さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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どこにある?



己の価値は

彼らは、大概に関しての関心が薄い。

『走ること』以外に関しての関心が薄く、『走ること』に関してはもはや執念のごとき関心を向けるがそれ以外はとんと。

まるで「必要最低限生きていければいい」とでも言いかねん無頓着さで。

『走るため』にだけ全てを捧げている。

しかもそれを異常であるとも、異常ではないとも思っていないらしい。

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社会的価値観からすれば「目的のためには手段を選ばない」人間は行き着くとこまで行くと社会的には受け入れられない異端者だ。

それは果たして良いのか?という倫理的観点の前に、社会維持のために自制は必要だというものだが……。

……まあ、いいか。

そんなのはどうでもいいことだ。

そんな『走るため』に全て捧げている彼らは、その形振り構わずさ故か───他人に愛される。

支えたいと、そう思わせる。

救いたいと思わせる。

これもまた一種のカリスマという奴なのだろう。

……何はともあれ。

そんな『走る』ためならなんでもする、とでも言いたげの異常者たちに「走らなくていい」などと言った日にはどうなるか?

答えは火を見るより明らかだろう?

 

───「そんなの、自分の価値がない」

 

「走ること」を至上の目的としている彼らにとって、「走らなくていい」という言葉は逆らい難いのだ。

何も関係がない家に生まれていれば自由にしたいことをできたのだろうけど。

彼らの周りはそれを許してくれない。

だからそれを、与えてやらなければならない。

そんな訳で現在自分は上手く言いくるめたままに、ソイツを傍に留め置いている。

ソイツが自分を好ましく思ってくれていることをいいことに、好き勝手やっている訳だ。

 

「……なんでもすると言ったな?」

「うん」

「じゃあちょっと散歩でも行こうぜ。もちろん、歩いてな」

 

見るからにうずうずしているのが分かるから手を繋いで止めて。

そうしてようやく、居心地悪そうに歩いてくれるものだから。

……本当に、自分は随分とらしくないことをしているものだ。

───こうして散歩をしていると、色々なことが分かる。

たとえば「走らなくていい」と言われてからソイツはずっと上の空だ。

どことなく覚束ない足取りが、その内心を如実に表している。

どうすっかな~というこちらの思惑などつゆ知らず。

いやまあそりゃそうか。

なんで自分がそんな風に思われてるのかなど想像もつくまいし。

コイツの至上目的は『走ること』以外にないから。

 

(ま、今のコイツを走らせたら)

 

どこに行くか、分かったもんじゃねぇし。





自分だけが自分に価値なんて、と。
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