モブとは呼ばせない   作:夜野みる

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18.運命が終わる時

 

『各ウマ娘、一斉にスタート。綺麗な横並びからの展開となります』

 

 3戦目の始まりは、静かなものだった。

 全員が全員の様子を伺っている。

 ポイントで圏外の娘も、1度だけでも1着をもぎ取ろうと狙っている。

 

 ここまでの2戦で、手の内は見せきった。

 好不調も言い訳に出来ない。

 この3戦目の結果次第で、『最強』が決まる。

 

 華やかなレースだった。

 穏やかに始まり、熾烈に進行した。

 ひとり、またひとりと失速、あるいは置き去りにされて。

 

「ゴルシー、こんなもんで終わらないでくれ!」

「本当に強いのは、お前だって見せてくれー!」

 

 黄金の不沈艦は、前走で崩しかけたリズムをとっくに取り戻していた。

 当たり前だが、同じ手は通用しないので試しもしていない。

 ただ、もし試していれば、セナイの負けはそこで確定していただろう。

 

「ジョーダン、頑張って!」

「あなたが最強よ!」

 

 ハイテンションな走りが、歓声に押されてさらに激しくなる。

 中盤戦を制して先頭に躍り出た。

 彩り豊かなネイルが陽光を受けてまばゆく輝いていた。

 

「フラッシュ……なんて美しい走り」

「俺は優勝するところが見たいぞー、エイシンフラッシュ!」

 

 閃光のような、いや、閃光よりもまばゆい光が、ターフを駆け抜ける。

 美しいという点で、他のどんなウマ娘もついぞ及ばず。 

 その末脚は、最後まで観客を魅了した。

 

『最後の直線、モブトハヨバセナイ全身全霊を振り絞る!』

 

 前へ。

 ひたすらに前へ。

 セナイは駆ける。

 

 ただ、勝って欲しいと思った。

 ひたむきな情熱が報われてほしいと。

 諦めない勝利への渇望が、どうか満たされてほしいと。

 

「セーナーイーちゃん」

 

 願いを阻むかのように、影が、迫る。

 

「あーそーぼ!」

 

 影は、巨大な艦船のような圧迫感と共に先頭へと姿を表した。

 やはり、最後まで立ちはだかるのはこのウマ娘。

 ゴールドシップ。

 

「負けない……最後なんだ、これが」

 

 パチンと。

 空気が変わった。

 それは、影のように迫った黄金の不沈艦の重圧か。

 

「トレーナーが、見ているのであります、最後まで」

 

 それとも。

 

「最後まで……モブ扱いでなんか、終われない!!」

 

 残り100を切ったところで、ピッタリと横並びになる。

 セナイとゴールドシップ、頭を下げ、首を伸ばして先着を競い合う。

 

『速い速い。ゴールドシップか、モブトハヨバセナイか!』

 

 駆け抜ける。

 ふたりの姿が黄金のように輝いて見える。

 興奮の渦となって湧き上がる観客席。

 

『凄まじい競り合い、これを見ればもう、誰にもモブとは呼ばせない!』

 

「行けーっ!」

「勝ってくれ!」

 

 様々な歓声は、どちらに向けられたものか。

 きっと、どちらのものも有ったに違いない。

 

『両者横並びでゴール!!』

 

 終わりの時は訪れる。

 ゴール板を駆け抜けた、その瞬間が終わりの合図だ。

 

「セナイ、よく頑張った……」

 

 俺は手すりにもたれかかって足から崩れ落ちた。

 終わった。

 俺たちの3年間が。

 

「本当に、よく頑張ったな」

 

 目の端から、熱いものが流れ落ちるのを止められない。

 

『勝者は――』

 

 素晴らしい、レースだった。

 最強が、決した。

 

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