『先行争い、ハナを進む逃げウマ娘を見送ってトーセンジョーダン3番手につける』
ハナを行く2名、その後ろ中団をトーセンジョーダンたちが形成した。
『やや後方に離れてエイシンフラッシュ、これは今日の作戦ということでしょうか』
『先行争いを避けて力を貯めるんでしょうね。差しのレースもできるウマ娘ですよ』
エイシンフラッシュはそちらを選んだか。
先行策で消耗しあってくれるのが理想だったが、そう楽はさせてくれないようだ。
『後方につけるウマ娘が多いですね。この展開はどうでしょう』
『先行策を選んだウマ娘には楽な展開ですね。この後方集団を抜け出すのは簡単ではないですよ』
その通りだ、抜け出すのは簡単ではない。
しかし簡単ではないことをできるように、今まで鍛え上げてきた。
「この程度で、沈んでられないのであります!」
鋭いステップでバ群を少しづつ抜け出していくセナイ。
『レースは折り返し、先頭との差を詰めていきますトーセンジョーダン』
まだ中盤。
芝の状態を確かめ、進むべきコースを常に修正しながらセナイは走る。
セナイの後から、空いた内側をゴールドシップがゆうゆうと進んでいく。
「くっ」
エイシンフラッシュとゴールドシップが競り合う。
『残り1000mを通過』
付かず離れずの競り合いが続く。
その横、空いた隙間を縫ってセナイが飛び出す。
『第4コーナーカーブを先頭で抜けるのはトーセンジョーダン』
『最後の直線、後続も駆け込んできます』
トーセンジョーダンの後方4バ身、セナイならば……。
「抜けますっ!」
『モブトハヨバセナイが飛び込んでくる!』
行け。
『残り400を切って先頭は依然トーセンジョーダン。しかしモブトハヨバセナイ差を詰めているぞ!』
行け……。
「抜いてみせます!」
行け、セナイ……!
『先頭変わってモブトハヨバセナイ!』
トップに立ったが、俺もセナイも、欠片も安心しては居ない。
ここからゴールドシップが伸びてくるのだから。
『しかしゴールドシップが猛烈な追い上げ』
「ゴルシちゃん120%、味わってもらうぜ!」
轟音を立てて猛追してくるゴールドシップ。
『無尽蔵のスタミナを持つ黄金の不沈艦が迫る!』
残り200、ゴールドシップとセナイの一騎打ちとなった。
「このクライマックスに照準を合わせてきたのは、あなた方だけではありません」
かに思えた、そのとき。
『ここで仕掛けてきたエイシンフラッシュ!』
ゴールドシップとセナイの競り合いの中、最内にわずかに開いたコースに、
「――今こそ、成就の時」
美しき光が、閃いた。
『明光一閃! 緒戦を制したのは……』
誰もが、その光に目を焼かれたと錯覚した。
『エイシンフラッシュ!』
美しく、力強い光が、全てを圧倒したのだった。
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わたしはゴールドシップさんにクビ差で競り負けて、3着。
まだ終わりでないとはいえ、厳しいスタートになってしまった。
「セナイ、お疲れ様」
「トレーナー」
受け取ったドリンクに口をつけると、身体に入っていた力が抜けていく。
「まだ……勝てますよね」
「もちろんだ。3着ならまだまだ勝ち目は残りまくりだよ」
そう、これはポイント制の3戦勝負。
1着10ポイント、2着8ポイント、3着のわたしは6ポイント獲得になる。
「極端な話、残り2戦とも1着を取れば勝ちだ」
「あはは、そうですね。そんな都合よくは行かないんでしょうけど」
強敵、どころか格上ばかりのこのレース。
重賞複数を取ったウマ娘たちが集っている。
自分が出場できたのが驚きなぐらいだ。
「そこでだ。次、例の作戦で行くぞ」
「やっぱり2戦目で、ですか」
「ああ。ここで切る」
一昨年のクリスマスから温めていた、1回きりの作戦。
「1戦目で各陣営の傾向も見えた。3戦目では遅すぎる……やるなら2戦目だ」
「できるで……ありましょうか」
何度となく読み返したファイル。
印刷された紙の文字は、少しくすんでしまっている。
「できる。できなければ……」
「できなければ?」
オウム返しに尋ねると、トレーナーはあっけらかんと笑う。
「俺と君が、地獄に落ちるだけさ」
わたしのトレーナーは本当に、やる気にさせるのが上手い。
絶対に、成功させてみせる。
そう誓った。