さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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自分だけ?



好きなのは

どれだけ愛しても届きやしないことを知っている。

自分が愛した誰かはいつも自分以外のものになっては幸せそうに笑っていて。

その幸せそうな顔を壊したくないから、いつだって諦めてきた。

だって、こんな自分を愛してくれる人間なんているはずないもの。

どれだけ直そうにも生まれながらの凶暴な性格は変えられなくて、いつだって、相手には恐い思いをさせてしまう。

きっと相手から見た自分は、いつ爆発するか分からない爆弾ぐらいにしか思われていないのだろう。

だから────だから、これ以上を求めることなんてできなくて、諦めてしまったんだ。

自分が傷つくのが恐いから、自分に嘘をついて誤魔化した。

────まだ幸せだった頃。

自分だって夢見る子どもだった頃。

世界はもっと綺麗で優しかったはずだ。

なのに、どうしてこんな風になってしまったんだろう。

……そんなこと、本当は分かっている。

最初っから、自分のせいだ。

こんな、自分のせい。

だけども、

 

「ごめんなさい、ごめんなさい…」

 

結局自分は自分、変えられなくて。

目の前には縛り上げられてそこにいる、本当の本当に、生まれて初めて一目惚れした人。

いつもなら諦められるのに、どうしても諦めきれなくて、格好悪くすがりついた。

それでこの有様だ。

 

「……ッ……」

 

向けられる目だけで心臓が止まりそうになる。

……ずっと、自分は誰かを好きになっても報われないと思っていた。

けどそれは間違いで、本当は自分が誰かを好きになるなんてこと自体おこがましいことだったのかもしれない。でも、この人はこんなにも────こんなにも、綺麗だったんだもの……。

 

「ごめんなさい、ごめんなさい」

 

口からは謝罪の言葉しか出てこない。

他に何を言えばいいのかなんて分からない。

こんなことをして、「愛してる」とか言えるわけがない。

でも心の内は、うるさいぐらいに「愛してる」を謳う。

愛してる。愛してる。愛してる。

ごめんなさい。ごめんなさい。

愛してます、愛してます、あいして────、 ……でも、もうダメだ。

もう、何もかも終わりだ。

だって自分はこの綺麗な人を傷つけたんだから……。

もうきっと、この人に見てもらえる資格なんて……ない。

……ああ、本当にバカだな自分って。

そんなのとっくに分かっていたはずなのにね……。

 

「っ……」

 

ああ、でも……やっぱり諦めきれないや……。

 

「……」

 

だからせめてもう一回あの人の顔を、と。

 

「え」

 

顔を上げた瞬間、引っ張られて。

あれ?縛ってなかったっけ?と混乱した視界の隅には無惨にも転がっている縄。

 

「────つかまえた♡」





…なんて、ね?
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