さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

116 / 1416
史実‪√‬の話。


見えない"ナニカ"と戦う者

僕の名前は"サンデースクラッパ"。

どこにでもいる馬だ。

 

僕にはたくさん兄弟がいる、らしいのだけど僕だけ他の兄弟と父親が違うのだという。

生まれた時から傍にいる母と姉にそう聞いた。

 

『もう少し大きくなったら「きょうそうば」ってものになるのよ』

『「きょうそうば」ってなぁに?』

『たくさんのお馬さんと走るの。

スーちゃんは走るの好きでしょう?』

『うん!』

 

母であるホワイトリリィは基本放任主義で、必要な時だけ手を貸してくれた。

まぁ、母は牧場のヌシであったから普段から忙しい馬であったが。

そんな母の代わりに面倒を見てくれたのが姉である"シルバフォーチュン"。

ぶっきらぼうだが優しい母と同じく優しい姉に囲まれて僕は生きていた。

走ることは好きだったから「きょうそうば」になるのを楽しみにしていたのだけど、

 

『ヒッ!』

 

その人にはじめて会った時、背筋が凍った。

恐怖から思わず攻撃してしまうほどに。

落ち着いてみればその人はとても優しくて良い人であったのだけど、

 

(見られてる…、近くに強いのがいる…?)

 

その人の近くにはいつも気配があった。

今まで感じたことのないほどの"強者"の気配が。

付かず離れずといった感じに僕とその人のことをジッと見つめている気配があった。

 

「…よろしくな、サンデー」

『よろしく、お願いします』

 

"白峰透"と名乗ったその人は姉と、あと顔を知らない兄に乗っていた人なのだという。

白峰さんは優れた人、だと思う。年若い僕が言うのも何だが。

彼が指示するとここは無理だろうなと思っていた道が簡単に開ける。

まるで未来を見ているような、魔法を見ているような心地。

しかし、

 

(やっぱり、いる…)

 

白峰さんのそばにいる気配は未だに消えなかった。

逆に僕が走っている時に限って、鬼ごっこのように一定の距離を保って追ってくる。

本当なら僕なぞ簡単に追い越せるだろうに、鳥をたわむれに追う猫のごとく後ろにいるのだ。

初対面でその気配に屈服させられてしまった僕は、必死に逃げるしかない。

余裕もクソもなく、ただ追ってくる気配から逃げていた。

 

その日はなにかが違った。

はじめてたくさんの馬を引き連れて、走った日。

白峰さんの指示通りに脚に馴染む地面を蹴って、走って。

そのはずなのに、

 

ゾッ!

 

『────ッッ!!』

 

それは一番の恐怖だった。

追うとか追われるとかじゃない、走らなければ()()()()()

そう思った。

走る、走る、ただ走る。

気配に追われていないのにも気がつかないまま走り抜けた。

 

『…あれ?』

 

ゼェハァゼェハァとバテバテになりながら、

 

『なんで勝ってるの…?』

 

そう呆然と呟く僕に、白峰さんが「よくやった」と褒めてくれたが、

 

(あっ、また見られてる…ッ!)

 

僕はというと、気配からじとりとした視線を感じたために冷や汗を流すしかなく…。




半弟:
SS産駒サンデースクラッパくん。
どうやら"ナニカ"を感じるチカラがあるらしい。
"ナニカ"に少しばかり怯えてたり怯えてなかったり…?
カブラヤオータイプのウッマだと周りから思われているが実のところ他の馬は怖くない。
彼が恐れるのはじっと自分を見つめる"ナニカ"である。
後に無敗の三冠馬グローリーゴア(EG産駒)をBCクラシックで打ち倒すウッマ。

"ナニカ":
なに僕の騎手くん乗せて負けそうになっとんねんの気持ち。
それと半弟を可愛がる気持ち半分。
だがしかし、普通にしていても威圧感があるらしく半弟からは怯えられている。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。