探してくれるの!?」

 

 

「勝手に心を覗くな、プライバシーの侵害にあたるぞ」

 

 

ガバッと勢いよく起き上がるアーニャ。どうやらしっかり心の中を読まれていたらしい

 

とはいえ助ける事は事実なので彼女の願いに免じてタロウは少しの間じょーずの捜索に手を貸す事となった。

 

 

 

「たろう、あざます!」

 

 

「礼はいい、支度を済ませてさっさといくぞ」

 

 

 

「いえっさー!」

 

 

こうして、タロウとアーニャのじょーず捜索ミッションが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

「本当にここにあるのか」

 

 

「わからん」

 

 

時計の針が11に向き始める頃、二人は近くの水族館へと足を運んだ。この捜索の中で何故ここに向かったかと言うと、以前ここに訪れた時、旅のお供としてじょーずを抱き抱えていた記憶がアーニャの中にあったからだ。紛失する以前の記憶ではそれが一番真新しく、ここにあるはずとアーニャは推測し目的の場所にやってきたのだ

 

 

 

 

「これでいなかったらどうする?」

 

 

 

「いる、絶対に」

 

 

というか考えたくなかったのかアーニャはいない事の想定をまるでしていない。これではいなかった時に思いらやられるが、まぁ出向かないよりかはマシだろう…

 

 

 

「いざ、参る…」

 

「…言っておくが観光目的に来た訳じゃないからな、魚なんぞ見てる暇は…」

 

 

 

「すげー」

 

 

 

「おい」

 

 

 

 

店内に入ってみれば、熱帯魚コーナーでアーニャは魚の様子をまじまじと見ていた。

 

 

「行くぞ」

 

 

「あぅ」

 

 

当初の目的を忘れかけるも、タロウがアーニャの首根っこ掴んである場所へと向かう

 

 

 

 

「どこに行くの?」

 

 

「館内マップを見るに、落とし物センターらしき場所があるみたいだ」

 

 

 

「もし気づいた人がそこに送り届けてくれていたら、そこにあるかもしれない」

 

 

 

 

 

「たろう、天才か?」

 

 

 

当然の思考回路だが、その説明を聞くにアーニャはタロウを誉めちぎる。

 

 

 

「当たり前だろ」

 

 

「まぁ、そのまま持ち帰られていたら別だが」

 

 

そんなこんなで落とし物コーナーの前に訪れたタロウ達は店員にじょーずの行方について尋ねた

 

 

「店員さん」

 

 

「これくらいのぬいぐるみはなかったか」

 

「は、はい?」

 

 

「名前はじょーず!」

 

 

 

その後ぬいぐるみの詳細な情報を説明するも、二人の店員はうーんと目をつぶってその落とし物を思い出そうとしたが…

 

 

「申し訳ありません、少々お時間を…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結局、なかったな」

 

 

 

「ずーん…」

 

 

水族館の外のベンチで二人は束の間の休憩をする。結果は落とし物コーナーにもなく、じょーずの行方は誰も知ることはなく捜索はどん詰まりとなっていた。

ほぼ捜索は不可能となった為アーニャは絶望のどん底へと突き落とされた。周りに重たい空気を放ちつつ、タロウにねだったピーナッツを頬張ってなんとかテンションを上げようとしているが、以前として調子は右肩下がりのまま。

 

 

 

 

「そんなに肩を落とすな、さっきもいったが…やはりもう一度買うしかない」

 

 

 

 

「…い」

 

 

「ん?」

 

 

「買えない」

 

 

 

「あれ、限定のやつだから」

 

 

 

アーニャはそう口にしながらまた一口頬張る。

彼女がここまでじょーずに拘っているのには、とある理由があった

 

 

 

 

 

『アーニャ、とってきたぞ!』

 

 

 

 

『これが欲しかったんだろ?さっきまで獲るのに苦戦したよ』

 

 

 

『すごい!アーニャ、いっしょう大事にする!』

 

 

 

 

「だからもう、じょーずは帰ってこない…しくしく」

 

 

