さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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たいせつなひと。



はじめての

(前略)

思えば俺も、アイツも『家』ってヤツがそこまでよくなかった。

俺はと云えば親が面倒見切れないほどに気性が悪くて、アイツは生まれたすぐに母親を亡くして。

あの場所に引き取られるまで、『普通』の暮らしってヤツを何も知らなかった。

だからか知らねェけど、俺たちはよく一緒に居たんだ。

俗にいう"シンパシー"ってヤツで」

 

それはきっと、ふたりにとっての当たり前の日々なのだろう。

だからこそシロガネツーパックは今、こんなにも穏やかな顔をしているのだ。

そう思わせる程に、その声音には懐かしむような、慈しむような温かさがあった。

 

私はシロガネツーパックとサイレンスヘイローというウマふたりを担当している。

髪がいつもボサボサで、目つきも滅法悪く口も悪いシロガネツーパックと寡黙で人見知り、だが一度パニックになるとどうなるか分からないサイレンスヘイロー。

そんなふたりは幼きころより共に生きてきた仲だという。

 

肉体的にはサイレンスヘイローの方が上、だが精神的にはシロガネツーパックの方に分がある…。

正直なところ私からすればどちらも手のかかる問題児だ。

そして可愛くてカッコよくて強い、私の自慢の愛バだ。

ただそれでも……このふたりを見ていると少しだけ羨ましく思う時もある。

 

誰も入り込めないような強い強い、結びつき。

それがシロガネツーパックとサイレンスヘイローにはある。

依存、と言われればそれまでかもしれない。

でも、そこには確かな絆が存在するように思える。

 

「なぁ、──」

 

そう、思考していると不意に私の名前が呼ばれた。

 

「な、なに?」

「今度、パーティーしよう三人で」

「え?ふたりの誕生日はもっと後じゃ…」

「バァカ、テメーの誕生日だよ。もうそろそろだろ?」

 

シロガネツーパックが笑う。

「こういったパーティーなんて企画したコトがねェから、どうなるかは分からんが」と言うが、その口元は確かに笑んでいて。

「サイレンスのヤツもテメーのためなら、って最近ずっとケーキだの何だののサイト見てるぜ」と言われてしまえば、

 

「…うん。ありがとう」

「おう、楽しみにしとけ」

 

 

シロガネツーパックとサイレンスヘイローというふたりのウマにとって、そのトレーナーははじめて自分たちを対等に見てくれた相手だった。

不安ゆえのためし行動を起こしても、叱りつけることなく受け入れて。

無茶ぶりのような頼みごとであっても、文句ひとつ言わずにこなして。

そして周りからふたりが悪く言われれば毅然と言い返してくれる。

ふたりとも、トレーナーのことをいつしか信頼していた。

それはもはや子どもが母親に向けるものと極めて近似の感情であったと言えるだろう。

だからふたりは、

 

「「ハッピーバースデイ、トレーナー」」

 

生まれてきてくれてありがとう、と。

彼女に伝えたかったのだ。

 





愛が重そう(こなみかん)。

ちょっと傷ついた子たちが信頼を寄せて、その信頼を不器用ながら何とか返してくれようとするのいいよね…。

ふたり:
シロガネツーパック&サイレンスヘイロー(ウマ時空のすがた)。
引き取られるまでの間の生育環境が少々()悪かったコンビ。
幼き日に自分たちを引き取ってくれたある存在に引き合わされ、シンパシーを感じた結果ニコイチに。
トレーナーと出会うまでは自分たちを引き取ってくれたある存在にしか心を開いていなかったがトレーナーの尽力もあり徐々に態度が軟化。
最終的には自分たちでトレーナーの誕生日を祝ってあげたい、と思うまでに親愛度があがる。
また、トレーナーを無意識に母親のような存在と見ているフシがあるようで…?

トレーナー:
慈母系ヒトミミ♀。
シロガネツーパック&サイレンスヘイローの担当。
ふたりぼっちで生きていたふたりを見出し、根気強く関わった結果一心の信頼を勝ち取った御方。
かつ、たいそうこのふたりに惚れ込んでいるためふたりが悪く言われているのを聞くとパチッと入っちゃいけないスイッチが入るヒト。またの名を闇討モード。
だがそれはそれとして、ある伝説のトレーナー♂に師事しており、その途中でカロリー激高な薫陶を受けため書こうと思えば雑誌のコラムに寄せれる程度の文章を書けるらしい。だが書いた文章のことごとくが担当バに対する愛()に溢れるようになるのが唯一の欠点とか何とか…?
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