さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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どこか遠くへ。



逃げ出して

駆け落ちしてしまった。

どうしても帰らなくてはいけないという事実を覆せなくて、それを正直に伝えれば連れ攫われた。

はじめはちゃんと説得したのだけど、そのたびに…まあ何やかんやされて結局は。

 

「もう…」

「おはようスー」

 

料理をしている最中なのに抱き着いてきた愛しい人にぷくっと頬を膨らませば「今日も可愛いね」と、ちゅーされるので。

「おはようグローリー」と、ちょっとだけ背伸びをしてキスを返してあげれば、驚いたような顔をしてからぎゅうっと抱きしめられた。

 

「可愛いっ……本当可愛すぎるっ」

「恥ずかしいからやめて……」

 

そうは言うけど本気で嫌というわけではないので、暫くそのままでいれば不意に解放されてきょとんとして見上げれば、にやりと笑って僕を見るグローリーが居てその笑顔に嫌な予感がした僕は「ちょっと待っ……」と言うもすでに遅くて。

 

「んっ!?」

「ん……可愛い」

「…ご飯あるんだよ!」

「う゛っ」

 

プンプンしながら皿に出来上がった食事を盛れば震えた手が伸びてくるので「ほら持ってった持ってった」と急かす。

それにしても、変わらないいつもの日常である。

グローリーと一緒に過ごす時間はとても幸せで。

こうして毎日一緒にご飯を食べて、ふたりで笑いあう日常。

ああ、幸せだなぁ……なんて柄にもないことを思っていれば「スー、引っ越そうか」と唐突の発言に驚いて「ふぇ!?」と変な声が出た。

 

「でもまだここでも大丈夫でしょ……?」

「たしかにここは平和だけれどね」

 

いま僕らが暮らしている場所は田舎だ。

近所に行こうにも車を使わなくてはいけない距離なので、あまり人とは会わない。

とはいえ、身バレは…。

 

「僕らはこんなところにいるにしては顔が良すぎるんだ」

「…?」

「それに僕らはここいらにいるには中々ない若者だからね」

「ああ、…そうかもね」

 

自身の故郷を思い出すと若者は自分たちしかおらず、基本は大人ばかりであって。

そんな場所に都会から若者が来たとあっては…。

 

「確かに、目立つか…」

「そう。僕はスーに変な虫がくっつくのはいやだからね」

「……ふふっ」

 

変な虫って。と、くすくす笑っていると何やらじっと見つめて来るのでなんだろう?と見上げれば急にちゅっちゅと顔中にキスをされるので思わずびくりとした。

 

「ちょ、ご飯……」

「うーん……そうだね」

 

そう言いながらもキスしてくるグローリーはなんだか最近少し変だ。

やたらと愛の言葉を囁いてきたり、少しでも離れるのを嫌がるような素振りを見せたり…。

 

(…どうしたんだろう?)





戻してあげなくちゃいけないって、わかってるんだけどね。
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