言われないと気づかないとも言う。
端的に言おう。
僕とミスター-ミスターシービーは付き合っている。
始まりはミスターの方から告白だった。
「好きだよ」
ありふれた併走後の一幕…だったはずなのに。
周りに誰もいなかったのは幸いだが、僕の心は平穏ではなかった。
だって僕はミスターを友人のひとりとしか見ていなかったのだし、まさかまさか…と。
「返事はいつでもいいよ」
ミスターはそう言い残して走り去った。
僕はその背中を呆然と見送った。
それから数日が経ち、僕の日常には何の変化もなかった。
いや、変化はあったのだ。
ミスターからの視線を感じるようになったし、誰かと話しているところをよく話しかけられるようになった。
でもそれだけだ。
告白の返事を求められたり、愛を囁かれることもなかったし、手を繋がれたりしたわけでもない。
ただ視線だけを感じる日々が続いた……のだが、ある日を境に一転攻勢がかかった。
「ねぇ、アタシじゃダメ?」
「え、えぇ…?」
その日は一番下の妹の大切な相手と、一番下の妹が用事でいない間一緒にいて。
一箇所に留まっておくのもなんだからと学園内を案内していたところをどうやら見られていたみたいで。
僕としてはそんな見るからに焦られるようなことはしていなかったと思うのだけど。
「ダメ……って?」
「他の人のことなんか見ないでよ」
ミスターはぷくりと頬を膨らませて不満を露わにする。
それがまた可愛らしくて、思わずドキリとしたことは内緒だ。
「……ごめんね?でもほら、あの子は僕の妹の友だちで……」
「うん、それは分かったよ。…
「ありがとう……ん……?」
今なんだか聞き捨てならないことを聞いたような……?
いや気のせいだろう。
きっと疲れてて聞き間違いでもしたのだ。
閑話休題。
「アタシと付き合って、シルバー…ううん、バレット!」
「ありゃ…一足飛びだね」
「返事はいつでもいいって言ったけど。でも……もう我慢できないかな」
ミスターは一歩距離を詰めて、僕の手を取って。
そして真っ直ぐ僕を見つめて、真剣な声色で言った。
「アタシと付き合ってください」
ああ、これは本気だ。
そう思わせるには十分なくらい強い意志の篭った言葉だった。
「……うん、いいよ」
だから僕もそれに応えることにしたんだ。
だってこんなに真剣に想ってくれているんだから。
断る理由なんかなかったし、何より僕は嬉しかった。
「僕も好きだよ、シービー」
そう、彼女だけに伝わる小声で告げると一瞬で彼女は顔を歓喜の色に染めて。
それから、痛いほどにぎゅうぎゅうと抱き締めてくるのだった。
僕:
シルバーバレット。
言われて、満更でもなかったすがた。
たぶんこれから段々重くなっていくんだろうなあ…。