モブとは呼ばせない   作:夜野みる

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16.光の名は

 

『先行争い、ハナを進む逃げウマ娘を見送ってトーセンジョーダン3番手につける』

 

 ハナを行く2名、その後ろ中団をトーセンジョーダンたちが形成した。

 

『やや後方に離れてエイシンフラッシュ、これは今日の作戦ということでしょうか』

 

『先行争いを避けて力を貯めるんでしょうね。差しのレースもできるウマ娘ですよ』

 

 エイシンフラッシュはそちらを選んだか。

 先行策で消耗しあってくれるのが理想だったが、そう楽はさせてくれないようだ。

 

『後方につけるウマ娘が多いですね。この展開はどうでしょう』

 

『先行策を選んだウマ娘には楽な展開ですね。この後方集団を抜け出すのは簡単ではないですよ』

 

 その通りだ、抜け出すのは簡単ではない。

 しかし簡単ではないことをできるように、今まで鍛え上げてきた。

 

「この程度で、沈んでられないのであります!」

 

 鋭いステップでバ群を少しづつ抜け出していくセナイ。

 

『レースは折り返し、先頭との差を詰めていきますトーセンジョーダン』

 

 まだ中盤。

 芝の状態を確かめ、進むべきコースを常に修正しながらセナイは走る。

 セナイの後から、空いた内側をゴールドシップがゆうゆうと進んでいく。

 

「くっ」

 

 エイシンフラッシュとゴールドシップが競り合う。

 

 

『残り1000mを通過』

 

 付かず離れずの競り合いが続く。 

 その横、空いた隙間を縫ってセナイが飛び出す。

 

『第4コーナーカーブを先頭で抜けるのはトーセンジョーダン』

 

『最後の直線、後続も駆け込んできます』

 

 トーセンジョーダンの後方4バ身、セナイならば……。

 

「抜けますっ!」

 

『モブトハヨバセナイが飛び込んでくる!』

 

 行け。

 

『残り400を切って先頭は依然トーセンジョーダン。しかしモブトハヨバセナイ差を詰めているぞ!』 

 

 行け……。

 

「抜いてみせます!」

 

 行け、セナイ……!

 

『先頭変わってモブトハヨバセナイ!』

 

 トップに立ったが、俺もセナイも、欠片も安心しては居ない。

 ここからゴールドシップが伸びてくるのだから。

 

『しかしゴールドシップが猛烈な追い上げ』

 

「ゴルシちゃん120%、味わってもらうぜ!」

 

 轟音を立てて猛追してくるゴールドシップ。

 

『無尽蔵のスタミナを持つ黄金の不沈艦が迫る!』

 

 残り200、ゴールドシップとセナイの一騎打ちとなった。

 

「このクライマックスに照準を合わせてきたのは、あなた方だけではありません」

 

 かに思えた、そのとき。

 

『ここで仕掛けてきたエイシンフラッシュ!』

 

 ゴールドシップとセナイの競り合いの中、最内にわずかに開いたコースに、

 

「――今こそ、成就の時」

 

 美しき光が、閃いた。

 

『明光一閃! 緒戦を制したのは……』

 

 誰もが、その光に目を焼かれたと錯覚した。

 

『エイシンフラッシュ!』

 

 美しく、力強い光が、全てを圧倒したのだった。

 

 

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 わたしはゴールドシップさんにクビ差で競り負けて、3着。

 まだ終わりでないとはいえ、厳しいスタートになってしまった。

 

「セナイ、お疲れ様」

「トレーナー」

 

 受け取ったドリンクに口をつけると、身体に入っていた力が抜けていく。

 

「まだ……勝てますよね」

「もちろんだ。3着ならまだまだ勝ち目は残りまくりだよ」

 

 そう、これはポイント制の3戦勝負。

 1着10ポイント、2着8ポイント、3着のわたしは6ポイント獲得になる。

 

「極端な話、残り2戦とも1着を取れば勝ちだ」

「あはは、そうですね。そんな都合よくは行かないんでしょうけど」

 

 強敵、どころか格上ばかりのこのレース。

 重賞複数を取ったウマ娘たちが集っている。

 自分が出場できたのが驚きなぐらいだ。

 

「そこでだ。次、例の作戦で行くぞ」

「やっぱり2戦目で、ですか」

「ああ。ここで切る」

 

 一昨年のクリスマスから温めていた、1回きりの作戦。

 

「1戦目で各陣営の傾向も見えた。3戦目では遅すぎる……やるなら2戦目だ」

「できるで……ありましょうか」

 

 何度となく読み返したファイル。

 印刷された紙の文字は、少しくすんでしまっている。

 

「できる。できなければ……」

「できなければ?」

 

 オウム返しに尋ねると、トレーナーはあっけらかんと笑う。

 

「俺と君が、地獄に落ちるだけさ」

 

 わたしのトレーナーは本当に、やる気にさせるのが上手い。

 絶対に、成功させてみせる。

 そう誓った。

 

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