魂から約束されてるからね。
実のところ、どうでもよかった。
ぼっさくれた髪のままでいれば面倒なのが近寄ってこないし、可愛らしい格好をすればバカが寄ってきて不愉快な思いをする。
だから日常生活なんて煩わしいだけだし、できる事なら引きこもってやりたいぐらいだった。
……ああそうだ。
けど最近になって、そんな私でも友だちと呼べそうな相手ができたんだ。
愛想のない私に声をかけてくる物好きはヤツしかいない。
『ヒカルイマイ』というその男はここいらの人間ではなく、どこか遠くから来たそうで。
で、何を思ったのか、私に惚れたのだと言ってきた。
もちろん断ったさ。
だってそうだろう?
私は可愛げのない女だぞ。
そんな女に惚れたなんて、そいつの趣味はどうかしている。
……ああでも、一つだけ感謝すべき事があったか。
そいつは私を見ても変な顔をしなかったし、この眼を褒めてくれたんだ。
今までそんな人間はいなかったから、少し驚いたっけ。
……まあ結局その告白も断ったのだが、ヤツはそれからもずっと私に話しかけてきた。
何が楽しいのかは知らないけど、私がひとりであればいつも話しかけてくる。
やれ今日の天気はどうだとか。
やれ駅前のスーパーが安いだとか。
やれ夕食はどうする気だとか。
……ほんと、変なヤツだ。
ま、そんな生活も悪くないと思っている自分がいるあたり、私もそうとう毒されていたのだろうさ。
「なァ、」
「あ゛?」
「勘違い、してもいいのか…?」
「なにが」
変わらぬ会話デッキにそこまで言うなら飯食いに来いよと家に引っ張っていくことが珍しくなくなった頃。
夕食終わりに食器を洗っていた私に、ヤツはそんなことを言ってきた。
「だからァ、その……アレだ」
「だからなに」
「……あ゛ー! もうッ! 分かンねェかなこの魔性っ!」
「はあ? いきなり何なんだアンタ。ついに頭おかしくなったか?」
「ちげェよバカ! ああクソ、これじゃあオレだけが……!」
何が言いたいのかさっぱりだが、「ええい!」との声と共に唇を奪われ、ようやく理解する。
「ああ、そういう……」
「……そうだよ。ずっと前から好きだったンだよ」
「そうかい。悪いけど私、アンタのこと恋愛対象として見たことないから」
「知ってるよ! ああチクショウ、なんでこうなっちまうかなあ……!」
……いや、まあなあ。
確かに私もこいつのことは嫌いじゃないし?
でもほら、今までそんな対象で見てこなかったわけだしさ。
いやほんと申し訳ないとは思ってるよ?
けどさ、いきなり告白されても困るっていうかさあ……。
そんなことを考えているとヤツは「帰る」と言い出し、玄関へと歩いていく。
「おい、今から帰るのか?」
「あァ」
「……泊まってけばいいじゃん。もう遅いし」
「バカ言うな。これ以上いたら何するか自分でも分かんねェんだよ」
「……ふーん」
……まいったな。
もう少しだけ話していたかったんだけどなあ……。
ああいや! 違うぞ!?
変な意味じゃなくてだな……!
「……あのよ」
「ん?」
「……その、なんだ……」
いやに歯切れが悪いヤツに首を傾げると、
「なァ、もっかいキスしていいか…?」
「寝言は寝て言え」
落とした方と落とされた方。
でもまだツンデレみが強いんだ。