さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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あんな産駒現れたら乗りたくなるのも仕方ないよね。



栄光は二人で

あんなもの見せられて、乗りたいと思わないのは騎手じゃない。

それが『シルバーチャンプ』という馬の走りを見た騎手連中の総意だった。

まるで弾丸のように全てを打ち抜ける脚と、操縦性の高さ。

気性面だって下された指示に完璧に従うあたり、やりたいと思ったことをやらせてくれる……そんな理想的な馬。

 

(乗ってみたい)

 

ようやっと現れた、オグリキャップの後継。

オグリキャップの能力を引き継ぎ、オグリキャップの能力だけじゃなく"あの馬"の能力まで引き継いでみせた。

 

「あの馬と、一緒に走りたい」

 

その欲求は日に日に高まり、やがてそれは『シルバーチャンプ』の騎手になりたいという叶いもしない夢になった。

だってもうシルバーチャンプには運命の相手がいて。

まるで比翼連理か、もしくは錠前と鍵のようにぴったりと寄り添い、噛み合っては互いを高め合う、そんな関係。

そんなひとりと一頭に……どうあがいても自分はなれないと知っているのに、それでもその馬に乗りたいと強く願う自分がいたから。

 

「シルバーチャンプ」

 

だから、その馬に乗るために。

 

「俺と一緒に走って欲しい」

 

もう届かない夢だと知りながら、そう願った。

『シルバーチャンプ』という馬がターフを去った日。

ならばと目を光らせた人間たちがいたことを、当人たちだけが知らないのだった。

 

 

白峰遥はあまり人付き合いをしない。

よく言えば職人気質で、悪く言えばコミュ障。

でも実力は確かだしストイックなので、信頼されているが。

 

「せんぱ〜い、今日も一人なんですかァ?」

「…ん」

 

友人らしい友人というか、まあそういうのは同じ厩舎所属の後輩-白山晴人ぐらいなもので。

周囲曰く生意気なところがあると言われているらしいが、遥にとっては可愛く、また得がたい後輩。

 

「今からの予定ってもう見ました?」

「……来た時に」

「ええ!?なら言ってくださいよ!」

「……見てるかと思ってたから」

 

と、いう感じに遥が唯一心を開く相手がこの白山で。

呆れながらも「ご飯ちゃんと食べてくださいね!?」と遥に指を指してくるのに「わかってるわかってる」とジェスチャーをすれば「ならいいんですけどォ!」と、それ以上は追及してこない。

そういう聡さというか、引き際を弁えているところに遥は好感を持っていた。

 

「……そういえば先輩」

「ん?」

 

だからふとした時に彼に話しかけられたりすると……なんだか変な気持ちになる自分がいたりするわけだが。

なんでだろうか?と考えてみるものの答えは出なくて。

 

(ま、いいか)

 

馬鹿げた考えがよぎる前に、小さく頭を振る。

とりあえずは、

 

「はやく食べ終わろう」





なので虎視眈々とその産駒を狙う皆さんなんだ。
そして大繁殖する銀王者産駒定期…。
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