さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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似たもの同士、もしくは。



比翼連理

自分の熱意が、他人と違うのを知っていた。

自分の熱意を少しでも、本気で注いでしまったら選手が壊れてしまうことを、知っていた。

だから、そこそこに注いでいた。

そこそこでも、進路がどうにかなる程度にまでは持っていけていた。

だが。

 

(この熱意を、注げる相手なんているんだろうか)

 

少しずつしか注がないために、許容量が満杯になってきて。

自分の熱意を、受け止めてくれる相手がいないまま。

燃え尽きることもできずに、日々が過ぎていって。

「また」と去る選手たちを、見送ることしかできなかった。

 

「ふはー……」

 

そんな思い出が走馬灯のように駆け抜けていって。

懐かしい夢から覚めた白峰透は、ベッドの上で息を吐いた。

 

(……そうだ、あのころだ)

 

全力を出すと壊れてしまうから、少しずつしか出せなかったころ。

 

(僕は、そんな世界が大嫌いで)

 

そんな世界で、自分を救ってくれる誰かを待っていた。

待っていて、

 

「おはようございます、先生」

 

ひょいっと見慣れた愛おしい顔が僕に声をかける。

「朝ごはんできてますよ」と、彼女は言った。

「ん……ありがとう」と僕は答える。

そして、その愛おしい顔を見るたびに、思うのだ。

『ああ、この子が僕の運命なんだ』と。

 

(だから)

 

だから白峰透は、今日も全力を出す。

自分の持てる全てを注ぎ込み、全力で駆け抜けようとするのだ。

「先生?どうかしましたか?」と、不思議そうにする彼女に対して、彼は「今日も美味しそうだね」と告げる。

 

「お弁当も用意してますから忘れないでくださいね」

「うん」

「それと、」

「?」

「…いや、なんでもないです」

 

白峰透にとって、彼女-妻ははじめて自分が熱意を、めいいっぱい注げた相手だった。

いや逆に、もっと寄越せと、スッカラカンになるまで搾り取られそうなほどの。

だから彼は思ったのだ。

『ああ、この子が僕の運命なのだ』と。

そして同時にこうも思う。

 

(でも、僕はこの運命を手放す気はさらさらない)

 

そんな彼の思いに気づかず、妻は「変な先生」と笑いながら、朝の準備を進めるのだった。

 

 

彼女-シルバーバレットには夢があった。

それは『自分の全力を受け止めてくれて』『なおかつ壊れない相手』と共に駆け抜けること。

そんな存在に出会いたいと、しかし出会えるわけが無いと、あきらめかけたときに。

 

『ねえキミ!』

 

と、声をかけてくれたのが白峰透だった。

だからシルバーバレットは、彼に自分を預けて。

 

(……でも)

「ん?どうした?」

「……いえ」

 

今はその夢を、少し違う形で叶えられていることを不思議に感じて。

そして同時に思うのだ。

 

(……ああ)

 

『この運命を手放す気はさらさらない』と。

 





きっと僕ら運命!
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