9月。
OP戦、丹頂ステークス。
セナイは2600mを走りきり、1着をもぎ取った。
菊花賞前の調整として、最高の結果と言える。
長距離の感覚をトレーニングはもちろん実戦でも掴めたのは大きい。
少々レースとレースの間隔が狭くなるが、スタミナ自慢のセナイなら問題はない、と考えた。
10月。
菊花賞当日。
空は少し曇っているが、雨の予報も気配もない。
「すぅーはぁー」
セナイはベストコンディションのようだ。
だが、俺達にとってはそれが勝負の大前提である。
絶好調でないと、勝負にすらならない相手に、今から挑むのだ。
「ゴールドシップの三冠目……奪うぞ」
「そのつもりであります!」
不安要素ならいくらでもある。
相手がゴールドシップであること、他のウマ娘も重賞を制した格上揃いであること。
何よりゴールドシップを育成したのが多宝院トレーナーであること。
だが、だからといって挑まず逃げるのが正しいのか?
そうだ、と答える自分が居る。
違う、と答える俺が居る。
どちらが正解とも言えないのだろう。
ただ、俺とセナイは挑むことを選んだ。
それだけだ。
『クラシックロードの終着点。菊花賞を制し最強の座を手にするのは誰だ』
会場の99%が、1人のウマ娘を思い浮かべているだろう。
圧倒的な実力と人気を兼ね備えた、現在最強のウマ娘。
PVがスクリーンに流れ、流麗な芦毛がたなびく。
『今日の主役はこのウマ娘を置いて他にいない。二冠ウマ娘ゴールドシップ1番人気です』
「イエーイ、みんな楽しんでくれよなー」
ピースサインで観客を湧かせて、ゴールドシップがゲートに収まった。
緊張の時間。
永劫にも感じられる、スタート前の数秒。
『……スタートです。各ウマ娘、揃って綺麗なスタートを切りました』
レースはあっという間に流れていく。
先頭集団の先行争いをゆうゆうと見送り、セナイは後方でターフの様子を探りながら走った。
『ゴールドシップ、後方に付けます』
中盤、上手く内からコーナーを回ったセナイはトップギアへと向けて加速する。
後方集団を引き離して中団に並び駆けた。
『さあ、第4コーナー曲がって、いよいよ最後の直線』
そして終盤……。
『ここでトップへ躍り出たのは、モブトハヨバセナイ!』
残り400、ゴールドシップが追い上げてくる。
豪快で、全てをなぎ倒すような走り。
『ゴールドシップが食い下がるが、速い、速いぞモブトハヨバセナイ』
残り300、レースは2人の一騎打ちとなる。
ゴールドシップの加速は最高潮のその先へ進む。