「…なるほどな、つまりは思い出のつまったものだと」

 

 

「うん」

 

 

 

腕を組んでタロウは深く目を瞑る。先程まで全く協力する気がなかったが、アーニャの言葉に何か心変わりがあったのかその顔つきは一気に変わり

 

 

「ペンギンのぬいぐるみと言ったな」

 

 

 

 

「うん」

 

 

 

 

 

「俺の記憶では、そのような物を見たことがある」

 

 

 

「ほんと?」

 

 

「ああ…確か俺が配達の仕事をしていた時に、お前の証言と酷似しているぬいぐるみをチラリと見たような気がした」

 

 

 

「確か子供が持っていたような…」

 

 

 

 

「それって、盗んだって事?」

 

 

あくまで推測の元だがこの行き詰まった今、何もしないよりかは行動あるのみだと二人はそう意気込みながらもタロウが以前訪問した配達先らしき場所は片っ端から探していく事に

 

 

 

「失礼」

 

「こんな感じのペンギンを探している」

 

 

 

「知らないなぁ」

 

 

幾つか目星のついた場所を巡る。しかし、一件目はナシ…

 

その次はやたらとペットを飼っているお宅へと訪問する。みるからにマダムという雰囲気が漂う高齢の女性が住居人である。

 

 

「知らないわぁ、残念だけど…」

 

 

「そうか」

 

 

「じょーずっていうペンギンのぬいぐるみ、しってる?」

 

 

 

「犬に聞いても仕方ないだろう」

 

 

アーニャ屈んだ状態で飼い犬の一匹にそう尋ねた、タロウの言う通り犬に聞いても何も答えてくれないのだが…

 

 

「わんちゃんにも心の言葉がある」

 

 

「なるほど、そういうことか」

 

 

 

頭で念じるイメージを作り出して力を発揮しようとする。しかし、その答えはあまり良いものでもなく…

 

 

 

「分からないって」

 

 

「そうか…どうもありがとう」

 

 

 

「いいえ〜♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぬいぐるみィ?」

 

 

「ああ、これくらいのサイズだ。知らないか?」

 

 

次の場所は少しボロのついたアパートに向かった。訪ねるとそこにはまさしく世紀末の風貌をするこの時代にそぐわない格好の男が現れる。年頃の女の子には十分恐怖を覚えるものであり、アーニャはタロウの後ろに隠れている

 

 

 

「知る訳ねエよなァ!?」

 

「ウス」

 

 

「ウス」

 

 

後ろには取り巻きらしき二人がそう頷く(恰好も同様)

 

「たろう、この人怖い…」

 

 

 

「ん?後ろにお嬢ちゃんがいるのかァ?」

 

 

 

「こいつは俺のお供だ」

 

 

へぇ〜と、まじまじとではないがアーニャをチラリと見るファンキー男。どんな事を考えているのだろうと、興味本位で奴の心の中を覗き見たが…

 

「(オイオイオイ……なんだよコイツ可愛いかよ? 目がキラキラしてて、宝石みたいじゃねェかよ。なんだァこのキューティクル次元の差が違い過ぎる可愛ェ可愛ェ可愛ェ可愛ェ可愛ェ)」

 

「いこう」

 

 

バタンと思い切り閉じるアーニャはとんでもない悪寒を感じたのか思わずそんな行為をとってしまったがそれに逃げるようにこのアパート先から距離をとろうとした

 

 

 

 

「いいのか?」

 

 

「うん、なんか変な感じがした」

 

 

絶対という訳ではないが、人は見かけにはよらないのだとこの目この耳で知ったアーニャだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「残りはここだな」

 

 

 

 

最後に訪れたのは見るからに大富豪が住んでいるようなとても広い敷地の外に佇んでいた。おそらく庭にあたるのだろう大きな敷地内に入り(この場所は距離があったのでタロウの会社内で使う車を借りた)その壮大さに呆気を取られるアーニャは庭にあるいろいろな物に目を取られる

 

 

 

「でっかいコイがいる!」

 

 

