さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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たくさんの。



傷の代わり

自分のことが嫌いだった。

しかし自分の体を傷つけることなんてできず、かといってピアスを開けるなどもできず。

そうして最終的に選んだのは、

 

「お前ぐらいだよ、好き好んで彫られにくるのは」

「そうですか」

 

一族抱えの彫り師の元に赴き、また彫ってもらう。

かつて背中に大きな図柄を彫ってもらったがそれ以降も、時々通っていた。

彫り師はふうむと唸ってから言った。

 

「しかしまあ、なんだ。バレたら面倒そう」

「うるさいな」

「前も言ったが、俺は別にかまわんがね、しかしなんだってまたそんな模様を?」

「……戒めだ」

「ほほう?」

 

彫り師は面白そうに言う。

 

「どんな戒め?」

「教えるわけないだろ」

 

このジジイのことだ、教えたら変に面白がるに決まっている。

彫師は「そうか、ならいい」と言うと準備を始めた。

彫る箇所を消毒し、彫りやすいように調整。

 

「しかしまた随分と大きく入れるもんだなあ」

「かもな」

 

背中の彫りものをちらりと見て彫り師は言った。

 

「しかも蛇と来たもんだ」

 

彫り師は苦笑した。

その苦笑を見て俺は憮然と言い返した。

 

「笑うなよ、俺だってわかってるんだから」

 

蛇…というよかはウロボロス。

遠にキャンバスになった俺の体は、これが普通に見えるタイプの刺青だったら凄いことになってること請け負いぐらいにはごちゃごちゃになっているだろうことで。

 

「わかってても入れるんだな」

「ああ、デザインこさえてもらったからな」

「そうか、まあ俺はいいがな」

 

そう言って彫り師は作業に入った。

……。

……

…………。

彫っている間も会話はする。

しかし俺はあまり話さない。

彫り師もそれはわかっているのか無理に話しかけてはこない。

……このジジイのこういうところが気に入っていた。

そんなこんなをしているうちに彫る作業は終わったようだ。

「終わったよ」と器具がカタンと置かれたのと同時にドッと疲れがきたような。

「細けーだけあって時間が掛かったよ」と彫師は笑う。

 

「どれくらい?」

 

俺が聞くと彫り師は言った。

 

「まあ……二時間かな」

 

いつもより結構小さい図柄だったけどそんなにかかるのか、と思っていたら彫り師はつづけた。

 

「さて、今日の料金だが……」

 

いつも通りの値段を提示されたのでいつも通りに払う。

 

「分かってるだろうがそこ強く洗うの避けろよ」

「分かってる分かってる」

 

ふらふらと帰る。

もうちょっとしたら激痛になり始めるんだろうなあなんて。

憂鬱になりながら帰路についた。

 

「さて、どうなることやら……はぁ」

 





【銀色の王者】:
シルバーチャンプ。
実は身体中にお絵描き()がいっぱい。
でも興奮とかで体温が上がらないと見えない仕様だからへーきへーき。
風呂入るぐらいじゃ見えないんでね。
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