さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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誰かのために。



変わらない

その子を気にするたびに「あまり関わらない方がいいよ」と言われていた。

その子は誰に対しても対応がキツくて、みんなが遠巻きにしていた。

けれども、僕は何故だかあの子を放っておけなくて積極的に関わりに行っていた。

 

(だって、…寂しそうな目をするんだもの)

 

押しては引いて、見極めて。

徐々に徐々に、あの子に入り込んだ。

そうすると今度は困ったことに…。

 

───どこ行ってたの。

「買い物だよ〜」

───うそ、誰かと一緒にいたくせに。

 

束縛が強くなったのだけど。

なにせあの子はひどく精神が不安定で、関わりが深くなっていくうちに放っておいたらダメだなと。

そう思ったはいいものの、気づけば僕の方が囚われていた感じで。

いつもなら正直に理由を話して、何とか分かってもらうのだけど、今日だけは…。

 

───出ていけ!

 

のらりくらりもできず、言葉に詰まっていたらそう言われてしまった。

ああなったあの子は落ち着くまで時間がかかるので素直に外に出ると…。

 

『まだ子どもが中にいるんです!!』

 

ごうごうと燃え盛る建物と、そう泣き叫ぶ母親と。

消防士さんも来ているけれど、炎の勢いに尻込みしているようなのでサッとバケツの水を被ると一目散に炎の中に飛び込んだ。

ウマ娘の身体能力なら、人一人くらいなら抱えて帰ってこれるので。

 

「お母さん、大丈夫です!もう安心ですよ」

『…………ああ!ありがとうございます!!』

 

小さなウマ娘を抱えて抜け出すと、その子の母親は僕に何度も頭を下げた。

感動の再会で抱き合っている親子を見て、安堵の息を漏らす。

 

(よかった…………)

 

ほわほわした気持ちでその場を後にしようとして…。

 

「あちち……やっちゃったなぁ」

 

火は鎮火したけれど、僕の腕がひどい火傷。

まぁ焼けて倒れてきたのをガードしたからそりゃあそうなるんだけどさ。

そう思っていると意識が薄くなってきて…。

あ、やべ一酸化炭素…。

 

 

ずっとずっと夢を見た。

大切に思っていた相手を亡くす夢。

いや、思っていただけで自分のモノではなかったが。

だが毎日毎日『忘れるな』とでもいうように夢を見続けるのは堪えるもので。

それは『恋』だの『愛』だのなんて甘ったるいものではなく、呪いのようで。

 

「知らない天井だぁ…」

 

聞こえた微かな声にハッと意識を戻す。

そこには身体中に火傷を負った大切な人。

火事になっている建物から子どもを助けたと、まるで美談のようにされたが話を聞いたこっちは血の気が引いた。

だって、

 

「……ぁ。ね、もう怒ってない?」





それは美談だけれども。
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