傷つけさせないように。
まあ、なんというか。
「別れよっか」
「…は?」
最近、誹謗中傷がひどくなってきた。
何とか隠せてはいるけれど、ここまでになったら物理的な被害も来そうだ、なんて。
だから、
「もう、キミのこと好きじゃないから」
努めて冷たく言い放って、僕はふいっと相手に背を向ける。
「え……?」
背後で硬直した気配がする。
……ちょっとは傷付いたかな?
嫌いになってくれたかな、なんてことを思ったけど。
「はっ」
すぐに嘲りが耳に届いたから、きっと逆だ。
「それ本気で言ってるのか?」
ああもう、本当にうざったい!
僕は内心の苛立ちを悟られないよう注意しながら言う。
「うん、ホントだよ」
なんで僕がこんなこと言わなけりゃならないんだと内心は荒れ狂ってたけど。
「なんで」
「だって、キミにもう飽きたし。でも他の人探そうにも、人気者なキミのこと立てて、会わないように我慢してたんだよ?」
そんな危険は冒せない。
だからもういっそ嫌われてスッパリ別れた方が楽だ!
そう思っての発言だったんだけど……。
「ふーん?」
相手はそれをどう解釈したのか、いやに明るい声で言う。
「……じゃあさ」
そして僕の肩を掴んで強引に目を合わせるようにする。
「本当に嫌いならそんな声と顔しちゃダメだろう?」
「っ、なに……!」
射すくめられる。
いや、そんな言葉では生ぬるい。
睨まれただけで呼吸さえ止まりそうなプレッシャー。
「嫌いだって言ってるくせに、なんであんな声で…」
なんで、って……そりゃまだ好きだからだけど! ?
ああもう! 本当にうざいよこいつ!!
「あーあれか? 本当はまだ好きなのに、突き放さなくちゃいけなくてそんな冷たいこと言っちゃう的な?」
「っ!」
違う!
違うもん!
「でも、お前が本気でそう思ってようが、───離すつもりないからな?」
「っ!」
ああもう! だから、違うって!
でも、そんな反論は言葉にならなくて。
「ほら」
「んぐっ!」
悪い顔をしながら目が笑っていない相手は僕に、強引に、食らいつくように。
……ああもう。
なんで僕はこんなヤツを好きになってしまったんだろう。
……いやまあ、好きなんだけどさぁ……。
「ってことで」
そして相手は言う。
「これからもよろしくな? シルバー♡」
・
・
・
アイツが突然別れるなんて言った理由はすぐに分かった。
何やかんやと疲れ果てさせて眠らせたあと、捜索してみれば出るわ出るわの良くない手紙の束。
「…どんだけ時間かけて捕まえたと思ってるんだ」
あの鈍感を捕まえるのにどれだけの労力を払ったか。
それを知らないからと内心イラつく。
「で、だ」
自分の情報収集能力なら、この程度のゴミを片付けるなんて朝飯前だ。
あっという間に目障りなモノを一掃した俺はその足で寝室に戻る。
「はあーい♡」
そしてベッドに戻れば自分がいなくてむずがっていた愛しい人が擦り寄ってくるので…。
たとえ善意であれど────許さない。