さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

1006 / 1416

これがニコイチのチカラ…!



しれっと

シルバアウトレイジが髪を切ったのは引退した折だった。

親父たちに切ってもいいかと聞いたら残念がられたが「引退したんだし、()()()好きなようにしなさい」と言われたので。

腰近くまであった長い髪を、"仕事"の寮に移動すると同時にバッサリと切った。

髪の重さがなくなり、首元がスースーするのに初めは慣れなかったがそれよりも大変だったのは、

 

「なんで切ったンスか!?」

「おじちゃんうるさい」

 

大叔父を含めた顔見知りからの「何で切ったんだ」コール…。

親父が現役時代長かったせいもあって、会う人会う人から「何で切ったんだ」と聞かれ、

 

「あー……その、ちょっと手入れが面倒になったので……」

「ならおじちゃんが切ってやるッス!だからまた伸ばして!」

 

大叔父の勢いに押されながら言い訳をしていたら、

 

「……レイくん、時々お家帰っておいで。パパが切ってあげるから。……やっぱり、こうなったかあ」

 

いつの間にか話を聞いた親父にそう宣言され、時おり実家に帰ることとなった。

……いやまあ、それはいいのだが。

その後なぜか俺の髪を切るのは親父から寮の同室となった【飛行機雲】になり。

初めは同寮の暇な人に切ってくれるよう頼んだのだけど何故だか断られ、大叔父にも一回切ってもらったがエラくガタついた髪型になったので……仕方なしに。

 

「毎度毎度スマンな」

「いえいえ〜。…役得ですし」

「?」

 

髪にハサミが入っていく。

此処に入寮する時に親父からもらった特注のハサミ。

 

「先輩の髪、だいぶ白くなってきましたね」

「……そうか?」

「はい。…とても綺麗」

 

その呟きは聞かなかったことにして、されるがままになる。

しばらくして鏡を渡され見てみると、自分の髪がキチンと切り揃えられていた。

「おおー……」と感動していると、【飛行機雲】がハサミの刃先を見て何かを確認している。

そして俺に向き直り、

 

「じゃあ次はお髭剃りですね!」

「……ほぼ生えてないぞ、俺」

「でも産毛は生えてるでしょう?」

「…へえへえ」

「ふふふ」

 

この後、【飛行機雲】に髭を剃ってもらった。

……なんかやたらと時間をかけて丁寧に剃られた気がするが気のせいか?

「はい、できました!」と渡された手鏡を見ると、そこにはいつもの俺がいた。

 

「……お前、上手いな」

「えへへ〜♪」

 

その後も風呂上がりのドライヤーは【飛行機雲】が担当し。

いつも通りナイトキャップに髪を収めて就寝準備をすれば。

 

「……今日もか」

「だって先輩のベッド寝心地いいんですもん!」





たぶん一族からして毛が薄そうだよねって。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。