「ここは相当な金持ちらしい…今のところだが、確か俺はここの配達をしていた時に見ていたような気がするが」

 

 

 

「あるといいな」

 

 

 

「うん」

 

 

数分掛かった後に、二人は大きい家が見えた所で適当に駐車場の所で停める。 

もうどこが出口が分からないのだが、タロウは以前入った場所に向かう

 

 

「お邪魔する」

 

 

 

 

「どちら様で?」

 

 

 

そこに現れたのは地主ではなく執事のような人間が現れる。流石の金持ち、やはりただでは会わせてくれないようで…

 

 

 

「以前ここにお邪魔した配達員の者だが…」

 

 

 

 

「あら!タロウさんじゃない!」

 

 

 

そこへタイミングよくこの一家の地主が現れ、どうやらタロウの事をまだ覚えてくれているらしく彼の元へ駆け寄った。ありとあらゆるところにネックレスをジャラジャラと、まさしくボンボンの人間と言うような人物だ

 

 

「このどうもありがとうねぇ〜!」

 

 

「問題ない、所で聞きたい事があってここに来たんだが…」

 

「そうなの?入ってらっしゃい!」

 

 

 

 

タロウの言葉になんなく快諾し、二人は無事に会話まで持っていける事に成功。以前の仕事が功を成したタロウのカリスマ性にはアーニャも頭が下がる

 

 

 

 

「たろう、すごい!」

 

 

 

「まったく、今日ほ褒めてばかりだな…まぁ悪い気はしないが」

 

 

 

タロウ達が導かれたのだが、リビングらしき所。もはやホールの一室かというくらい天井の高さがずば抜けており、どでかいシャングリラがアーニャを釘付けにする

 

 

 

「きらきら!」

 

 

 

「うふふ、可愛い子ね。妹さん?」

 

 

 

「お供だ」

 

 

「おともおとも!」

 

 

「あらあら…」

 

 

可愛いからお菓子いっぱいあげちゃうわ〜、と沢山の駄菓子をアーニャに与え、彼女のご機嫌もマックスに到達していた。そんなアーニャもまたタロウと同じように人を惹き込む何かがあるのだろうと、タロウは考える。

 

 

 

そこまで長居もしていられない、とタロウは早速本題に入った。当初の目的をすっかり忘れているアーニャはバリバリとお菓子に夢中になっている。

 

 

 

「こんな感じのぬいぐるみを探している」

 

 

「特に…以前ここに訪れた時にこのような物をみたような気がしてな…」

 

 

「う〜〜〜ん」

 

 

 

ピラリ、とタロウが描いた似顔絵のじょーずを彼女に見せると少々渋い顔をしながら深く考え…

 

 

 

「ガンちゃ〜〜〜ん!こっちおいで」

 

 

「うるせぇな〜〜ゲームの途中だったのに」

 

 

 

 

しばらくすると長い階段から降りてやってきたのはおそらく息子にあたるだろうな小さなふとっちょの男の子が現れた。ゲームの途中だったのか少し機嫌が悪そうだが彼をみたアーニャは思わず立ち上がって…

 

 

 

「じょーず!」

 

 

 

「ん?なんだよ」

 

 

 

「それアーニャの!!」

 

 

「はぁ??」

 

 

彼が抱き抱えていたのは紛れもなくアーニャが肌身離さず持っていたあのじょーずそのものだった。ずっと寄り添っていた為それはすぐ分かった。

 

 

 

「どうやら…当たりみたいだな」

 

 

「事情を説明してもらおうか」

 

 

 

「ごめんなさいねぇ…これには訳があって」

 

そういいながら、申し訳なさそうにマダムは何故あの男の子が持っているのか全てを口にした

 

 

 

 

 

「…全く、世も末だな」

 

 

 

アーニャがあの時落としたその日、誰かが家に持ち去り有名なネットオークションへと高値で売り捌いたらしく、その希少価値のあるぬいぐるみは彼ら大富豪の元へと手に渡っていたので、ある意味所有権はあちらにもあるのだと中々ややこしい事実が発覚した。

