さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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目を光らせて、待っている。



毒牙を伸ばす

「キミ、いいね」

 

そこにはニコリと笑う悪魔がいて。

逆光で顔が見えない小柄なそのウマは笑顔のままに───アグネスタキオンに手を伸ばしてくる。

 

「よろしくね、タキオンくん」

 

 

それから、アグネスタキオンをトレセン学園にスカウトしたウマ-シルバーバレットはいとも簡単にタキオンが求めるものを用意してみせた。

それはさしものタキオンも思わず動揺する程度には、タキオンがずっと求めていた『速さ』の到達方法の一助を与えられて。

 

「───ああ! ああ! 素晴らしい、素晴らしいよ!」

「そうだろうとも。キミの才覚は凄まじい。だがただ一介の学生にはこんなことできないわけだ」

「ああ! ああ! その通りだとも!」

「この部屋とこの器具があれば……いや、これはもう言うまい」

 

アグネスタキオンは狂喜乱舞する。

夢に見た速さ、追い求めて止まなかった速さがいずれ手に入るのだ。

 

「この実験設備は自由に使うといい」

「……いいのかい?」

「構わないさ。対価は既に支払ってもらっている」

「…それはありがたいねぇ」

 

……少し気がかりなのはこのシルバーバレットのいう「対価」の全貌がよく分からないという事実。

だがアグネスタキオンにはそんなことはどうでもいい。

その時のアグネスタキオンはただ、目の前に置かれたプレゼントに喜ぶ子どものように…。

 

 

「…お前、ついにはガキにも手を出しやがったのか」

「いやいや、先行投資と言ってほしいな」

「……」

「…キミの子どもだからね、すごく優秀だよサンデー」

 

ニコリと笑うと苦虫を噛み潰したような顔をされるのにシルバーバレットは不思議そうにする。

シルバーバレットは未だ疾さの徒である。

自身を超える疾さが現れるのを、夢見てやまないロマンチストである。

…普段はそれを、巧妙に隠しているだけで。

 

「そうそう、サンデー。キミにも感謝しているんだ」

「……なんだよ突然」

「キミが先行投資の大事さを教えてくれただろう? 僕一人では土台無理だったからね」

「…………」

「……さあ! これで目処が立った!」

 

バン、と机に出した書類に嬉々としてシルバーバレットを横目にして……サンデーサイレンスは小さくつぶやく。

 

「…………先行投資ねえ……?」

 

───あれは、どちらかというと。

 

「……残酷だな、お前は」

 

そう呟きながらもサンデーサイレンスは慣れたようにシルバーバレットの隣に座る。

適当に茶菓子をつまみながらシルバーバレットのやることが終わるのを待つのだった。

 

 

「ああ、これから楽しくなりそうだ」





…どうなることやら。
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