才能が向いちゃった!
シルバーバレットは、まるで神から制限をつけられたかのように病弱に生まれた。
その様子は彼の祖母とよく似ていて、それはそれは大事に大事に育てられ。
「…うん」
陽の光を浴びただけでも肌がひどく赤く、また痛むためろくに外に出られない体はいつしか恐ろしいまでに白くなって。
同じ年頃の子どものように外で遊べないと分かった頃には遠に家にある莫大な蔵書が友となっていた彼は。
「兄さん、大丈夫?」
「うん。あれ?もうご飯?」
気づけば芸術方面に才を発揮させていた。
とはいえ楽器方面はあまり得意ではないのだが。
「よいしょっと」
とはいえ。
彼は表に向けて作品を発表しなかった。
精々が家族や数少ない知り合いに配るように刷ったりだとか描くぐらいで。
けれど、しかし。
「…ごめんなさい、兄さん」
都会の方の学校に進み、寮生活をしていた一番上の妹からシルバーバレットの類まれなる才覚が露呈してしまったらしく。
彼女が不注意で冊子を落とした結果、その冊子を見つけ出した頃にはあれよあれよという間に。
学園に来ていたレース雑誌の記者が勝手にシルバーバレットを担ぎ出して。
「作家に!?兄さん、それはいくらなんでも」
その翌年には、作家となった彼の担当が彼の絵の才能をも見出し。
「……兄さん」
そんなこんなと、気づけば彼は世界で最も注目される芸術家となっていた。
(でも)
「うん?どうしたの?」
「ううん。何でもないよ、兄さん」
それでも、彼は自分の作品に向けられるファンレターを喜んでいるから。
「みんなが喜んでくれるなら、頑張らなくちゃ」
その作品に自分の魂を入れ込んでいても。
知らず彼は今日も創作の日々を続ける。
「……せめて」
自分がどこから来て、そしてどこに帰るのかを忘れないためにも。
「どうしたの?」
「ううん、もうご飯だよって言いに来ただけ」
「そう?ならいいけど」
(……でも)
「兄さんはさ、本当にそれでいいのかな?」
「え?何がだい?」
「……ううん、何でもないの。気にしないでね、兄さん」
(……俺たちは)
兄さんが傍にいてくれればそれでよかったのに。
ずっとずっと家の中で。
誰の目にも、神様の目にも触れることなく。
自分たちに守られて。
ずっとずっと幸せに。
「……本当に」
それだけで、よかったのに。
「……ごめん、ね。兄さん」
もうその願いは叶わないのだと知っているから。
俺たちは今日も笑顔で過ごすしかないんだと分かっているから。
「ううん?何だか分からないけど……すぐ行くね」
「うん、待ってるよ兄さん」
僕:
シルバーバレット。
神様に制限をつけられた結果、別方向に才能が開花しちゃって頭抱えられてそお。
確実に後世に渡って名が遺る偉人になる。
絵でも小説でも芸術方面なら何でもござれ。
でも楽器だけは比較的不得手らしい(でも不得手とは?ってくらいにはできる。…まあ、当人の比較対象が他親族だからね)。