さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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つづきのはじまり。



転換点

後年、その一族の名を確かなものにしたのは彼-ジョージシルバーだと言われているが。

 

「いやいや、オレよりも才能ある奴、下にたくさんいますから」

 

朗らかに彼は言う。

彼のいう下は一族に列なる皆のこと。

ジョージシルバーの自身の自己評価はただ、『ノリに乗った時と状況が噛み合っただけ』という。

だがそれは、特別な者が口にする謙遜にしか聞こえない。

『オレの親族って何だか自己評価が低いんですよね〜』とは、彼の言葉であるが。

 

「まだデビューもしてないのニ?」

「一番近くにいたが故ですよ」

 

彼がその異能を自覚した時がいつだったか、今となってはわからない。

ただ自覚したソレは、『思考を瞬時にできる』というもの。

一瞬。

その一瞬を瞬間的に。

自分ができるのだから、周りもできるはずだろうと、半ば本気で思っているところが…。

 

「…アナタは、天才デショウ?」

「まっさかぁ!大雨の中の無敵サマにはとてもとても」

 

確かに。

()()()()()、ジョージシルバーは鳴かず飛ばずだった。

重賞こそ勝っていたものの、そこまで注目されるものでもない。

ハッキリ言って埋もれていた、見向きもされなかった。

しかし、

 

『なんとなんと!最低人気の日本バがドバイワールドカップを…!』

 

あれは誰だと、一気に騒然となった。

なにせ王道も王道の先行策で、真っ向から世界を捩じ伏せてみせたのだ。

気づいた頃にはもう遅いと言わんばかりの横綱相撲は、観る者を釘付けにした。

その走りぶりに皆が熱狂した。

一気に現れた新星にレース界が沸き上がったのだ。

そうして。

 

「いやあ、世界旅行は楽しいもんだったよ」

 

ひとつ下の、可愛がっている親戚兼後輩-シルバーチャンプと合流する傍らアスコット金杯、ムーラン・ド・ロンシャン賞を勝ち、最後はBCターフを勝って引退して…。

 

「まあ、日本では一回もG1勝てなかったけど!」

 

朗らかに笑う。

周りからどんな感情を向けられているのか分からぬまま。

 

『ジョージシルバーを勝ち取るのはどの国か!』

 

そんな記事が世界中を走り抜けたのは何年前のことだったか。

もう、それすら思い出せない。

 

「立派ナ引退式だったと聞きマシたヨ」

「いやぁ、お恥ずかしい限りで」

 

あの華々しい活躍は今でも語り草になっている。

『日本トゥインクルシリーズ史に新たな歴史が刻まれた!』と。

 

「いやはや、まさか王族さまから有名な方まで引っ張りだこで取り合いされるとはね。困ったものだよ」

 

何とか説得して、持ち回りでそれぞれで暮らせるようになったのはよかったがね。

それはそれとして。

 

「これから親戚連中に会うんだ。だからこれで」





色んな意味でやべ〜奴なジョージシルバーくん。
父親はオサイ…ミルワカバさんで、母は銀弾の妹の内のひとり。
突然覚醒して世界を荒し回った。
それはそうとされた指示に瞬時に反応できる肉体+母方譲りのスペックでもんの凄い走りするもんだから乗り替わりの度に現地の騎手に惚れられて、馬産的にも全世界に取り合いとか…。
まああの血筋だしね、仕方ないね。

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