目を光らせて、待っている。
「キミ、いいね」
そこにはニコリと笑う悪魔がいて。
逆光で顔が見えない小柄なそのウマは笑顔のままに───アグネスタキオンに手を伸ばしてくる。
「よろしくね、タキオンくん」
*
それから、アグネスタキオンをトレセン学園にスカウトしたウマ-シルバーバレットはいとも簡単にタキオンが求めるものを用意してみせた。
それはさしものタキオンも思わず動揺する程度には、タキオンがずっと求めていた『速さ』の到達方法の一助を与えられて。
「───ああ! ああ! 素晴らしい、素晴らしいよ!」
「そうだろうとも。キミの才覚は凄まじい。だがただ一介の学生にはこんなことできないわけだ」
「ああ! ああ! その通りだとも!」
「この部屋とこの器具があれば……いや、これはもう言うまい」
アグネスタキオンは狂喜乱舞する。
夢に見た速さ、追い求めて止まなかった速さがいずれ手に入るのだ。
「この実験設備は自由に使うといい」
「……いいのかい?」
「構わないさ。対価は既に支払ってもらっている」
「…それはありがたいねぇ」
……少し気がかりなのはこのシルバーバレットのいう「対価」の全貌がよく分からないという事実。
だがアグネスタキオンにはそんなことはどうでもいい。
その時のアグネスタキオンはただ、目の前に置かれたプレゼントに喜ぶ子どものように…。
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「…お前、ついにはガキにも手を出しやがったのか」
「いやいや、先行投資と言ってほしいな」
「……」
「…キミの子どもだからね、すごく優秀だよサンデー」
ニコリと笑うと苦虫を噛み潰したような顔をされるのにシルバーバレットは不思議そうにする。
シルバーバレットは未だ疾さの徒である。
自身を超える疾さが現れるのを、夢見てやまないロマンチストである。
…普段はそれを、巧妙に隠しているだけで。
「そうそう、サンデー。キミにも感謝しているんだ」
「……なんだよ突然」
「キミが先行投資の大事さを教えてくれただろう? 僕一人では土台無理だったからね」
「…………」
「……さあ! これで目処が立った!」
バン、と机に出した書類に嬉々としてシルバーバレットを横目にして……サンデーサイレンスは小さくつぶやく。
「…………先行投資ねえ……?」
───あれは、どちらかというと。
「……残酷だな、お前は」
そう呟きながらもサンデーサイレンスは慣れたようにシルバーバレットの隣に座る。
適当に茶菓子をつまみながらシルバーバレットのやることが終わるのを待つのだった。
「ああ、これから楽しくなりそうだ」
…どうなることやら。