モブとは呼ばせない   作:夜野みる

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14.時は流れて

 

 G3、ダイヤモンドステークスでのセナイはトーセンジョーダンに破れ2着となった。

 連対したという実績は悪くないものの、せっかくの重賞、1着を取らせてやりたかったが……。

 出走させた最大の目的は、長距離レースの経験を積むことだ。

 

 惜しくも勝利を逃しはしたものの、重賞3400mを走りきった。

 その点において、セナイは健闘してくれたと言える。

 

 さらに4月、天皇賞春。

 京都で行われる3200mのG1。

 

 結果を言うと、セナイはここでも1着は取れなかった。

 重賞では未だに1勝も上げられていない。

 

 しかし、3着という成績はメディアでは肯定的に捉えられたようだ。

 

「重賞で勝ちきれないという声もあれば、次こそは勝って欲しい。そんな声も多いんですよ」

 

 乙名史記者がそう話してくれた。

 

「かくいう私も、おふたりの活躍を楽しみにしている1人です」

 

 そう言われれば、前を向く気にもなるというものだ。

 

 

 その後、夏合宿までレースには出ず、スタミナと賢さのトレーニングに重点を置いた。

 

 7月。

 合宿ではクイズ大会でゴールドシップとセナイが優勝争いを繰り広げる。

 後に大会の伝説として語られることになる名勝負だった……クイズだが。

 

 

 8月。

 夏祭りでは去年のように屋台を周り、花火を見て。

 帰りのバスが出る前日。

 最後の合宿トレーニングの最中。

 

「ゴールドシップさんとは、ずいぶん差が開いてしまいました」

 

 6月の宝塚記念を連覇し、今や中長距離路線の……いや、世代の……それでも足りない。

 中央の歴史に残るウマ娘となったゴールドシップ。

 この大活躍の陰に、多宝院トレーナーの力が大きく働いたことは想像に難くない。

 

 一方の俺はといえば、未だに重賞でセナイを勝たせてやれていない。

 確かに、大きな差がついている。

 世間では、俺たちをゴールドシップ陣営のライバルとは見てくれないだろう。

 

「でも、不思議と焦りはないんです。諦めたとかではなく」

「ああ、なんとなくわかるよ」

 

 俺もセナイと同じ気持ちだ。

 今でも負ける度に悔しい思いをした。

 歯噛みし、拳を握りしめて、絶叫した日もある。

 

 それでも、焦燥感はもはやない。

 

「目標が決まってるからでしょうか。TSクライマックス」

「そこで優勝できれば、俺たちは――」

 

 悔しさと敗北を乗り越えた先にある、勝利の美酒に酔うことができる。

 だから立ち止まらず、挑むしかないのだと知っている。

 

 俺たちは夏の終わりを、不思議と落ち着いた心で迎えることができた。

 

 

 そして時は移り変わり、大きなレースへの参加もなく、12月。

 TSクライマックスシリーズの出走馬選定が年末にあるが、もうひとつ。

 有馬記念がある。

 

 セナイが出走できるかどうかは、ファン投票にかかっている。

 ここで10番目以内に入らなければならない。

 そして、有馬に出走できなければ、TSクライマックスへの選出も厳しくなってくる。

 

 正直、難しいと思っていたのだが――

 

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