さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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どうだろうね。



幼き恋情

あの人は、私のお父さんを愛している。

私のことも愛してはいるけど、私の奥に父さんを見ている。

私は、他のきょうだいたちと比べても一番お父さんに似て生まれた。

本当に瓜二つで、ふたり並んでいると間違われることもあるくらいに。

 

「スー」

 

初恋の人はあの人。

お父さんに向けた笑顔に恋をしたのだ。

それを見て、お父さんと瓜二つの私ならと思わなかったと言えば嘘になる。

でも、それは無理な話。

だってあの人は──。

 

 

初めて、『大きくなったらおじさまのお嫁さんになる』と言われた時、グローリーゴアはびっくりするほどキョトンとした顔をした。

なにせ子どもたちが彼の愛するあの子に『おっきくなったらお嫁さんになって!』と言っているのはよく聞くし、言った子どもに威嚇だってするが。

まさかまさか自分に向けて、しかもあの子の娘に言われるとは思ってもいなかったのだ。

それからグローリーゴアはふと気付き、面白そうに笑った。

 

「大きくなったらって言うけれど、その頃には僕はおじさんだよ? それでもいいの?」

 

たしかにその娘はあの子によく似ていた。

とはいえグローリーゴアもそこまで落ちぶれていない。

ほんのちょっぴり、ちょっぴりだけ食指が動かされてる…くらいにしか思わなかったのだ。

ところがどうだ。

 

「……望むところです」

 

少女は気丈にグローリーゴアを見つめ返した。

その視線には親譲りの気の強さと頑固さが宿っている。

いやはや、この子の父親は大層なものを受け継がせたようだと彼は思ったものだ。

 

「そうかぁ……なら、そうだね」

 

グローリーゴアは、その少女に叶うはずもない夢の残滓を見てしまったので。

 

「おじさんぐらいに強くなったら、ね」

 

 

「や〜い、ロリコン」

「キミだって合法ショタのくせに」

「……」

 

先に仕掛けてきたのはそっちの方なのに、返された言葉に見るからに落ち込み出した最愛にグローリーゴアは思わず焦る。

まるで赤子にするかのように抱きかかえてはユラユラと揺らすので、もちろん揺らされてる方もちょっとクラクラ揺れる。

まったくもうと呆れ果てながらも、グローリーゴアは数少ない日々の楽しみを手放すつもりなど毛頭ないのである。

 

 

「ねぇ、キミ」

「なんですか?」

「……いや。やっぱりいいや」

 

ある日、グローリーゴアが珍しくも言い淀んだので、彼女は思わずその横顔をじっと見つめた。

 

「なんですか?言ってくださいよ。気になるじゃないですか!」

「いやね、大きくなったなぁと思って」

 

たしかに、トレセンに入るために家を離れて。

素晴らしい学友と出逢って、過ごして。

あっという間の日々だった。

 

「いやしかし……キミは将来国を傾けそうだね」

「なんですか? 褒めてるんですか?」

「……よく考えてみたらキミは若くてかっこよくて働き者で愛嬌もあって甲斐性もある女の子だから違うか。もっと酷いことになりそう」

 

そんな減らず口を叩かれても、嫌いになろうとは思えないのだから恋というのは不思議なものだ。

いや、もしかすると恋ではないのかもしれないが。

 

「さ、帰ろうか。あの子も待ってるよ」





もしかして代替なのかもしれないけれど。
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