さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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ふたりきり。



これがさいわい

本当は。

生まれ故郷に帰るはずだった僕は、僕を打ち負かして、()()()()()彼と一生を過ごすように───相成った。

 

『…キミが、女の子だったらよかったのに』

『……』

 

僕をモノにした彼は、薄い僕の胎を見てはよくそう言った。

その場所には僕ら以外にも同族がいたけれど、この場所に来た時点で彼がボスになった。

彼は僕が傍にいないと落ち着かないので、僕が彼以外の同族に会うことは滅多にない。

とはいえ、僕は女の子じゃないし、彼もまた男だ。

だから子どもは生まれないし、僕らはこの場所で二頭きりだ。

……ただ、ちょっと困ったことに。

彼は僕を()()()()扱いたがる。

いやまあ、確かに僕は男らしくないけれど……。

 

『…ただいま』

 

そんなこんなと考えていると件の彼が帰ってきた。

どうにも"仕事"終わりのようで見るからに機嫌が悪い。

 

『おかえり』

 

彼は、僕以外に興味がないらしい。

いや、僕の子どもであるのなら多少の興味は持ってくれるようだが、それでも"多少"だ。

 

『…何も、臭わないな』

『……今日も、大人しくしてたよ』

 

男の子だから、僕も彼のように"仕事"があるけれど。

その"仕事"があんまり出来ていないのは、僕が彼以外の臭いをつけていると彼が怒り狂うからで。

そのため彼が"仕事"に行っている間に僕も"仕事"をしては、世話してくれる人に体を綺麗にしてもらって、こうしてある程度外の匂いをつけないと…。

 

『……ん、』

『っ、と……』

 

彼は僕の匂いを嗅ぐのが好きらしい。

僕としては恥ずかしいのでやめてほしいのだが、彼はお構いなしに僕に擦り寄る。

そうして、そのままべっとりと引っ付くのだ。

"仕事"で疲れているだろうに、よくやるなあと思うけれど。

……まあ僕も彼に擦り寄られるのは嫌いじゃないし、彼の匂いは落ち着くからいいのだけれど。

 

『……あしたも、大人しくしていろよ』

『うん……』

 

ああ、…きっと明日も変わらない。

 

 

サンデースクラッパという馬は、遠目で見れば父であるサンデーサイレンスとよく似ているが、近くで見ると母方譲りの可愛らしい顔立ちをした馬であった。

それでいて華奢で、初対面の人間に股を覗かれたほど、本当に…牡馬には見えない馬であったから。

 

『なんで此処に牝馬がいるんだ?』

『あんな可愛い顔の奴、牝馬に決まってるだろ』

 

そう、ヒソヒソと。

繋養先にやってきた直後から、同族に噂され、中には……『優しそう(で泣き寝入りしそうな奴)だから』と狙う者もいたのだが。

 

『何を、している?』

 

サンデースクラッパと共にやってきたグローリーゴアが一日でその場所のボスとなり。

恐ろしいまでの地獄耳で、大切な彼に関する不埒な話を聞けばすぐさま脅し…ゲフンゲフン、話をしていたので。

 

『アレはボスのオンナなのだ』

 

と、いつしかその場の暗黙の了解となったのだ。が、

 

『…?どうしたの?』

 

まだ何も知らない新入りや、幼駒から若馬に移行したばかりの馬がサンデースクラッパに一目惚れしては…?





思った以上にクソデカ感情。
それを普通と思っている【戦う者】と最早【戦う者】関係のあれこれがヤバすぎてギャングのボスみたくなってる【栄光を往く者】。
…たいへんそ〜。
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