だってあんな後輩だもの…ねぇ?
「おい、チャンプ。テメェ!」
「…?」
この大雨になっても帰ってこないと、可愛がっている後輩を探しに行けば、あろうことか傘もささずに雨に打たれてやがった。
大雨の中トレーニングしていたとどっちの方がマシだろうと、いつものコイツだったらやりかねん行動に少し思いを馳せるが。
「なにやってんだテメェは!? この雨の中傘もささずに何してやがった!?」
「いや……何っていうわけじゃ……」
「だったらなんで帰ってこないんだよ!」
「……それは」
「……」
……歯切れが悪い。
いつものコイツならもっとハッキリとモノを言うはずだ。
それがどうだ?
いま目の前にいるシルバーチャンプは、まるで叱られるのを待つ子どもみたいな顔をしてやがる。
そんな姿に思わず毒気を抜かれちまった。
「まァいい。帰るぞ」
「…はい」
握った手は、ひどく冷えきっていた。
「服とか全部用意してあるから、さっさとシャワー浴びろ」
「はい。ありがとうございます」
シルバーチャンプを部屋に連れ帰り、冷えきった体を温めさせる為にシャワーを浴びさせた。
そして、その間に俺は温かいお茶とドライヤーを用意しながら、コイツが帰ってきた時の様子を思い返す。
……明らかに様子がおかしかった。
雨の中ぽつねんといるのは、前の今みたいな雨の中でトレーニングしてたことがあったから見たことがあったが、それでもレインコートは着ていた。
だが今回はレインコートもクソもない、制服のまま上から下までグチョ濡れのびっしょびしょであったのだから、何かあったと考える方が自然だろう。
……まぁ、アイツが俺に相談なんて、そう簡単にするわけねぇか。
「シャワーありがとうございました」
「おう」
シャワーを浴び終えたシルバーチャンプが戻ってきたので、温かいお茶を手渡す。
「ほれ飲め」
「……いただきます」
ずずっと茶をすする音が部屋に響く。
俺も自分の分を淹れて向かいに座った。
風呂から上がってきたというのに、まだ濡れているような感じがする目の前のウマに、少しため息を吐く。
「で」
「…」
「メシ、どうする」
「!?」
「もうこんな時間だろ。食堂は閉まってるから俺が作るけど…文句言うなよ」
「あ、あの!」
「なんだよ」
「自分で作ります! いえ作らせてください!」
「……はぁ?」
座っとけってと腰を下ろさせれば、しおしおとした顔。
「…ちゃんと、丁寧に炒めたりしてくださいね」
「おー」
「不安だなあ」
「…ンなこと言うなら食わせねえぞ」
「ごめんなさい!!」
「ハハッ、冗談だよ冗談」
【金色旅程】:
先輩。
何かとやらかしがちな後輩の世話を焼いている。
仕方ないなあという顔をしているが満更でもない顔をしている。
なおこの時点では料理の腕が…状態。
後輩の指導の元これから何とかなっていく模様。