さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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それが正しいから。



じゃあね

シンボリルドルフにとって、その友人は自分の隣にいるべき存在だった。

トレーナーとはまた別種の、自分の半身と言っていい。

二人で一人の、そんな存在だった。

なのに当人は違うと言う。

皇帝の隣を歩くのは自分ではないという。

シンボリルドルフは懇願するように呟いた。

 

「お願いだ。お願いだから…」

───自分とキミは進む道が違う。

 

一言だった。

それが友人の答えだった。

 

「……なんで? なんでそんなこと言うんだ? なんで、キミは」

 

もう戻れないのか、と呟くシンボリルドルフに友人は言った。

 

───本音が言えるようになったらもう大丈夫だね。

「……どういうことだ?」

 

ルドルフが友人の顔を見ると、友人は朗らかに笑った。

 

───ずっと傍にはいれないけど。困ることがあったら頼ってね。

「……ありがとう」

 

シンボリルドルフはその言葉ですべてを悟った。

もう友人は自分の言葉を聞いてくれないと。

自分の隣にいてくれないと。

そしてもう自分は友人を引き留められないと。

 

「キミの……いや、キミの夢が叶うことを祈っている」

 

シンボリルドルフの言葉に友人は頷いた。

 

───うん、ありがとう。ルドルフも元気でね。

 

 

「おかえりー」

 

そう自分を出迎えたひとつ上のきょうだいに彼女はぎゅうと抱きついた。

彼女よりもずっと小さな体はブレずに彼女を抱きしめ返す。

 

「わ、どうしたの」

「…………今日だけ……」

 

トントンと背中を叩かれる。

 

「明日になったら頑張るから……もう少しだけこのままで……」

 

その言葉が何を意味するのか理解した姉は妹の体を抱きしめ返したまま背中と頭を撫でた。

 

昨日から降り続けた雨は今日になっても未だやまず、しとしとという音と共にその勢いを増していた。

そんな雨の音を聞きながら彼女は窓の外をぼんやりと眺めていた。

 

「…………」

 

もう何度思い出したか分からない顔は今もまぶたの裏に、脳裏に。

思い出そうしなくても思い出すことが出来るぐらいに。

今では当たり前のように呼べる名前も、少し前までは当たり前ではなかった。

「惜敗の反逆者」と呼ばれ続けることが歯がゆくて、もどかしくて。

誰もが私を見てくれるというのにそのどれもが正解ではないと頭の中で叫ぶもう一人の自分がいた。

だから。

そう、だからこれは彼女なりの答えだった。

もう間違えないと決めた答えだった。

彼女はスマホを取り出してある人にメッセージを送ると電源を落とした。

 

「なにやってるの?」

「知り合いにメール送ってただけ」

「そう?…そろそろご飯だよ」

「うん、分かった」

 





…きっと。
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