忘れられなかった。
忘れられる、わけなかった。
地方から移籍してくる子がいるらしい。
中々ないことに学園内は持ち切りで、やんややんやと騒ぎ立てていた。
「すごいねえ」
だが僕にはそんなの関係ない。
同学年とかだったらまた話も違っただろうけどさあ。
「まあ、僕には関係ないし」
「でも気になるでしょ?」
「……別に。だって僕、その子のこと知らないから」
「そう? でもほら、妹ちゃんと同じ学年の人だよ。もしかしたら同室になるかもね」
「へえ……」
それは初耳だ。
この学園には寮がある。
たしかに僕の妹はいま一人部屋だけれども。
そんな話をしたのち、
「…みつけた」
「ん?」
「走ろう」
「んぇ?」
「『約束』、したろう?」
見知らぬ子にそう言って手を握られた。
困惑したけれど、ここまで真剣なら…もしかして?
「あ、ああ。うん?」
「じゃあ行こう」
そのまま手を引かれた。
彼女は僕よりも背が高い。
そのせいだろうか、歩幅も僕よりも大きく、少し駆け足になる。
「ちょ、ちょっとまって!」
「……なんだ?」
そんな僕の呼びかけに彼女は不満そうに振り返る。
……あれ? いや、でもこの子どこかで見たような……。
あ、そうだ。
ルドルフに見せてもらった資料。
そこにはたしか、彼女の写真が貼ってあった。
「ひょっとしてキミがオグリキャップ?」
「そうだ」
なんだ……すごいな。
見た目の印象と同じくキリッとした感じ。
…にしても初対面のはずでは?
『約束』したとは言っているけど、まるで僕のことを知っているような口ぶりじゃないか。
「……驚いたか?」
「え、あ、うん。その……急に『約束』だとか言い出すし」
「ふふ」
なにがおかしいのか。
いや……ううん?
ああそっか!
なるほど、わかったぞ!
この娘の言う『約束』はルドルフに頼まれてたアレかあ。
……でもなんでそれを知っているんだ?
「ねえオグリキャップさん」
「オグリでいい」
「じゃあオグリくん」
じい、とオグリくんが見つめてくる。
妙に居心地が悪いな。
……何も言わず見つめられるとこうも緊張するのか。
「きみって、その……」
「む?」
……と、言ったものの。
なんだか下世話なことを言おうとしてるような気がしなくもない。
いやでもルドルフとした『約束』を知ってるなら……いやでもなあ。
「なんだ?」
「……ううん、ごめん。なんでもない」
いやまあいいか。
そんな考えは頭の片隅に追いやっておくことにした。
だって、いま大事なのはそれじゃないからね!
(さすが、ルドルフと友だちみたいなのもあって強いなあ)
これは中央に呼ぶ強さだわ〜。
銀弾のいう"ルドルフに頼まれてたアレ"はなんかちょちょっと併走して実力見てって感じの頼みです。
まあまだこの頃は無名に近い存在だからね、銀弾。
皇帝が直々に併走なんてできないからね仕方ないね。