さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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気が向いたら続くかもしれないので初投稿です。


馬生編
『シルバーバレット』


死んだ。そして生まれたらしい。

 

『よォ、…ってまぁ随分と小せェなァ今回の俺の餓鬼は』

 

声が聞こえて、目を開けた先のボヤけた視界には真っ黒い馬がいた。

 

『ぉ、さっそく立つってか。ほら、頑張れ頑張れ』

 

足に力を込める。…四足で立つって意外と難しいなぁ。

多分数十分ほど格闘したあと、何とか立ち上がることができた。

 

『あー、世話する奴も今は眠ってるのかねェ。やっとこさ待望の餓鬼が生まれたってのに』

 

目の前にいる馬のことをぼうっと眺めていると『取り敢えず乳飲んどけ』と言われた。…この馬、女の馬だったんだ。

真っ黒い馬は僕のお母さんだったらしい。

でもお母さんと呼ぶと怒るので、彼女が言いつけた通りに「リリィ」と僕は呼んでいる。本当は「ホワイトリリィ」という名前らしいけれど。

 

『おら、来いチビ』

 

リリィは僕を「チビ」と呼ぶ。まぁ、確かに僕は子馬だからチビであるけれど。

でも、リリィが言うには子馬にしても僕は小さすぎるという。

リリィいわく、僕たちがいるこの牧場も昔は馬がいっぱいいたのだって。

 

『…アイツらのことなんて気にすんな』

 

何かザワザワとしている方を見ると人間が話し合っていた。僕の耳は悪い。だから上手く音が聞こえない。リリィがそう言うのなら気にしないでいいのだろうと僕はリリィの後を着いて行った。

 

 

『離せッ糞がァっ!チビ、チビぃッ!』

 

そんなある日、僕はリリィと引き離されることになった。昔人間だった名残りで読唇してみると、どうにも僕らが暮らしていた牧場がなくなるのだという。

そりゃあそうだろうな。…そう、思ってしまうほどこの牧場はボロボロだった。

体の小さい僕は馬肉にされるらしい。リリィはまだ子どもを産めるから別のところに連れていかれるのだって。

人間に先導されながら、暴れているリリィを見て僕は「痛いのなんて一瞬なのになぁ」と思った。リリィが僕のために暴れてくれているのは嬉しかったけれど。

 

だがしかし、

 

『何とかなって、良かったなァチビ…』

 

僕のことを欲しいと言った奇特な人がいたのだという。

そうして人に救われた僕は競走馬になるらしい。

新しい牧場に移った。ここは馬がたくさんいて落ち着かない。

同い年らしい子たちが集められているのも少し嫌だ。

けれど走ることは特段苦ではなかった。でも何だか変な感じがした。

自由時間に少し走っては、足に違和感があって止まる。

首を捻るけれどどうにも解決できずにまた走る。

 

そういえばこの前、僕のことを欲しいと言った人間が来ていた。

僕の名前が決まったのだと。

その人間が言うに、僕の名前は──




僕:元は人間だが生まれ変わったら馬だった。結構人にも馬にも興味が無かったりする。非常に小柄な体の牡馬。今は黒鹿毛だが後に芦毛となる。
母であるホワイトリリィにとても懐いている。なおホワイトリリィが気性難であるために、将来気性難の馬に懐く可能性がある。
実は父がヒカルイマイ。

ホワイトリリィ:僕の母馬。ホワイトと名付けられながらも黒鹿毛。
気性難でありすぎたために未出走だった。
血統的も子出しもさほどよくなく、牧場も貧乏の一途を辿り、久しぶりに生まれた我が子が僕であった。
彼女自身が育児放棄されたこともあり、母としての育て方が分からないので僕には母子としてではなく友人として自分と関わるように言っている。
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