人馬共に逆行軸…だが?
それはあまりにも熱狂的すぎた。
レースの世界にいるのなら、知らぬ者はいるはずがないと言わんばかりに報道された名前。
勝ち星を重ねる毎に大きなうねりがごとくすべてをならしていくソレは───。
「……」
あの日、
スポーツマンシップの風上にもおけない。
だが、そうしなければならなかった。
どうにかして、ソレを止めねばならなかった。
己が『勝ちたい』という渇望を捨ててまで。
ソレを止めねばならないと。
誰もがそう感じていた。
「……」
誰かが呟いた。
その呟きは、まるで波紋のように広がっていき、そして、大きなざわめきに変わっていく。
「───────……ッ!」
「あの……あの───────が帰ってきたのか!?」
するりとソレが簡単にバ群を抜け出して行ったと同時に、そうざわめきが広がっていくのを、俺はただ聞いていた。
それから。
それから、一年。
そこに、ソレはいなかった。
もう、この地には用はないと言わんばかりに。
別の地に赴き、相も変わらず蹂躙しているという。
(……ああ、)
自分たちには、顧みられる価値も無かったのかと。
怒るも既に通り越した絶望が身に染みる。
なにせ、隔絶していると理解しているのだ。
───
あの血筋の例に漏れず、すべてを焼き尽くす極光だ。
後ろなぞ振り向かず、ただ導になる極光だ。
何もかもが違う。
今もなお、興奮冷めやらぬ地の果てで、輝く巨星。
その存在を知った人々はやがて気付く。
いや、気付かされるのだ。
ああ、アレにはどれほど近づこうとも永遠に手は届かないのだと。
その威光は微塵も衰えることがない。
時折こうして現れ蹂躙していくが故に、
そんなバケモノが、この地を去って。
(……ああ)
私たちでは、勝負する価値すらないということかと。
……かつて、誰もが渇望したモノが、己らでは到底かなわない存在になったのだと。
そう絶望せざるを得なかったのだ。
だが、まあ、それはそれとして。
(……見返してやる)
ならばこちらから挑発してやればいいと、なんて。
・
・
・
「日本のウマは、強いからな」
誰からも望まれる存在は、ひとりそうごちる。
「俺なんて、ただ運が良かっただけだよ。アイツらと比べて勝てるなんて、1ミリも」
その目には、誰も映らない。
ただ芒洋と、遠く、遠くにある"星"を映すばかり。
「……俺は、あの"星"を目指してようやっと、なんだ」
だから。
「俺よりも、アイツらの方が強いよ」
どれだけ求めても見向きもされないのかわいそ…。