自分がオトしたと思ってるんだ。
(ほんとに時間がかかったよな…)
そう思う自分の横には隣に座る伴侶の姿。
学生時代からの仲だが、…オトすのに中々時間がかかったのである。
(ものすごく迫ってやっとだったんだよな)
他と比べて自分が相手に優しくされてると認識して。
『これは自分に気があるのでは?』と思ってアピールしてみたのだけど、軽めのアピールだと全く気付いてもらえず。
『あ、これ本気にされてないな』と思って、より熱烈アピールをしてみたが、それでも気付いてもらえなかった。
「でも、その甲斐あって今があるんだよな」
しみじみと呟くと、自分の肩に頭を乗せていた伴侶の体がもぞりと動いた。
「……ん……。……何?」
眠そうな声で問われて、思わず笑みがこぼれる。
「いや?ただ、僕は幸せ者だなーと思っただけさ」
ゆるゆると撫でたおなかは膨らんでいる。
古来からこの世界ではウマ娘同士のカップルは三女神から子を授かるとされている通り、妊娠も。
「このおなかの子が元気に生まれたら……いや、一緒に生きてくれるだけで、僕は幸せだよ。……ありがとう」
そう言って、伴侶の手を握ると、伴侶が照れたように身動ぎした。
「もう……」
そして、少し拗ねた顔で自分の方を向くと、そのまま抱き締めてくる。
「わ」
「…あんまり可愛いことしないで」
ぎゅ、と抱き締められながらそんなことを言われて思わず首を傾げた。
「どうしてだい?」
「……愛おしすぎて、食べちゃいたくなる」
「!……ふふ……」
いつもよりは低めの声でそう言われて、何だか色っぽいなあと思ってしまう。
そして自分もそっと手を背中に回して……同じように抱き締める。
「……僕も、食べて欲しいくらいだよ」
そう言うと伴侶が一瞬固まってから、また強く抱き締めてきた。
「……もう……!」
「あ、ダメだからね。赤ちゃんいるんだから」
ぴ、と唇に人差し指を当てれば「んむむ」と不機嫌な顔。
いや、煽ったのは悪かったけどさ。
「……わかった」
不承不承という表情で言う伴侶に、思わずくすりと笑ってしまう。
「キミは本当に可愛いなあ……」
「はいはい。可愛いのはそっちの方だから」
そんな軽口を言い合ってから、仕方なく口付けられる。
(ああ、幸せだな……)
そう思いながら自分は目を閉じて、その幸福を嚙み締めていたのだった。
*
「はいはい落ち着いてね〜」
子どもたちが学校に行った瞬間、自分に抱きついてきた伴侶に僕は呆れた顔をする。
昔から僕のことが大好きな伴侶だけど年々愛の深さが凄いことになっていってるんだよなあ。
「はいはい、いい子いい子」
あの思わせぶりにまさか本気で想われているとは思わないよね…。