モブとは呼ばせない   作:夜野みる

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11.菊花賞・上

 

 

 9月。

 OP戦、丹頂ステークス。

 セナイは2600mを走りきり、1着をもぎ取った。

 菊花賞前の調整として、最高の結果と言える。

 

 長距離の感覚をトレーニングはもちろん実戦でも掴めたのは大きい。

 少々レースとレースの間隔が狭くなるが、スタミナ自慢のセナイなら問題はない、と考えた。

 

 

 10月。

 菊花賞当日。

 空は少し曇っているが、雨の予報も気配もない。

 

「すぅーはぁー」

 

 セナイはベストコンディションのようだ。

 だが、俺達にとってはそれが勝負の大前提である。

 絶好調でないと、勝負にすらならない相手に、今から挑むのだ。

 

「ゴールドシップの三冠目……奪うぞ」

「そのつもりであります!」

 

 不安要素ならいくらでもある。

 相手がゴールドシップであること、他のウマ娘も重賞を制した格上揃いであること。

 何よりゴールドシップを育成したのが多宝院トレーナーであること。

 

 だが、だからといって挑まず逃げるのが正しいのか?

 そうだ、と答える自分が居る。

 違う、と答える俺が居る。

 

 どちらが正解とも言えないのだろう。

 ただ、俺とセナイは挑むことを選んだ。 

 それだけだ。

 

『クラシックロードの終着点。菊花賞を制し最強の座を手にするのは誰だ』

 

 会場の99%が、1人のウマ娘を思い浮かべているだろう。

 圧倒的な実力と人気を兼ね備えた、現在最強のウマ娘。

 PVがスクリーンに流れ、流麗な芦毛がたなびく。

 

『今日の主役はこのウマ娘を置いて他にいない。二冠ウマ娘ゴールドシップ1番人気です』

 

「イエーイ、みんな楽しんでくれよなー」

 

 ピースサインで観客を湧かせて、ゴールドシップがゲートに収まった。

 緊張の時間。

 永劫にも感じられる、スタート前の数秒。

 

『……スタートです。各ウマ娘、揃って綺麗なスタートを切りました』

 

 レースはあっという間に流れていく。

 先頭集団の先行争いをゆうゆうと見送り、セナイは後方でターフの様子を探りながら走った。

 

『ゴールドシップ、後方に付けます』

 

 中盤、上手く内からコーナーを回ったセナイはトップギアへと向けて加速する。

 後方集団を引き離して中団に並び駆けた。 

 

『さあ、第4コーナー曲がって、いよいよ最後の直線』

 

 そして終盤……。

 

『ここでトップへ躍り出たのは、モブトハヨバセナイ!』

 

 残り400、ゴールドシップが追い上げてくる。

 豪快で、全てをなぎ倒すような走り。

 

『ゴールドシップが食い下がるが、速い、速いぞモブトハヨバセナイ』

 

 残り300、レースは2人の一騎打ちとなる。

 ゴールドシップの加速は最高潮のその先へ進む。

 

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