 

誰かが落とし物センターに持っていってくれたりしてれば、と高望みしていたがそれとは真逆の最悪な事態へと転んでしまっていたのだ

 

 

その為アーニャとその男の子は睨み合いっこをしている。

 

 

「どうしたらいいものか…」

 

 

 

タロウがそう腕を組むと、

 

 

「ようするにさ、これが欲しいんだろ?」

 

 

「くれるのか」

 

 

 

「やーーーだよばーか、誰がよこすか…こいつはなぬいぐるみ愛好家にとっちゃレアもんなんだよ。」

 

 

「俺も手に入らないと諦めかけていたが…まさかあんな形でこの手に収まるとはな!」

 

 

まぁちょっと汚れているが、と少し呟くも、汚した本人が目の前にいたので彼女に向かって少し睨みつけた

 

 

 

「やめなさい坊や、そんなに睨んだりしないの」

 

 

「…はっ、とにかくこいつはもう渡さねー、力づくでも奪ってみ?お前らなんていつでも社会から消せんだからよ!」

 

 

 

「ほお」

 

 

彼がパチン、と指を鳴らした瞬間にズラリと並ぶ執事達。たしかにこの大富豪の一人息子が言えば説得力がある。とはいえそんな脅し文句に一切動じなかったタロウは面白い奴だと彼にこう言い返した

 

 

「なら、勝負をしないか?」

 

 

「は?」

 

 

 

「もちろん喧嘩ではない、そうだな…お前が一番得意な分野でどうだろうか」

 

 

こうなれば、と一つ勝負を仕掛けた見る事に

 

 

 

「勝負か…ま、なんか最近つまらんからな」

 

 

 

「ちょうど良いや、おい!あれ用意しろ」

 

 

 

「自分で用意出来ないのか」

 

 

「うるせえ!!」

 

 

執事達が用意したのは、大量のドーナツがお皿に盛り込まれているのがズラリと並んでいた。その豪勢さに流石のアーニャもギョッと目が見開く

 

 

 

「どーなつ!いっぱい!?」

 

 

 

「大食いか、いいだろう」

 

 

 

「ふん…(コイツめ、何も知らずに…今まで勝負の中でこの俺を打ち破った者は誰一人としていない…最高記録である93個をこんな細身の男が超えられる訳がない)」

 

 

 

「そうだなあ、負けた時の罰も考えておかないとな?」

 

 

 

「例えば…永久的に俺の召使いになるのはどうだ?」

 

 

どう考えてもぬいぐるみとの落差が激し過ぎる為かアーニャですらその条件にえっ、と声を漏らす。たしかにじょーずを取り戻したいのは山々だが、だからといってそこまでやられると子供のアーニャですら気を遣わせてしまう程だったが…

 

 

「いや、問題ない」

 

 

「コイツより多く食えばいいんだろう?」

 

 

椅子に座りながらも、余裕の発言を放つタロウ。彼にもプライドがあるのかピキリと頭の中で切れたような音がした。

 

 

 

「…その言葉は撤回させねぇぞ!」

 

 

「臨む所だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これ…止めた方がいいのよね?」

 

 

 

「ア…アーニャ、どうすればいいか分からない…」

 

母としてこんな不毛な戦いは止めるべきだと考えたのだが、状況が極まり過ぎてどうやっても止める想像すらつかない程二人は燃えている為、そこで傍観している事しか出来なかった。しかし…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「参りまじだァ…」

 

「坊っちゃま!?」

 

「袋もってこぉぉい!!!」

 

 

 

その勝負は長丁場になる事なく、一瞬でカタがついてしまう事になった。

 

 

 

 

 

________________________________________

 

 

 

 

「さて、ぬいぐるみを返してもらおうか」

 

 

 

 

圧勝したタロウ。どうしてあんなに入ったのか不思議なくらいタロウは全てのドーナツを食い切った。早すぎて数えるのもやっとくらいだったが、少なくとも三けたはいっていた。

 

 

これを見たアーニャはまた一つ、改めてタロウの凄さを頭で理解することとなった

 

