生存IF軸の話。
僕-シルバマスタピースとシルバーバレットは年老いてもずっと一緒だった。
馬房も隣、放牧の場所も隣。
若い頃は柵越しに併走だってしたね。
それにあの頃からは考えようもないくらい子どもや孫たちを見送ったし。
『バレット?』
その日の彼は柵のそばでぺったりと座っていた。
近づくほどに分かる年老いた体。
元から小さかった体はもっと小さくなって、骨が浮き出ている。
毛並みだって前と比べるとボヤけたようで。
…まぁ、それは僕も同じなのだけど。
『ぴー、す』
『…うん』
『なんか、ねむい』
『うん』
彼の体と引っ付くようにして座り込み、覗き込んだ目は今にも光が消えそうだ。
『ねたら、だめなんだ』
『どうして?』
『わから、ない…』
かすれた声が、ゆっくりと鼓膜を打つ。
『…なぁ、』
『なぁに?』
『………ね』
『え?』
『ぼくのこと、おいて、いかないよね』
今にも消えそうな声だった。
彼の、シルバーバレットの言葉は遠い昔に戻ったよう。
これは遠い昔の、子どもの頃の彼の話し方だ。
『ひとりに、しないよね』
『こわい』
『ねたく、ないのに、ねむいんだ』
『いやだ、ひとりは、いやだ…』
『たすけて、ぼーい』
涙声の彼が懇願する。
それに僕は、
『うん、おいていかないよ』
『ほんと?』
『やくそく、したでしょう?』
『…うん』
あの日の約束を今でも覚えてるよ。
キミが言ったんでしょう?─────「もう、僕を置いていかないで」ってさ。
はじまりの約束は違えてしまった。
けど今度こそ守るよ。
『ぼくがいるならだいじょうぶだろ?』
『う、ん』
『だからおやすみ』
『…ん』
『ぼくも、いっしょに、ねむるから、さ』
安心しきった顔で彼が目を閉じる。
僕もそれに倣うように目を閉じる。
触れているところから感じる彼の熱が少しずつ冷めていく。
それを惜しいと思いながらも、一緒にいけてよかったと思う。
『…ねぇ、ちび』
子どもの頃のキミの名前を呼んだ。
けれど応えはない。
『うまれかわっても、いっしょだよ』
あぁ、早く追いかけなくちゃ。
あの日から僕はあの子を放っておけないのだから。
チビは放っておいたらどんな馬の骨を引っ掛けるか分からない子だから、僕がそばにいて守ってあげなくちゃ。
(…あぁ、)
ねむい、なぁ。
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訃報:シルバーバレット、シルバマスタピース
悲しいお知らせです。
本日×日の午後5時半頃、シルバーバレットとシルバマスタピースが放牧地で寄り添うように亡くなっていました。
周りに荒れた様子はなく、二頭とも眠るように旅立ったと考えられ、獣医師の方の診断でも老衰による心不全だということです。
二頭ともここ数年年齢による衰えが見られ、いつ何があってもおかしくないと覚悟していましたが、前日まで二頭仲良く過ごしていたところを見ていた身としては未だに二頭の死を信じられないばかりです。
享年3×歳でした。
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僕&マス太:
『我ら天に誓う、我ら生まれた日は違えども、死す時は同じ日同じ時を願わん』をした(物理)。
自他ともに認める親友で看取った看取られた、先に逝った後追いしたの関係性。
実のところマス太産駒の最高傑作は母父シルバーバレットだったりする。マイルというマイルのことごとくを蹂躙したらしい。