さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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当人としては善意のつもり。



期待してよ

「好きに生きていいよ」

 

そう言ったのは己が『仕事』をするようになって、その大変さが身に染みるようになったからだった。

そして知り合いから子どもに関してのいろいろな相談やらを受けるによって、現役時代自分が理解できていなかったあれこれをようやっと理解することになって。

 

「無理にトゥインクルシリーズで走らなくてもいい。やりたいことをやりなさい。僕も援助するから」

 

と、そう言ってから数日後。

 

「トゥインクルシリーズで走ってみたい」

 

という相談を受けたのだ。

 

「好きに生きていいって言ったけど……本当にそれでいいの? 別に走らなくたっていいんだよ?」

「うん。走るよ」

 

その目は真剣だった。

だからそれ以上言うことはなかった。

ただ、『走る』と言っても勝てるかどうかは、負けることの方が多い。

夢破れる者が多いわけで、決して明るい世界ではなかった。

それでもトゥインクルシリーズを走るのは、我が子なりの夢や目標があるからなのだろう。

 

「好きにしなさい」

 

とだけ伝えた。

そんな我が子が、いま目の前で泣いているのだ。

 

「なんでそんなこと言うの!?」

「…『仕事』は大変なんだよ?」

「うん。知ってる」

「……それでもやるの?」

「だって…」

「?」

「お父さんに、期待されたいもの」

「……そうかい」

「うん!」

「……じゃあ、好きにしなさい。でもこれだけは覚えておきなさい」

「なに?」

「『仕事』は確かに大変だけど、それ以上に……『夢』を叶えるのが大変なんだ」

「……え?」

「『夢』を叶えても、その次がある。そのまた次もある。そしてそれを叶えたとしても、さらにその先にあるものがある。だから……」

「……?」

「いや…言いすぎるのも良くないか」

「??」

「まあ、頑張ってみなさい」

「……うん!」

 

 

「お前…残酷だなあ」

「なにが?」

「ハッキリ言う時は言えよ」

「…そうかもね」

「『夢』を叶えるのが大変、か」

「うん。頑張っても叶わないことの方が多いから」

「……まあな。でも、お前はそれをやり通したわけだ」

「そうだね」

「で? なんでまた急にそんな話をしたんだ?」

「いや……ちょっとね……」

 

どこかの誰かから言われたわけだ。

お前のやっていることは残酷だと。

 

「残酷か……確かにそうかもな」

「……え?」

「『夢』を叶えるのが大変なら、叶えてもその先がある。そしてそれすらも叶えたとしてもさらに先があるんだろ? そりゃまあ、残酷だよな」

「……」

「でもよ。俺たちはその残酷さから逃げられねぇ」

「……」

()()()()()()からな」

「…まぁ、ね」





僕:
シルバーバレット。
周りの話を聞いて、理解した風。
けれど理解した風なので、言われた子どもたちからしてみれば「期待してない」って宣告と同じことだとは気づいていない。
幸せに生きて欲しいだけなんだけどね。
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