さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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籠るように。



甘い匂い

(…甘い匂いがする)

 

くん、と鼻を動かすと甘い匂いが鼻についた。

それは女性の香水の匂いで、その匂いを纏っている理由は…。

 

「シャワー浴びてこいよ」

「え?」

「…香水の匂いがするんだよ」

「あぁ、なるほど」

 

アイツは、俺がただ単に香水の匂いが嫌いなだけだと思っている。

それはあながち間違いでもないけれど。

 

(お前にその匂いがついてるのが嫌なんだよ)

「じゃあ、シャワー浴びてくるね」

 

そう言って風呂場に向かったアイツ。

俺は、その匂いを早く消して欲しくて、でもそれを言うのはなんだか嫌で、俺はアイツが戻ってくるのを待っていた。

 

「戻ったよー」

「おう……」

「どうかした?なんか機嫌悪そうな顔してるけど」

「……っ!」

 

それはお前がその匂いをさせてたせいだ!なんて言えるわけもなくて。

 

(……くそ)

 

そんな俺の顔を見て、何か察したのか、アイツはぎゅうと抱きしめてきた。

そうして、頭撫でりゃあ俺の機嫌が治ると思っているのか。

 

「っ、おい!」

「あ、治った」

「は?」

「頭撫でられるの好きだね、サンデー」

(……くそ)

 

俺はその腕から抜け出すと、そのままアイツを抱き締め返した。

アイツはむちゃくちゃに非力なので抱き締められたが最後中々に抜け出せない。

 

「ぎゃーっ!また力強くなった!」

「お前が先に抱きしめてきたんだろうが」

「いや、まぁそうだけどさ……」

 

俺は、アイツを抱き締める腕の力を緩めると、その首筋に顔を寄せた。

そうしてその首に舌を這わせて、そのまま強く噛み付いた。

 

「いたっ!え、なに!?何!?」

「……」

 

じわりと滲んできた血を舐めとる。

何だかしょっぱいその味に、俺は目を細める。

 

「ど、どうしたの?僕何かした?」

「……別に」

 

俺は首筋から離れると、そのままソファに横になった。

もうアイツに用事はない。

だから寝る。ただそれだけだ。

 

(ったく……)

 

別に拗ねているわけではない、決して。

 

 

いい匂いは程よいならいいが、やりすぎると気分が悪くなる。

"仕事"で行く先には基本いい匂いのアロマなどが焚かれているが、大概が焚きすぎて部屋の中に匂いがくすぶっている。

 

「ぉ゛え……」

 

"仕事"が終わったあと、トイレに行って軽く吐く。

今日も今日とて匂いが酷かった。

もはや臭いまである。

 

「はぁ……きもちわる……」

 

げえげえと一通り吐き終わって、僕は水で口を濯ぐ。

 

(流石に少し休まないと)

 

だいぶ動き回ったのもあって、もう限界が近かった。

"仕事"中は平気なのに終わった瞬間これだ。

僕は今一度ため息をつくとトイレを出た。

 

「…今日ごはん食べれるかな」





臭いって強すぎると気分悪くなりますよねって話。
何よりもほどほどが、ね。
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