さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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もうそれを当然だと思ってるけど。



鬱々、さめざめ

シルバーチャンプは自分を『失敗作』だと評する。

 

「だってほら、俺、父さんや伯父さんみたいには走れないですし…人気だって七光りみたいなもんですし…」

 

幼いころからそう言われ続けてきたからか。

実の家族にその事実を隠し、ひとり必死に呑み込んできたソレの吐露は思わず胃がムカムカしてしまいそうなほどに重い。

 

「それに……その、俺って女の子みたいな顔してるじゃないですか……だから、よくからかわれて……」

 

そして、そんなコンプレックスを克服するための努力が『女々しい』と一蹴されてしまえば。

 

「……っ……うっ……」

「あ」

 

ぽろり、とこぼれる涙。

一度決壊してしまえば止めることは難しく、ボロボロとあふれ出るソレはシルバーチャンプの頬を伝い床へと落ちていく。

そんな姿を見てしまったからには、もう見ているだけではいられなくて。

 

「せんぱい…?」

 

泣き方を知らない子どもだ。

抱きしめて、とんとんとやさしく叩いても困惑するばかりで泣き止もうとしない。

 

「大丈夫、大丈夫」

 

だから、俺はただ声をかけ続ける。

 

「お前はすごいよ」

「でも……俺……」

「それに、七光りってなんだ? そんなのただのやっかみだろ。テメェは実力で勝ったんだ。ほら、なんか言われても俺が黙らせてやらぁ」

「……せんぱいが……?」

「そーだよ。あ、なんなら今ここで証明してやろうか?」

「え…?んむ?!」

 

不意打ちにそうしてやったら、驚いたのか涙が止まった。

目を白黒させたかと思うと一気に白い肌が赤くなって、

 

「な、ななななな……っ?!」

「はは、顔真っ赤。さてウブだな後輩?」

「だ、だってせんぱいがいきなり……!」

「でも泣き止んだろ?」

「……あ」

 

言われてからようやく気付いたらしい。

 

「……ふふん、どうだ?これなら黙らせられるだろ」

「えと……その……あの……」

 

あたふたと視線を彷徨わせながら言葉を探すシルバーチャンプ。

けれど結局いい言葉が見つからなかったらしく「…はい」と恥ずかしそうに、かぼそく答える。

家族やそれと同然の相手以外に好かれること、愛されることに慣れていない子どもはいともすんなりと手中に落ちた。

『こうすれば黙らせられる』というのも間違いではないが、それをされたが最後外堀を埋められるのと同じことなのに。

 

「じゃあ、これからなんかあったら俺のところ来いよ。俺がなんとかしてやっから」

「……はい!ありがとうございます!」

 

こんな子どもをひとり放っておくなんてできるわけがない。

だから俺は、この後輩との付き合い方をそう決めたのだ。

 

 

「んぅ、せんぱい……?」

 

懐かしい夢を見ていた気がする。

もうずいぶんと前のことなのに、今でも覚えているのはきっとそれだけ鮮烈な記憶だったからだろう。

そんな過去の回想に浸っていた俺を現実へと引き戻したのは、やはりというかシルバーチャンプで。

 

「…だいすきですよ」

「おう、俺も」





もう諦めかけている後輩を必至に引き上げようとする先輩の話。
そもそも後輩がこんな面を見せるのは先輩だけなので…頑張れ先輩!
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