「どうして……」
日本ダービーで負けた。その事実を、わたしは受け入れるしかなかった。
全力は尽くした、持てる力すべてを出した。
でも届かなかった。
わたしの全ては、あの3人に及ばなかった。
じゃあ、どうすれば良いんだろう。
どうすれば、勝てたんだろう。
「セナイ、お疲れ様」
優しい顔が、控え室でわたしを出迎えてくれた。
「よく頑張ったね」
「トレーナー……」
彼の労るような微笑みが、今は辛かった。
「わたし、一生あの娘たちに勝てないんじゃないですか」
「いや、そんなことは――」
「やめてください」
気遣いの言葉を遮るのは気が引けたけれど。
「あなたの言葉は、わたしには優しすぎるのであります」
もう、涙を抑えることはできなかった。
「トレーナーは、いつもベストの状態でわたしを送り出してくれたのに」
堰を切ったように、涙と言葉が溢れて止まらない。
「全然期待に応えられなくて、わたし……わたしなんかが重賞に勝つなんて、無理だったんです」
わたしは弱いから。
こんなに凄いトレーナーに、釣り合わないほど弱いから。
「わたしなんかを選ばなければ、トレーナーはもっと……」
「こら」
トレーナーが作った拳が、雨粒でも当たったような弱さで、コツンとわたしの頭を叩いた。
ぽかんとして、わたしはトレーナーを見上げた。
「……確かに俺も、シンボリルドルフやゴールドシップのような天才を担当していたら、と夢に見ることはある」
耳がしなしなになるのを感じる。
「そう、ですよね」
そう思われて当然の、情けないモブウマ娘がわたしなんだから。
「でもそれは、非現実的な夢だし、今から担当を取り替えようと言われたってお断りだぞ」
「え……」
「セナイを担当したのが俺だ。それで、俺の担当になったのがセナイだろう」
初めて、だったのかもしれない。
山田トレーナーが、怒っているところを見るのは。
「それは、そうですけど。今からでも、わたしなんかより良い娘が居るんじゃ」
「そう思うのか? ならよく聞いてくれ」
トレーナーが熱いぐらいに、深く息を吐く音が聞こえた。
「俺が勝たせたいのはセナイなんだよ。ゴールドップとか、他のウマ娘じゃない」
「……ぁ」
「今までカッコつけて、冷静なフリをしてたのが悪かった。俺は」
トレーナーの目が、左右に迷って揺れている。
今から言う言葉を吐き出そうか、飲み込むか迷っているんだとわかった。
聞かせて欲しい、と思った。
「俺は、君に魅了されている。夢中なんだ」
熱く言葉を吐き出した彼の表情は、普段の穏やかなものとは違っていて。
優しい目が、ギラついた光を帯びていた。
「わ、わたしを……?」
「ああ、どれほど困難でも、俺の手で君を勝たせたい」
耳が、尻尾が。
勝手に反応してピンと立ってしまう。
「君と一緒に戦わせてくれ」
「はひ……はいっ……」
わたしは、全身とろけそうになって、舌をかんでしまう。
まだ5月なのに、真夏の炎天下みたいな熱気が頭にのぼっていた。