似たもの同士、もしくは。
自分の熱意が、他人と違うのを知っていた。
自分の熱意を少しでも、本気で注いでしまったら選手が壊れてしまうことを、知っていた。
だから、そこそこに注いでいた。
そこそこでも、進路がどうにかなる程度にまでは持っていけていた。
だが。
(この熱意を、注げる相手なんているんだろうか)
少しずつしか注がないために、許容量が満杯になってきて。
自分の熱意を、受け止めてくれる相手がいないまま。
燃え尽きることもできずに、日々が過ぎていって。
「また」と去る選手たちを、見送ることしかできなかった。
「ふはー……」
そんな思い出が走馬灯のように駆け抜けていって。
懐かしい夢から覚めた白峰透は、ベッドの上で息を吐いた。
(……そうだ、あのころだ)
全力を出すと壊れてしまうから、少しずつしか出せなかったころ。
(僕は、そんな世界が大嫌いで)
そんな世界で、自分を救ってくれる誰かを待っていた。
待っていて、
「おはようございます、先生」
ひょいっと見慣れた愛おしい顔が僕に声をかける。
「朝ごはんできてますよ」と、彼女は言った。
「ん……ありがとう」と僕は答える。
そして、その愛おしい顔を見るたびに、思うのだ。
『ああ、この子が僕の運命なんだ』と。
(だから)
だから白峰透は、今日も全力を出す。
自分の持てる全てを注ぎ込み、全力で駆け抜けようとするのだ。
「先生?どうかしましたか?」と、不思議そうにする彼女に対して、彼は「今日も美味しそうだね」と告げる。
「お弁当も用意してますから忘れないでくださいね」
「うん」
「それと、」
「?」
「…いや、なんでもないです」
白峰透にとって、彼女-妻ははじめて自分が熱意を、めいいっぱい注げた相手だった。
いや逆に、もっと寄越せと、スッカラカンになるまで搾り取られそうなほどの。
だから彼は思ったのだ。
『ああ、この子が僕の運命なのだ』と。
そして同時にこうも思う。
(でも、僕はこの運命を手放す気はさらさらない)
そんな彼の思いに気づかず、妻は「変な先生」と笑いながら、朝の準備を進めるのだった。
*
彼女-シルバーバレットには夢があった。
それは『自分の全力を受け止めてくれて』『なおかつ壊れない相手』と共に駆け抜けること。
そんな存在に出会いたいと、しかし出会えるわけが無いと、あきらめかけたときに。
『ねえキミ!』
と、声をかけてくれたのが白峰透だった。
だからシルバーバレットは、彼に自分を預けて。
(……でも)
「ん?どうした?」
「……いえ」
今はその夢を、少し違う形で叶えられていることを不思議に感じて。
そして同時に思うのだ。
(……ああ)
『この運命を手放す気はさらさらない』と。
きっと僕ら運命!