『運命』がいなかった軸。
グローリーゴアは孤独のままに引退した。
誰もその末脚からは逃れることが出来ず、そのままに覇道を極めた。
これを絶対王政と言わずしてなんというのかと言わんばかりに。
「……」
結果。
グローリーゴアは燃え尽きた。
寂れた田舎の邸宅でひとり、ぼんやりと日々を過ごすようになった。
そんなある日、
「今日から家政夫になりましたサンデースクラッパです」
何度も何度も断っているというのに性懲りもなく。
また新しく入ってきた世話人にこれみよがしに顔をしかめるも相手は何のその。
グローリーゴアの不機嫌ですという顔に一瞥もせず、自らの仕事を忠実にこなし始めた。
「……」
初めは、追い出そうとした。
何か理由をつけて、と。
しかし一向に出ていかないし、ヘマもしない世話人を見ているとだんだん馬鹿馬鹿しくなってしまい、やめてしまった。
それからグローリーゴアは少しだけ丸くなった。
そしてサンデースクラッパの作った食事が気に入ったので毎日作るように命じた。
するとサンデースクラッパは「はい」と一言だけ返してから色々と機材などを揃えていって。
代わり映えのない日々が続いていくうちにグローリーゴアもサンデースクラッパに心を開くようになっていった。
開くようになって、
「……!」
「……ぁ、バレちゃった」
ふと、サンデースクラッパがいないと気がついて。
家の外に出てみれば、とりあえず庭ということにしている広い原っぱにて───。
「なんで、」
「?」
「なんでその走りができてレースに出ていない!?」
実家の方に来ていた履歴書を見て、彼のこれまではとっくのとうに知っていた。
だけど、だけども。
(その走りなら無敗の三冠だって、グランドスラムだって…
あまりにも、もったいない。
そう思った。
グローリーゴアは確信していた。
「サンデースクラッパ!」
「……はい」
「キミなら!誰もが望む夢に手が届くかもしれない!」
「……」
「だから……!」
この手を取ってくれ!と。
そう言おうとして、言えなかったのは。
「僕は、一生レースに出ないと決めているから」
じいと、真剣な目に捩じ伏せられる。
「もう決めたことだから。二度と言わないで」
「……」
「僕は…走らないって決めたんだ」
彼はそう言った。
だがしかし、
「僕の前だけでなら、問題は無いだろう?」
「は?」
「レースには絶対出させない。スカウトにも見つけさせやしない」
「え、あ…?」
「キミの走りが見たい。僕が、個人的に」
「えぇ……」
拒絶をものともせず、グローリーゴアは一歩を踏み出す。
サンデースクラッパの前へと歩いていって。
そうして、問う。
「……キミの走りを見せてくれないか?」
「それは……」
「出来ないのかい?ここまで走ってみせたくせに」
「……それは……ダメだ!」
食い下がるグローリーゴアを突き放すように、サンデースクラッパもまた声を上げる。
こんな小さな男が抵抗しても押し切られるのが分かり切っているが故か、必死の形相ではあるが。
「ねぇ、いいでしょ?」
「…うっ」
まぁ、どう足掻いても現れるんですけどね。