謝るけれど。
(僕みたいなのを愛しちゃって、可哀想にね)
誰からも愛され、頼りにされる彼を見てはいつもそう思う。
彼なら、どんな相手でも選り取りみどりだったろうに、こんな自分に魅入られたせいで。
未だに周囲から秋波を送られているというのに、それに全くといっていいほど気づかない姿は…もはや残酷といっても差し支えない領域に至っていた。
「どうしたの?」
そんなことを堂々巡りに思考していると、彼が自分の元へ戻ってきて。
なんだか不満気な顔でこちらを見つめてくるのに、思わずキョトンとする。
「…ううん、なんでも」
「そう?」
「うん」
「なら、いいけど……」
不満気な顔のまま、彼は、自分の隣に腰掛けた。
……ああ、本当に可哀想だ。
こんな自分なんかに捕まっちゃって、本当に可哀想。
そんな思いを込めて彼を見つめると。
「……なに?」
視線に気づいた彼が、無表情のまま首を傾げた。
「いや…うん、」
そんな彼に首を横に振って、自分はそっと彼の肩に寄りかかった。
(でも愛しちゃったから、手放せないんだ)
自分が、『彼のために』と、手放すことができるような殊勝な人間であればよかったのに。
だが、現実は『彼のために』などと言えそうにない。
彼は自分のモノだ。
誰にも譲らない。
自分は彼を手放せない。
それが当然だ、と、そう強く思っている自分がいる。
「…本当に、どうしたの?」
「ううん」
「変なの」
たまらず自嘲する自分を不思議そうに見やる彼に、自分は曖昧に笑った。
「ねえ、」
「うん?」
「して」
「……ここで?」
「うん」
「……わかった……」
少し躊躇った後、自分から触れるだけのものを送る。
珍しいこともあるもんだと思えば、「もっと」と静かにねだってくる彼に、自分はそれに応えた。
「……もういいの?」
「うん」
「そっか」
あいしてほしい。
けど、そんなものでは足りない。
それを自分に求める彼が愛おしくて、どうしようもなく可哀想で。
彼は自分のモノなのに。
そんな気持ちを込めながら彼をそっと抱きしめると、彼は少し驚いたような顔をした後、自分の背に腕を回してきた。
「……どうしたの?」
「……別に」
「そう……」
(……ごめんね)
こんな自分に愛されて、本当に可哀想な彼。
バケモノなのだ、己は。
きっと。
これから、どんなに彼にお似合いの人が現れたとしても。
(…手放せない)
ごめんなさい。
内心、そう謝る。
ごめんなさい、ごめんなさい。
あなたを愛してしまって、ごめんなさい。
でも、もう。
「ねえ」
「……ん?」
そんな自分の思いに気づかず、彼は自分を呼ぶ。
「好きだよ」
「……うん、知ってるよ」
「そう?ならいいけど……。あ!そうだ!今度さ、一緒にどこか行かない?」
「……どこかってどこ?」
「どこでもいい!」
(……ああ)
本当に可哀想だ。
こんな自分に愛されて。
(でも)
それでも、手放せないのだ。
この手を、離せない…。
「それと」
……?
「僕がキミを愛するのは、自分の意思だよ」
ふたりはしあわせ!