さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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自覚がない。



無自覚に愛

「【旅程】さん」

 

笑うアイツはいつも幽霊のよう。

目を離すとそのままいなくなってしまいそうな。

そんな雰囲気だ。

 

「【旅程】さん」

 

ぎゅうと抱き締めると熱はあれど、体温にしては低く。

「どうしました?」と不思議そうにするアイツに「なんでもない」と返す。

そう、なんでもない。

ただ……、

 

「お前がいなくならないように、抱き締めているだけだ」

「ふふ……それは嬉しいですね」

 

すり、と頬擦りをしてくるコイツの髪がくすぐったい。

……ああ、本当に。

 

「お前だけは、俺を置いていくなよ」

「はい。僕は先輩を置いては行きませんよ」

「……ならいい」

 

もう少しだけ、このままで。

 

 

先輩は心配性だ。

俺としては普通にしてるつもりなのだけど、気づけば手を繋いでいたり抱き締められていたりする。

……やっぱり先輩の目の前からいなくなろうとしたのが悪かったのかな。

先輩に迷惑をかけたくなかったから一人で頼らず暮らそうとしただけなのだけど。

でも……、

 

「……先輩」

「なんだ?」

「いえ、呼んだだけです」

「そうか」

 

ああ、本当に俺は心配されているんだなあと思うと同時に嬉しくも思う。

嬉しく思っちゃダメなことなんだろうけど。

 

「……愛されてるんですね、俺」

「……ああ、そうだな。……だが、それは俺だけじゃない」

「……そう、ですか。……先輩が言うなら、そう…。……でも……」

「……なんだ?」

「いや……、その……」

「……はっきり言え」

「…………俺、その……」

 

こんな俺がいいっていうのは先輩ぐらいですよなんて。

そんな言葉を言ってしまえば先輩は不機嫌になる。

俺はこの時間を壊すようなことは言いたくない。

なのに、なんで。

なんで……、先輩を困らせるようなことを言うのをやめられないのだろう。

 

「……愛される資格が俺にあるとは思えません」

 

ああ、言ってしまった。

もうダメだと思って俯いてしまう。

こんな暗い言葉を吐くなんて先輩に嫌われてしまうかもしれない。

でも……、それでもいいとすら思ってしまう自分がいて嫌になる。

 

「お前は……」

「っ!」

 

ああ、やっぱり怒ってるかな。

どうしよう…と思った途端、

 

「相変わらず、分かってねぇんだなァお前」

 

頬を撫でられ、耳を摘まれる。

それに身を捩れば「逃げるな」と低く牽制されて動けなくなる。

 

「せ、先輩……?」

「いいか、よく聞け」

「……はい……」

「お前はな、俺の愛を甘く見すぎなんだよ」

 

ああ、やっぱり怒ってる。

どうしよう……。

でも……、と先輩の手に触れると強く握り返される。

それに少し驚いて先輩を見ると先輩は優しく微笑んでいて。

その笑顔に見惚れていると先輩が口を開く。

 

「俺はな、お前が思ってるよりお前のことが好きだぞ」

「……え……?」

「俺は、お前が…」





すごくキョドってそう…。
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