さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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今日も今日とて。



空っぽ

アイツは自他ともに認める「【皇帝】に一番近いヤツ」ではあったがその瞳は茫洋で。

一番近くにいるシンボリルドルフをも実はあまり見ていないんじゃないかと思うぐらいに何もかもが淡白で。

 

「おはよう。今日も元気そうだな」

 

だから【皇帝】はあそこまで積極的に関わりに行くのだなと認識してしまうほどに。

 

「……」

 

アイツには何の興味関心もない。

いつの間にかそこにいて、いつの間にかそこにいない。

いてもいなくても同じだと、立ち姿から周りに示しているような。

…そんなこと、

 

(そんなことあるはずないだろう!)

 

なら、お前に焦がれてやまない自分たちはどうなる。

お前に焼かれた自分たちはどうなる。

自分たちはお前に、███いるのに。

 

 

「姉さん」

「やあ、可愛い可愛い僕の妹」

 

ぎゅうと抱きついてきた小柄なきょうだいに彼女は表情をほころばせる。

基本鉄面皮な彼女だ。

ここが第三者の多い場所ならきっと二度見超えた何度見でもされただろう、たぶん。

彼女にとっての『大切』は、いつだって家族だった。

最近はそれにトレーナーも入ってきたけれど。

とはいえ、そこから分かる通り、彼女のテリトリーは狭い。

狭い、というか、ファミリーコンプレックス略してファミコンであるからして。

そんな彼女のきょうだいは、腕の中に閉じ込めておけば囲ってしまえるぐらい小さくて可愛くて。

だから自分でも可愛いものが好きな傾向にあると理解している彼女は当然のようにきょうだいを可愛がっている。

 

「久しぶりだね」

「うん!姉さん、最近全然顔見せてくれないから」

「それはごめん。僕も色々と忙しかったから」

 

そう誤魔化すように言われてから、彼女は内心で少し笑う。

 

(……いや、本当に全然会えなかったんだけど)

 

年齢も年子だから、会おうと思えば休み時間にクラスに行って会えそうなものなのに。

授業が被った日だって一度も見かけなかった。

気になって軽く探してみたこともあったけれど、彼女はそれすらも見つからなくて。

まあ……学年が違うし、会おうとしなければそこまで簡単に遭遇するものでもないかと自分を納得させて。

 

(でも)

 

そんなのは嘘だったと彼女は知っている。

 

「姉さん?」

「ん、ああごめん。今日のご飯のこと考えてた」

 

それでどうしたの?と不思議そうに見上げてくるきょうだいに、何でもないよと笑ってみせる。

……自分のきょうだいは可愛いから。

嗚呼、これまでは。

 

(自分たちだけの、姉さんだったのに)

 

「わわわっ、わわわわっ!お姉ちゃん潰れちゃうよお!」





たったそれだけが、大切なの。
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