さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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年月が経ると基本的に理想とかって歪んだりしますよね。
はじめの想定と根本から違う方に行ったりすることもあると思うんだ。


銀の祈りが言うことには

僕はシルバープレアー。どこにでもいる男だ。

まぁ父親が巷で『銀色の一族』と言われている家を興した人だったり、同期が三冠馬だったりするのは設定として濃くない?と自分でも思うけど。

 

そんな華々しい彼らとは違い、僕はというと連対こそ外したことはないがG1だけは手が届かない、残念な男。

ここ一番を期待されながら勝てない、そんな男。

 

話は変わるけど、『銀色の一族』ってヤツは怪我で引退する子たちが多い一族なんだ。

僕も本気でレースに出ているけれど、僕以外のみんなは僕よりもレースにかける熱量が段違いで。

…彼ら・彼女らは目標を定めてしまったが最後、その目標を達成するために自らの肉体のリミッターを軽々と外してしまう。

そして壊れる。壊れてしまって、笑うのだ。

「よかった」と、「勝ててよかった」と心底嬉しそうに。

 

前に仲良くなった、夢への旅路という意味を持つ名前の子と話した時言われたことがある。

 

『───アンタの家、狂ってるよ』

 

狂っている。

家に対して、家族に対してそう言われたのに僕は怒らなかった。

逆に納得してしまったのだ。

狂っている。そう、狂っている。

 

みんながみんな"あの人"に囚われている。

僕はずっと幼い頃から、周りに言われ続けていた。

目標に向かって死んでも手を伸ばさないことを、おかしいと。

…僕はずっと走っていたい、そんなことで死にたくない、だけなのにみんな、おかしいって。

でも夢への旅路はこう言う。

 

『銀色の一族ってヤツはみんな嫌いだが、アンタだけは別だ。

…怪我、すんなよ』

 

彼の言葉が僕にとっての救いになった。

 

 

夢への旅路の弟の付き添いとして凱旋門賞へと出走した。

夢みたいだと思いつつ、ゲートに入る。

そして、

 

(…あ、)

 

先頭を走る僕の前には"あの人"がいた。

"あの人"の姿を見ながら、周りから聞いていたことは本当だったんだと場違いにも考える。

 

『銀色の一族が凱旋門賞に出走すると██████の幻影を見る』

 

幼い頃から聞かされ続けていた話だ。

おとぎ話のような存在だったものが自分の眼前にいるのに柄にもなく心が踊ってしまう。

 

"あの人"は速かった。

心の向くままに食らいつくのは早計と、僕は少し離れたところから"あの人"を眺める。

 

"あの人"はとても美しい。

楽しげに走っている姿に見惚れながら走る。

 

追って追って追って、前をいく"あの人"に倣うようにスパートをかける。

ずっとこのままレースが続いて欲しいと思ったけど結局終わりは来て、

 

『よくやった』

 

ゴール板を越える瞬間、垣間見た"あの人"────シルバーバレットが僕を見てゆるりと口元を緩めていた、ような気がした。




銀の祈り:
シルバープレアー。逃げ馬。
某英雄世代最強のシルバーコレクター。
生涯完全連対を果たした怪物。
『銀色の一族』の中では異端の存在らしい。
夢への旅路とは親友の関係。
英雄は打ち倒せなかったが金色の暴君は打ち倒せた。

夢への旅路:
銀の祈りの親友。
現役時代はレースで会うたびに銀の祈りへ寄っていくことが多々あった。
他の『銀色の一族』は嫌いだが銀の祈りだけは好き。

英雄&金色の暴君:
銀の祈りと関わりのある三冠馬ども。
2005有馬で心の叫びに差し切られながらも2着に粘った銀の祈りに「キミが見る背中はすべからく僕のハズだろ?」と思っている英雄と実兄の親友であり、自分の目の前で悠々と門をくぐり抜けた銀の祈りにちょっとばかしあれやこれや(自分とは違い主戦騎手と一緒に来れてるなど)を抱いている金色の暴君。

…なんでこの血統で凱旋門賞獲るヤツって三冠馬と縁があるんだろうな?(すっとぼけ)
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