さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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この用務員さんは…?



さあ、どこまでも

そのウマは、優秀な幼なじみのついでにトレセン学園に入学できたようなものだった。

彼の幼なじみは生まれながらにして何でも持ってるようなヤツで、美貌も、頭脳も、身体能力も、人に愛される愛嬌だって。

しかし、何故かその幼なじみは周りに慕われているはずなのに彼にしつこく絡んできた。

 

「ねぇねぇ、なんでそんなにつまらなそうなの?」

「……うるさい」

「えー?なんでー?一緒に遊ぼうよ!」

 

彼はそれがとても煩わしかった。

だから突き放した。

それなのに、幼なじみは何度も何度も彼に話しかけてきた。

鬱陶しいと思いつつも、彼だって嬉しかったのだろう。

いつしか彼はその幼なじみと仕方なく!仲良くなっていったのだ。が、

 

「……」

 

トレセン学園に入学してみたら。

みんなが注目するのはもちろん幼なじみで、誰も彼に見向きなんかしない。

トレーナーについてほしくとも「あの子ならともかく…」と嘲るように苦笑されるばかり。

故に彼は…、

 

「じゃあ、僕がトレーナーになろうか」

「え」

 

諦めようとした。

その時に。

 

「普段はいちおう用務員さんだけどね。持ってるのは持ってるんだ、トレーナー免許」

 

そう、彼に言ってくれた唯一のヒト。

何重にも袖などを捲ったブカブカのつなぎを着てキャップを深く被った用務員さん。

それからだった。

彼はその用務員さんの指導のもと、快進撃を始めた。

新バ戦なんか楽勝で、果てにはクラシック級で世代戦のNHKマイルのみならず、宝塚記念と天皇賞・秋とジャパンカップを勝ってしまった(なおジュニア級の際には朝日杯を勝っている)。

とはいえ、

 

「おめでとう」

「…うん」

 

年度代表バは、無敗の三冠+有馬記念を勝った彼の幼なじみが獲った。

 

「……?」

 

でも幼なじみは嬉しくなさそうだ。

あんなにも祝福されて、取材陣にも囲まれているというのに。

 

「さ、帰ろっか」

「おう」

「こういうとこ、居心地悪いよねぇ」

「そうだな」

 

注目されるのはあまり好きじゃないから、俺だって気づかれる前にとっとと退散する。

 

「……」

 

ただ、幼なじみが。

上の空で、去っていく自分たちを気にしているのは……少し気になった。

 

「……ねぇ」

「?」

 

帰り道に声をかけられる。

それはレース後によく聞く声だ。

 

「なんで三冠路線に出てこなかったの?」

「……別にいいだろ」

 

飽きもせずレース場にやってきて、彼に問いかける幼なじみ。

『三冠バさまが暇なこって』と内心呆れるも。

 

「……」

「用がないなら帰るぞ」

「……ねぇ、なんで?」

 

彼はこういう時の幼なじみが苦手だった。

 

「ねぇってば!」

 

なんで?と言われても困る。

そんなの、彼のほうが知りたいくらいだから。

でも……、

 

「あ!ちょっと!」

 

彼が逃げれば縋るように追いかけてきて、そして……。





史実世界では幼なじみくんが久しぶりに現れた銀弾系列じゃない…というかそもそも銀弾の血が入ってないタイプの三冠馬で、今話の主人公が銀弾直系な感じ。
どこまでいってもお互いの路線が被らず世代の最強論争では後年でも争われる存在になる。
たぶん今話主人公の方がG1獲得数が多そう(銀弾系列特有の積極的海外遠征)。
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