さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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知られないように。



知らないこと

「おはようザンさん」

 

あれほどギッチリと抱き締めて眠っていたというのにどうやって抜け出したというのか。

「朝ごはんできたよ」と朗らかに告げる姿は多くの周囲から恐れられる狂気の姿とはかけ離れたものだった。

 

「ありがとう、すぐに行く」

 

ベッドから降りて衣服を整えていると、彼は「はやくきてね〜」と手を振っていく。

 

「……朝からよくこんなに食べれるねえ」

「お前が食べなさすぎるんだよ」

「そう?普通だよ」

 

朝食は、ご飯と味噌汁。

そしてサラダに卵焼き。

…とはいってもウマ向けの量なのだが。

 

「美味しい」

「ん〜?ああ、うん。簡単なものしか作ってないけど美味しいって言ってくれるなら作ったかいがあったね」

「それでもすごいよ」

「……ありがとう、ザンさん。あ!今日はね、お買い物に行くから付き合って!」

「買い物?」

「うん!ちょっと買いたいものがあるんだ〜!」

「わかった」

 

朝食を終えて身支度を整えて外に出る。

普通にスーパーかとも思ったが入り組んだ路地裏に入っていく姿を見て、すぐに違うのだなと理解した。

そしてひとつの古びた店にたどり着く。

 

「あ!ここだよ!」

 

そこは裏路地にあるにしては、小さくとも明るく清潔感のある場所だった。

中には様々な…なんか色々。

 

「お久しぶり〜。頼んでたものある?」

 

ぐるりと店の中を見ている内にいるものを受け取ったらしいソイツは俺の手を引いて「次のお店行くよ〜」と。

次に訪れたのは喫茶店だった。

 

「あ!丁度良いや」

 

店の中に入り、店員に何かを言ったかと思えばすぐに席に座らされた…と思ったら俺には珈琲を持ってこられてアイツは店長と何か話をしていて…。

 

 

色々と情報やいるものを仕入れとかないと危ないしね、昨今は。

いやまあウチの一族はいつも危険だけれど。

 

「うんうん、いるもの全部回収できてよかった〜」

 

うんうんと頷きながら、今日受け取ったあれそれを組み合わせていく。

 

「まぁ…どうにかなりそうか」

 

とはいえ。

 

「これからちょっとの間はザンさんのところに行けなくなるなあ」

 

唯一の友だちに会えないのは寂しいけど、巻き込んでしまうことの方が嫌だ。

だから、今のうちに準備を。

……何処に行くのかは伝えてない。

けれどもぼくがいなくなったらきっと、ザンさんは探してくるんだろうなあ。

 

「やさしい人だよね、本当に」

 

普通なら放っておくというのに。

こんなぼくのことを気にかけてくれる。

 

「また会おうね、ザンさん」

 

ま、すぐ帰ってくるけどさ。

 

「さーて、頑張ろっと」





大事だから、秘密裏に。
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