背中を見ちゃった話。
カシャーンと。
物が落ちた音に振り返れば、そこには目を見開いた親友──グローリーゴアがいた。
「いやん、えっち」
シャワーを浴びたあとだったので、からかうようにそう告げるも相手からの反応はなく、「?」と首を傾げていると、
「ひゃっ!?」
背中をなんともいえないタッチで触られるのに声を出す。
「な、なに?」
「い、いや、なんでも」
「なんでもないなら触るのやめてよ。くすぐったいでしょ!」
「……あ、ああ。ごめん……」
どこか上の空で謝罪するグローリーゴアに怪訝そうな顔をしながらも、その横を通り過ぎる。
(……変なの)
そんな感想を抱きながら、相手が先程落としたプラスチックのコップをいつもの場所に戻し、着替えるために自室へと戻るのだった。
*
「……まさかね」
先ほどの光景を思い出しながら呟き、ゆっくりと首を振る。
──あれはきっと見間違いだ。
目を閉じて振り払おうにも、脳裏に思い浮かぶのは先程見た鮮やかな極彩色。
いわゆる『
「
そう。
あの極彩色の色合いは、まるで──。
「……っ!」
そこで思考を中断させるグローリーゴア。
(やめよう)
そんなことを考えるなんてどうかしていると思いながら、彼は着替えを持って茹だる頭を冷やしにシャワー室へと入っていくのだった。
「……」
が、翌日になってもまだ彼の脳裏にはあの光景が焼き付いていた。
しかも困ったことに時間を増すごとにその色彩が強くなっていくのだ。
「……なんてこった」
思わず頭を抱えながらそう呟くグローリーゴア。
「どうしたんの? 朝から渋いものでも食べた顔をして」
そんな彼に、親友であり元凶であるサンデースクラッパが心配そうな声をかけてくる。
「……いや、なんでもないよ」
まさかキミの背中が気になって仕方がないだなんて言えるはずもなく、曖昧に笑って誤魔化す。
(……まあ、気のせいだろう)
そういうことにする。
美しいまでの極彩色。
あの芸術を作るまでにどれほどの時間を要したのか、検討もつかないモノ。
────ゴン!
「わっ!?ね、ねぇ大丈夫?ホントに大丈夫?いきなり額打ち付けて…」
「だ、大丈夫だよ…」
「大丈夫じゃないって!頬赤いし…もしかして風邪?」
「いや体は超健康体で…」
「とりあえず今日は休もう。ね?」
「…うん」
連絡してくるね、と遠ざかっていく背。
その首元から背中がチラリと見えて。
───────ゴンッッッ!!!!
【戦う者】:
サンデースクラッパ。
家の習わしで個人識別用の刺青を背中にいれている。
絵柄は鵺。
でもまさか体温が一定以上にならなきゃ出ないはずのものが出ているとは思っていない模様。
【栄光を往く者】:
グローリーゴア。
見ちゃった。