さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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精神まではね。



強すぎても

「…死んだら土に還るだけなのに」

 

どうしようもなく、みっともなく、哀れにも縋りつけば理解できないものを見るかのようにぼんやりとした視線を向けられた。

どれほど想いを告げても無の礫のソイツは俺のこの気持ちを一過性の勘違いだと思っているようで、

 

「俺は、お前が好きだ」

 

と伝えれば、

 

「それは勘違いだ。キミは僕が好きなわけじゃない。僕を通して理想を見ているんだ」

 

と、俺の気持ちを全ては否定しないくせにそんな的外れなことを言う。

そんなわけがあるかと否定すれば、

 

「……だって、そうじゃなきゃおかしいだろ?僕は……僕は『悪役(ぼく)』のはずなのに……なんで『ヒーロー(キミ)』が僕を好いてくれるんだよ……」

 

なんで、なんでと繰り返すソイツは今にも泣きだしそうで、あぁそうか、と合点がいった。

 

「お前だってお前自身の気持ちを否定してるじゃねぇか。俺だって『俺がお前を好きになった理由』がわからねぇよ」

 

ソイツが俺とは正反対の存在だというのなら確かにその線もあるだろう。

『ヒーロー』という存在に夢を見たい気持ちはわかるからそれを否定するつもりはないし、俺もその中に引き摺りこまれたのだから何も言えやしない。

けれど、それにしたってこの気持ちが『勘違いだ』と断じられるのは納得できない。

だから、

 

「なら俺は『勘違い』で構わない。いつかお前に俺を好きになってもらえりゃいい話だろ?」

 

今あるソイツの気持ち全部を否定したいわけじゃない。

好きだと言う気持ちだけは疑うつもりなんて欠片もないらしいからそれで充分だ。

コイツはどうせ否定するだろうけれど、俺は勝手にその気持ちを大事にすると決めたのだからそれでいいんだ。

 

「……僕は、」

 

何かを言いかけたソイツの体が不意に傾く。

慌ててその体に手を伸ばすけれど、俺の手は何とか掴めただけで支えることはできなくて。

 

「おいっ!?……っめっちゃ熱あるじゃねぇか!?!?」

 

だからいつもより話してくれたってことかよ!?と気づいて思わず声を荒げてしまう。

 

「しんどいなら無理して話そうとすんなよっ」

 

ソイツの体を横抱きにして抱え上げれば「だって、」と小さな声が聞こえた。

 

「キミは、僕なんかに構ってる暇なんてないから……」

 

だからと、そう呟くソイツの体はやっぱり熱い。

 

「……お前ってホント馬鹿だよな」

 

そんな状態でも俺と話すことを優先するコイツが馬鹿すぎて愛しさばかりが募っていく。

 

(…嗚呼、ほんと)

「とりあえず部屋行って着替えさせるからな。こんなに汗かいてるんだし」





矢印は向き合ってるけど、周りから貼られたレッテルのせいで素直になれない悪役と知ったことかと強行突破なヒーローなんだ。
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