さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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無理しかしねぇ!!



やれるだけやってみる

無事やりきって、無事脚をぶっ壊した俺はその事実を世間に明かしていないのもあって秘密裏にトレセン学園の本科を辞めたあと、育成科へと移った。

実はトレセン学園にはトゥインクルシリーズに出走する選手たちしかいない…と思われがちだが、サポート科やいま俺が所属する育成科等もあったりする。

トゥインクルシリーズに出走する選手───いわゆる本科生がメディアに多く露出しているだけで、トゥインクルシリーズを出ない……というよりは裏方のサポート科や育成科の生徒たちの方が圧倒的に多いのだ。が、

 

「おう」

「おかえりなさい、先輩」

 

満足に動けない俺は寮部屋で通信教育するしかない。

しかも実地研修があろうと、現役時代に築いた名声のせいで実地に行きたくとも行けないし。

万が一俺がいることを嗅ぎつけられたら面倒なことになることは火を見るよりも明らかだ。

そんなわけで、俺は未だに本科生が住む寮に住んでいて。

 

「すぐメシこさえるから」

「…いつもすみません」

「無理して転けられたらたまらんからな」

 

寮の同室である【金色旅程】先輩に面倒を見られている。

食事だけでなくお風呂等も。

この時点で不甲斐ないのだが、まともに動けんので仕方がない。

…前、ひとりで動いたら転けまくって痣たくさんできたからなあ。

それを見た先輩に、静かに「無理するな」と言われたのは堪えた。

逆に怒鳴ったりしてくれた方がよかったまである。

あれだけ静かに言われたら、な。

 

「にしても……残り二週間かあ」

「そうですね」

 

先輩の作った食事を食べつつ、カレンダーを見つめる。

あと二週間で先輩は海外遠征に行く。

それを境に俺は実家へ帰る手はずとなっていて。

 

「無理、するなよ」

「しませんよお」

「お前のことだから何でもひとりでやりそうだ」

「…しませんってば」

 

嘘だ。

両親にもきょうだいにもそういったところを見せたくないから。

何とか器具を外して生きていけるようにおやっさんのところでリハビリしないと。

……でも。

 

「……先輩、俺、本当に大丈夫ですからね」

「……」

「だから……その、あの……」

「わかったわかった」

 

おやっさんのところに行くことは秘密にしないと。

おやっさんのリハビリが死ぬほど辛いのは時々話してたため先輩も知っているところ。

それが壊れた脚を何とか一人で生活できるまで戻すのは生半可なことではないのも。

 

「先輩、俺、頑張りますから」

「ああ」

 

だから。

 

「戻ってきたら……その……」

「……わかったわかった。だからそんな顔すんな」

 





もう死に体だけど一人で生きていけるぐらいにはリハビリ頑張るつもり(なおそのリハビリには死んだ方がマシなくらいの苦痛が伴うこととする)。
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