『各ウマ娘、一斉にスタート。綺麗な横並びからの展開となります』
3戦目の始まりは、静かなものだった。
全員が全員の様子を伺っている。
ポイントで圏外の娘も、1度だけでも1着をもぎ取ろうと狙っている。
ここまでの2戦で、手の内は見せきった。
好不調も言い訳に出来ない。
この3戦目の結果次第で、『最強』が決まる。
華やかなレースだった。
穏やかに始まり、熾烈に進行した。
ひとり、またひとりと失速、あるいは置き去りにされて。
「ゴルシー、こんなもんで終わらないでくれ!」
「本当に強いのは、お前だって見せてくれー!」
黄金の不沈艦は、前走で崩しかけたリズムをとっくに取り戻していた。
当たり前だが、同じ手は通用しないので試しもしていない。
ただ、もし試していれば、セナイの負けはそこで確定していただろう。
「ジョーダン、頑張って!」
「あなたが最強よ!」
ハイテンションな走りが、歓声に押されてさらに激しくなる。
中盤戦を制して先頭に躍り出た。
彩り豊かなネイルが陽光を受けてまばゆく輝いていた。
「フラッシュ……なんて美しい走り」
「俺は優勝するところが見たいぞー、エイシンフラッシュ!」
閃光のような、いや、閃光よりもまばゆい光が、ターフを駆け抜ける。
美しいという点で、他のどんなウマ娘もついぞ及ばず。
その末脚は、最後まで観客を魅了した。
『最後の直線、モブトハヨバセナイ全身全霊を振り絞る!』
前へ。
ひたすらに前へ。
セナイは駆ける。
ただ、勝って欲しいと思った。
ひたむきな情熱が報われてほしいと。
諦めない勝利への渇望が、どうか満たされてほしいと。
「セーナーイーちゃん」
願いを阻むかのように、影が、迫る。
「あーそーぼ!」
影は、巨大な艦船のような圧迫感と共に先頭へと姿を表した。
やはり、最後まで立ちはだかるのはこのウマ娘。
ゴールドシップ。
「負けない……最後なんだ、これが」
パチンと。
空気が変わった。
それは、影のように迫った黄金の不沈艦の重圧か。
「トレーナーが、見ているのであります、最後まで」
それとも。
「最後まで……モブ扱いでなんか、終われない!!」
残り100を切ったところで、ピッタリと横並びになる。
セナイとゴールドシップ、頭を下げ、首を伸ばして先着を競い合う。
『速い速い。ゴールドシップか、モブトハヨバセナイか!』
駆け抜ける。
ふたりの姿が黄金のように輝いて見える。
興奮の渦となって湧き上がる観客席。
『凄まじい競り合い、これを見ればもう、誰にもモブとは呼ばせない!』
「行けーっ!」
「勝ってくれ!」
様々な歓声は、どちらに向けられたものか。
きっと、どちらのものも有ったに違いない。
『両者横並びでゴール!!』
終わりの時は訪れる。
ゴール板を駆け抜けた、その瞬間が終わりの合図だ。
「セナイ、よく頑張った……」
俺は手すりにもたれかかって足から崩れ落ちた。
終わった。
俺たちの3年間が。
「本当に、よく頑張ったな」
目の端から、熱いものが流れ落ちるのを止められない。
『勝者は――』
素晴らしい、レースだった。
最強が、決した。