さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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一応ウマで幸せ時空の話なんだ。
…双方、記憶があるのかは定かではないけれど。


*キミの本心

マス太と併走をすることが多々ある。

まぁチームメイトだからな。

そして時々、二人だけで競走する時もある。

 

今回の話はその時のマス太についての話だ。

 

 

マス太は僕の走る姿が好きらしい。

だがそれはそれとして僕を負かしたいという気持ちもあるようだ。

その感情を向けられている僕としても『コイツ、難儀だなぁ』と思うが、

 

「マス太、飲みもの」

「ん」

 

先にゴールに着いていた僕は少し遅れてから来たマス太に飲みものを手渡す。

僕は飲みものを取りに行くついでに息を整えたがマス太の息はまだ荒い。

額から流れる汗を拭ってマス太が飲みものを受け取る。

その瞬間見えた目に、ゾクリとした。

 

「…どうしたの」

 

怪訝そうにするマス太に慌てて「何でもない」と返す。

落ち着け、…落ち着け、自分。

飲みものを嚥下するマス太を眺めながら思案する。

 

 

僕は、僕に負けた時のマス太の目が好きだ。

ぐしゃぐしゃの負の感情で塗りたくられたあの目が好きだ。

いつか喰らい尽くしてやると言わんばかりの目が好きだ。

どれほど見たって飽きないだろう。

それでも、マス太は僕にいっとう優しいからすぐにその目はなりを潜めてしまう。

 

そうなるたびに考えてしまう。

もしも、もしも僕らが親友ではなかったら。

マス太が勝ち続ける僕を、憎んでくれる世界があったなら。

僕は、この目を独り占めできたのでは…?

 

「バレット!」

「…っ何?」

「ぼうっとしてたから」

「あぁ…、ごめん」

「…どこか具合悪い?」

「いや、大丈夫だよ」

 

 

バレットにこんな感情を向けてはいけないと分かっている。

自他ともに認める親友で、いっとう大切な人を、…『憎い』と思ってしまうなんて。

 

僕はバレットの走る姿が好きだ。

好きだけど、ほんの時々僕の前を往く姿がひどく憎らしくなる。

バレットにとってはそうではないのだろうけど、余裕そうに微笑する顔を泣かせてやりたくなる。

シルバーバレットという存在の、"矜恃"をグチャグチャに蹂躙してやりたくなる。

僕の方が、…いや()の方が強いのだと分からせてやりたくなる。

 

「マス太」

「っ何?」

「ん、いや今日のご飯なににしようかって」

「あ、あぁ…」

 

ニコリと笑うバレットを見て、思考がいつもみたいな風に戻る。

うん、あんなこと考えちゃあいけないよね。

いつも通りの、優しいバレットの親友に戻ろうとする僕に、

 

「なぁ、マス太」

「…なぁに」

「僕、」

 

キミが嗤う。

僕の本心を察しているかのように笑う。

 

「お前にだったらコロされてもイイぜ」

 

その顔にどうにも、

 

「はぁ〜……、」

「エッ?ため息つくところあったか?!」

「…もういいよ」

 

そそられてしまう僕は、なんて救いようがないのだろう。




僕:
マス太のことが友人として好きだが、それはそれとしていつも優しいマス太が時おり自分に向ける暗い目がいちばん好き。
もしも死ぬとしたらマス太の手にかかりたい、看取られたいくらいにはマス太に対する感情が重め。

マス太:
僕のことが友人として好きだが、それはそれとして前だけしか見てない僕を引きずり下ろして自分だけを見させたい気持ちもある。
コイツもコイツで、もし万が一僕が死ぬのなら自分の前で死んでくれと思ってるフシがある。僕に対する感情が重い。
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