 

「(たろうすげぇ…)」

 

 

「クソ…こうなったら…」

 

 

「おい、どこに行く」

 

 

トテトテと階段に上がる坊やはじょーずを抱えたままそのまま窓の方へと近づき

 

 

「坊や!そんなに動いたら…!」

 

 

 

「うるせえ!こんなものォ!」

 

 

 

「あーー!」

 

 

 

子供とは思えない腕力で窓から勢いよくじょーずの身体ごと放り出されてしまった。そして不幸にも偶々ゴミを積み込んでいたトラックの中に入りそのまま門の外へ走ってしまう。漫画のような出来事にアーニャも半分パニック状態だった

 

 

「どーしよう!」

 

 

 

「追うぞ、アイツはもう知らん!」

 

 

 

と、車でトラックを追いかけようと家内から出る二人に、投げつけた本人は悪態ついた顔で唾を吐いた!

 

 

「は!ざまーみろ!!!そのまま粗大にゴミになったアイツの世話でもしてるんだな!!」

 

 

「ウッッッ!!!」

 

 

 

「「「「「坊っちゃまァ」」」」」

 

 

「坊やァ」

 

 

この嘔吐は遙が隣人の家へと響いたらしく、それから巷ではげー坊という最低な渾名で呼ばれていたのを彼はまだ知らない

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのトラックだ」

 

 

 

「ううううう!じょーず、無事でいて!」

 

 

「(あのがきこんどあったらブン殴る…)」

 

 

 

 

タロウの社用車でトラックを追いかけついに後ろへと辿り着いたが、その後どうすればいいのかうやむやなままにしていた。

思い切り叫んで止めてもらおうか…いや、窓を閉まっているので恐らく相当近くでないといけないだろう。

 

 

次の一言でタロウはとんでもない事を言い放った

 

 

 

「運転任せるぞ」

 

 

 

「うん…てん?」

 

 

パチパチ、と未だ言われている事が分かっていないアーニャ。

すると、タロウは急に意識を失い、完全にハンドルを離してしまう

 

 

 

 

「!!?あ、あ、アーニャ…うんてん知らん…!!」

 

 

 

強いて言えばマリカーぐらいしかハンドルを持ったことがないアーニャにとって人生一発が一般道路の走行というのはあまりにも酷な物だが、事故はさける為に力を尽くすつもりでハンドル操作をするアーニャ。

 

 

「うでとどかん…」

 

 

「すまないな」

 

 

 

むくりと急に起き上がったタロウはそう言いながらハンドルに手をかけた。何が起きてるかは分からなかったがとりあえず命拾いはした。こんな思いはあまりしたくないだろう、ただタロウの手にはアーニャがずっと手にした物があった

 

 

「じょーず!なんで?」

 

 

 

「どうやってとったの?」

 

 

「…アルターでコイツを取り返した」

 

 

「あるたー?何それ?」

 

 

 

「まぁ、後々わかる事だ」

 

 

 

そういいながらタロウはじょーずをアーニャの手に渡す。ただの落とし物でこんなに手を下すことになるとは。

 

中々奇妙な一日だったが…

 

 

 

「じょーず、おかえり…」

 

 

 

「…」

 

 

 

「家族の思い出は宝だ」

 

 

 

「俺にはそれがない…だから、大事にするといい」

 

 

 

「…うん!」

 

 

いい感じに終わったが、これによってあの一家のイメージをガタ落ちさせてしまったのを二人は全く知らなかったのだった

 

 

 

 

 




サルでも分かる自己紹介(其の一)


・タロウ
シロクマ配達屋の一人、火曜日にフォージャー家へと荷物を届ける際にアーニャと出会い、お供として彼女に奇妙な冒険へと誘う。色々とズレているが何事にも隙がない完璧超人


・アーニャ・フォージャー
色々と謎を抱える少女。ごく普通の家庭では育っていないようで、どうやら人の心が読めるそう…
タロウをお友と称し、色々と凄いヤツなのだと毎回凄みを感じている
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